望月の蠱惑

enchantMOONに魅了されたので、先人の功績を辿って、自分も月へ到達したい。

書籍

梵鐘一打 ―セレクション俳人07 岸本尚毅集(邑書林 2003.6.10) その2

はじめに 前に、「季語を殺す」という観点で、本書巻末の散文の一つをまとめた。 mochizuki.hatenablog.jp 今回はその次に掲載してあった散文のまとめ。 俳句の中の俳諧 この散文の初出は「國文学(2001.7)」とのことで、テーマは「何をもって俳句は…

季題を殺す方法が写生だ ―岸本尚毅集より

はじめに セレクション俳人07 岸本尚毅集(邑書林 2003.6.10)を読み、季重なりの多さに吃驚した。だがこれはもちろん意図的だ。 巻末の「散文」の中の「写生と季語のダイナミズム」を読んでいて、季題をどのように考えているかを知った。 今回は…

短歌の作り方、教えてください ―抜書き帳

はじめに www.kadokawa.co.jp 短歌の作り方、という本は、俳句に比べると、あまり読んでいなかった。短歌はどこか、好き勝手作りたい、という思いが強かったせいだ。それでも、手前勝手に作っていると、やはり疑問が湧く。技術的欠点に気づく素地がないため…

連作となる俳句の連続性を担保するもの ――飯田蛇笏さんの「病院と死」

はじめに BFC2の話題がtwitter上で盛んである。 文学は尖がっているべきだと思うので、たいへんに楽しい。 一方、あまり難解なものだと、たとえ6枚とはいえ読み通す気にならない。 読書とは時に忍耐でもある。苦行の果てに行き着く愉楽をヨシとする向き…

即身仏と割腹 ――速度と重力について

はじめに 『身体の宇宙誌』のメモを作っている。以下は再読を始めたばかりのころの感想文。 『永い屁(自作小説)』では、明確に「即身仏」を打ち出すこともなく、したがって「即身仏」の速度、つまりは肉体の速度から逃れるために必要な自由落下に関するこ…

『身体の宇宙誌』が驚くべき私のロードマップだったこと

はじめに 『身体の宇宙誌』 鎌田東二著 bookclub.kodansha.co.jp 随分以前、この本を読んだ際には感じなかった興奮を、今の私は禁じえない。 本を読むには時宜がある。 今、私がこのタイミングで本書を読み返すことで、先ごろ書き終えたある小説を跡付け、か…

執拗な描写に憑かれる ――『カフカの父親』 トンマーゾ・ランドルフィ 雑感

はじめに 本書を読んだ感想を以下のようにまとめた。 しかしそれにしても海外の短編小説のとくにこの修辞のたたみ掛けは苦手だ。まるで文学とは修辞である、というようなものだ。ドイツでもフランスでもロシアでもイタリアでもスペインでもアメリカでも同じ…

ざっくりさん講読9 「ミリンダ王の問い」9.第二編第一章

第一 ブッダに対する供養の効と無効 ミリンダ王(以下ミ)はナーガセーナ(以下ナ)に質問を許されたのでありがたく質問を始めた。 ミ:ブッダが死んでないなら供養する意味なんてないし、死んじゃってるなら供養したって意味なくない? ナ:もともと、ブッ…

『存在論的、郵便的 ジャック・デリダについて』を私すること

はじめに 1998年10月に出版された本書を、2020年6月に読む理由は、現在、私が考えている事に有用であろうと思ったからだ。 書き手と読み手との間に生じる「時差」を明確に意識することも、その考えている事の一つだった。 また、パロールとエクリ…

実用性とはのりこなす術 ―『磁力と重力の発見3』

はじめに 長いことかかりましたが、読み終えました。『磁力と重力の発見3』 www.msz.co.jp このブログでも、散発的に感想文など書いていました。 mochizuki.hatenablog.jp mochizuki.hatenablog.jp mochizuki.hatenablog.jp 実は、前のほうをほとんど忘れて…

エクリチュールとパロールとローマ字日記

はじめに Hareta Sora ni susamajii Oto wo tatete, hagesii Nishi-Kaze ga huki areta. から始まる石川啄木さんの『ローマ字日記』を借りてきた。 ローマ字で書かれてあるのだから、ローマ字で読むべきであろうと、ローマ字で読んでいる。読み進めるうちに…

「俳句」百年の問い 夏石番矢編 その2

はじめに 寺田寅彦さんの他に、いくつか抜書した箇所ができたのでまとめておきます。全文書き写すべきだが時間切れだったのが、山本健吉さんの「抽象的言語として立つ俳句」です。そこでは、絶対に不可能な「共時性」を俳句表現においてみようとしており、そ…

ありがとうございます。寺田寅彦さん『「俳句」百年の問い』夏石番矢編 メモ

はじめに 実作では全くそれを顕すことができていないにせよ、俳句をどのようなもの捉えているのかについては、だいぶまとまってきた今日この頃。 前回は『俳句の世界』を読んだ感想を書き、今週はもう一冊の方をかこうと思うのですが、まだ全然読めていませ…

『俳句の世界 発生から現代まで』 小西甚一 を読んで

はじめに どこかでだれかがだれかにお勧めしていたのを盗み見て借りて読んだ 『俳句の世界』講談社学術文庫。(もう一冊は読んでいるところ) 借りた本二冊 先日読み終えて、以下の感想を書いた。 「俳句鑑賞に新機軸を拓き、俳句史はこの一冊で十分と絶賛さ…

華厳経の「数論」と落語「時そば」という問題提起

はじめに 『現代人の佛教4 華厳経の世界』末綱恕一著 1957.3.15 初版 1976.3.20第五刷 春秋社刊 を読みました。中沢新一さんの『レンマ学』の「華厳経の数論」の項で引かれていたからです。第一篇は華厳経の歴史的背景と、各品のガイドですが、細かなところ…

寺山修司さんの短歌を五・七・五に還元するという戯言 2 『空には本 冬の斧』

はじめに 今回のブログは、 mochizuki.hatenablog.jp の第二回。『空には本 冬の斧』を考えます。 凡例 底本は『寺山修司青春歌集』角川文庫 平成四年三月十五日改訂初版の「空には本」の、今回は 冬の斧。 基本的に機械的な切り取りと並べ替えによって短歌→…

寺山修司さんの短歌を五・七・五に還元するという戯言 1 『空には本 チエホフ祭』

はじめに 以前、以下のブログを書いた。 mochizuki.hatenablog.jpこの中で、私は ただ、「俳句」であることと「短歌」であること。の境界を寺山さんがどこに置いていたのかと考えてみる。両者は全く別の表現形式であると明言している寺山さん自身が、俳句の…

書字はなぞるを反復する ――『美しい痕跡』のごく一部の感想

はじめに twitterに流れてきた本書。 『美しい痕跡』手書きへの賛歌 フランチェスカ・ビアゼットン著 みすず書房。 私は「手で」(わざわざこのような副詞で修飾することが必要な時代である。本書内ではこれとは別に「紙の」という新しい名詞についても紹介…

あれ? おもしろくないぞ 『タコの心身問題』

はじめに 『レンマ学』(中沢新一)を読んでいて、この本からの引用がありました。私は、脳=腸 を半ば本気で信奉しているフリをしており、その意味で「頭足類」には非常な関心を抱いているとともに、メンダコとコウモリイカには目がないときていますから、…

『磁力と重力の発見 2』 断片メモ

はじめに 『磁力と重力の発見』全三巻を、ときどき読み進めています。いまのところ、『3』の三分の一くらいまできています。ヨハネス・ケプラーを取り上げていて、それが『レンマ学』と交差しているところがおもしろく感じ、ランダムに併読していると、時折…

『レンマ学』から始まるノート 1 ―言語眼鏡による転倒

はじめに 中沢新一さんの『レンマ学』は、とってもお得な一冊だ。なにしろこれは中沢さんの集大成の根本テキストなのだから。 bookclub.kodansha.co.jp その中心には「華厳経」がある。まだぜんぜん途中までしか読んでいないが、私はこんな感想を書いた。 中…

碧梧桐俳句集 ―俳句と象徴

はじめに 『碧梧桐俳句集』を読んで、こんな感想を書いた。 自由律俳句新興の祖として、荻原井泉水さんと双璧だった「新傾向俳句」運動の旗手で、一時は全国的一大勢力となったのにもかかわらず、荻原井泉水さんと袂を分かちて後は次第に迷走し「短詩」「ル…

『謎の男トマ(一九四一年初版)』―その眼と身体の夢(死)(に限って記す)

はじめに ある小説を書こうとしていることは、以前述べた。そしてそのために、デリダの『盲者の記憶』から『触覚、』に激突(しかし私に「激突」に足る「重さ、または密度」を保持し得ほどの「渦」が継続していただろうか?)したと思った相手の中の人は、ほ…

窃視0度の触角 ―ジャック・デリダ『触覚、』からモーリス・ブランショ『謎の男トマ』への序説

今回のブログに先立ち、私はいかなる性犯罪にも肯定すべきところはまったく無いものと否定し、断罪する立場にあることをあらかじめ表明します。 はじめに 2月5日 デリダ『触覚、』読んでたらブランショ『謎の男トマ』読まねばと思う。引用だけでもうたまら…

井泉水句集(新潮文庫版) 付録 俳話より

はじめに 前回に引き続き「自由律俳句」だ。 私の手元にある荻原井泉水さんの句集は新潮社版の昭和12年1月7日の版で、昭和4年から昭和9年、鎌倉在住の頃の句を集めたものだ。昭和9年に五十歳となった井泉水さん的にも、よいまとまりの期間だったのだ…

gut feeling ――『感情とはそもそも何なのか』メモ

はじめに 可能な限り「唯物論」で推していきたい身としては「感情」のメカニズムを勉強することは不可欠だと思っている。 本書『感情とはそもそも何なのか ―現代科学で読み解く感情のしくみと障害』(乾敏郎 ミネルヴァ書房 2018.9.30)は、その意味でとても…

『光について』ロバート・グロステスト ―コーラとしての〈穹天〉

はじめに 『磁力と重力の発見 1』を読んでいて、タイトルの著作が気にかかった。そこで借りてきた。 キリスト教神秘主義著作集3 サン・ヴィクトル派とその周辺 須藤和夫 他 訳教文館 2001.4.10初版 ここに『光について』『色について』「虹につい…

『磁力と重力の発見1 古代・中世』メモ 霊性・生命・機械→「神」→科学

はじめに なぜ真如は物質(存在)となるのか? を考える上で「光」と「重力」とは一体のものだと思う。そこで、『磁力と重力の発見』全三巻を読むことにした。 山本義隆著 2010.4.30第15刷 みすず書房 今回その第一巻を読み終えたので、印象深い部分をメモし…

寺山修司さんの短歌と俳句

はじめに 俳句に関しては俳論的なものを読んだり考えたりしているが、短歌についてはあまり深くは考えず「文」の延長で書いている。五・七・五・七・七 の三十一文字は、心情を吐露し、物語を作るのに適した形式だと思われる。 これは私が好きな短歌作家が、…

私の「松尾芭蕉」 ――『芭蕉全句集』拾遺

はじめに 「平和俳句」提唱者の私ですが、つまりは「写生俳句」ということです。 俳句の抜書きをしてきた結果、作るほうはさっぱりですが、「好み」は固まってきたと思うので、ここいらでずっと避けていた松尾芭蕉さんを読んでみようかと思いました。 芭蕉全…