望月の蠱惑

enchantMOONに魅了されたので、先人の功績を辿って、自分も月へ到達したい。

短歌方面から気になる俳句 ―阿部完市さんの俳句に感じるメルヒェン

はじめに 「現代俳句大系」を書き写していたとき、奇異な感を得た俳句を書く俳人があった。写生句を中心に書き写しているなかで、その俳人の俳句群はとびっきり奇妙な、フォークロアというか、今昔物語的というか、ポンチ絵的というか、とにかく好ましいケレ…

『サラダ記念日』を改めて初めて読んだ ――言文一致体へ

はじめに あまりにも有名な俵万智さんの『サラダ記念日』 www.kawade.co.jp 1987年に、短歌を一新したエポックメイキングな歌集。 『口語を使った清新な表現で』と紹介文にもあるように、当時は「ああ、短歌はこんなに自然な言葉で作っていいんだ」と、…

共振する身心 ―宮沢賢治さんの短歌を拾う 

はじめに 今回のブログには、以下の内容を進めるための材料、つまり宮沢賢治さんの短歌をいくつか抜粋する。 mochizuki.hatenablog.jp わたしが、読んで短歌を書き写したのはこの本だ。 www.chikumashobo.co.jp 短歌は案外多い。因みに俳句は「菊花展」にか…

自動短歌生成装置「犬猿」(星野しずるさん)に学ぶ短歌の形

はじめに ファンです。 sasakiarara.com このアルゴリズムによって自動生成される短歌は、わたしが「短歌」だなと思える形式と、エモさを備えている。 わたしは、散文的叙述ばかり行い、論旨、繋がりが明確で簡潔な、状況を的確に伝えられる文をかくように心…

宮沢賢治の短歌(序説) ―不定形生命体という主体

はじめに このところ、短歌入門関連の書籍を立て続けに読んでいて、直近に読み終えたのは、この本だった。 www.kadokawa.co.jp 短歌の入門書としてどうか、というのは人それぞれにあうあわないがあるだろう。わたしは、俳句や短歌の入門書を読んで、作りたく…

挟み撃ちをスライスしてなんとなくクリスタルな純度98%の小説 ―『ヴィトゲンシュタインの愛人』 デイヴィッド・マークソン

はじめに 純度の高い小説は燃える。実際、この小説では本や家がよく燃える。そしてそこに残った焼け跡は、焼ける前よりも豊かだ。それは余剰によって豊かなのではなく、消尽によって豊かにされるしかなかった。抉られた傷に再生する肉片がつねに盛り上がるよ…

鏡はツルツルだということ ―『鏡と皮膚 芸術のミュトロギュア』

はじめに 本書のタイトルをみて、読まねばと思って読んだ。以下はその感想とまとめ。 www.chikumashobo.co.jp 鏡は皮膚とは違う。見られるモノである、という一点を除いては。 シュミラークルにまつわる議論は、だから退屈だ。むろん本書はそのような退屈さ…

塚本邦雄『秀吟百趣』メモ 二

前回からの続きです。 飛鳥田孋無公(あすかたれいむこう) さびしさは星をのこせるしぐれかな 霧はれて湖におどろく寒さかな 河の水やはらかし焚火うつりゐる 返り花薄氷のいろになりきりぬ 秋風きよしわが魂を眼にうかべ 昭和五年三十五歳の作。この3年後…

塚本邦雄『秀吟百趣』メモ 一

はじめに 一気に読んで、そのつぶさな鑑賞と審美眼に圧倒された部分をメモしたので、清書の意味で記す。つまり、本ブログに私自身の言葉は無く、すべてこの本からのメモである。 何回かに分けるかもしれない。また、取り上げられた作者別に記していくが、「…

SDGsの持続と格差

はじめに エシカルがブームになりかけて、途端に静かになり、かわってSDGsが高らかに宣言されたとの感を持つ。 エシカルという包括的で、消費者を操作する運動では、経済発展の足を引っ張りすぎるからだろうと考えている。 SDGsは、消費者より企業側…

『嘔吐』しない佐藤優樹さんに親鸞が召喚されること ―インタビュー『モー娘。楽曲・深読み講座』より

はじめに 今回はこのインタビューを読んで感じたことをまとめるつもりだ。それはつまり、このインタビューをもとに、私が佐藤優樹さんを二次創作する 試みに他ならない。全ての物事は、自らの不透明な体を通してしか、語り得ないからである。 www.fanthology…

定型が環世界であること

定型詩にせっせと励んでいて感じること。 世界を定型に切り取る。 定型に収めるために取捨選択する選択眼。 針の穴から空を見る、その針の穴を駱駝が通り、ひょうたんから駒が出る。 宇宙と一体化する異次元空間としての定型。 と、これは「他者・対象」を「…

梵鐘一打 ―セレクション俳人07 岸本尚毅集(邑書林 2003.6.10) その2

はじめに 前に、「季語を殺す」という観点で、本書巻末の散文の一つをまとめた。 mochizuki.hatenablog.jp 今回はその次に掲載してあった散文のまとめ。 俳句の中の俳諧 この散文の初出は「國文学(2001.7)」とのことで、テーマは「何をもって俳句は…

タテモトマサコは日記を書くか ―世にも奇妙な物語’20秋の特別編「タテモトマサコ」より

以下のブログは、タイトルの作品のネタバレを含みます。 はじめに 世にも奇妙な物語’20 秋の特別編 2020年11月14日(土)放送「タテモトマサコ」 タテモトマサコ 〈脚本〉山岡潤平 シナリオ作家協会主催のシナリオ講座を受講したのち、『世にも奇妙な物語 …

季題を殺す方法が写生だ ―岸本尚毅集より

はじめに セレクション俳人07 岸本尚毅集(邑書林 2003.6.10)を読み、季重なりの多さに吃驚した。だがこれはもちろん意図的だ。 巻末の「散文」の中の「写生と季語のダイナミズム」を読んでいて、季題をどのように考えているかを知った。 今回は…

俳句にとって誠実さとは何か ――プレバト20201105 村上さんの句より

はじめに プレバト 2020年11月5日放送分で、村上さんの 秋麗チョコスプレーの淡き影 の、「の」が「に」に添削された。 村上さんは、添削後の俳句の良さは認めたようだったが、「それでも僕の着地点は「の」だったんですよ」と言った。 僕は「の」が…

短歌の作り方、教えてください ―抜書き帳

はじめに www.kadokawa.co.jp 短歌の作り方、という本は、俳句に比べると、あまり読んでいなかった。短歌はどこか、好き勝手作りたい、という思いが強かったせいだ。それでも、手前勝手に作っていると、やはり疑問が湧く。技術的欠点に気づく素地がないため…

連作となる俳句の連続性を担保するもの ――飯田蛇笏さんの「病院と死」

はじめに BFC2の話題がtwitter上で盛んである。 文学は尖がっているべきだと思うので、たいへんに楽しい。 一方、あまり難解なものだと、たとえ6枚とはいえ読み通す気にならない。 読書とは時に忍耐でもある。苦行の果てに行き着く愉楽をヨシとする向き…

即身仏と割腹 ――速度と重力について

はじめに 『身体の宇宙誌』のメモを作っている。以下は再読を始めたばかりのころの感想文。 『永い屁(自作小説)』では、明確に「即身仏」を打ち出すこともなく、したがって「即身仏」の速度、つまりは肉体の速度から逃れるために必要な自由落下に関するこ…

「連作」という形式 ――消えるべき句の残り方

はじめに 「俳句」に連作はありえない。 と、いきなり断言してみる。ただしその「連作」が経時的因果によるのであれば。 「連句」と「連歌」の違い 俳諧で行う連歌が連句、連歌を庶民化したものが連句。と、ざっくりと定義する。詳しくはこちらをぜひ。 japa…

『身体の宇宙誌』が驚くべき私のロードマップだったこと

はじめに 『身体の宇宙誌』 鎌田東二著 bookclub.kodansha.co.jp 随分以前、この本を読んだ際には感じなかった興奮を、今の私は禁じえない。 本を読むには時宜がある。 今、私がこのタイミングで本書を読み返すことで、先ごろ書き終えたある小説を跡付け、か…

執拗な描写に憑かれる ――『カフカの父親』 トンマーゾ・ランドルフィ 雑感

はじめに 本書を読んだ感想を以下のようにまとめた。 しかしそれにしても海外の短編小説のとくにこの修辞のたたみ掛けは苦手だ。まるで文学とは修辞である、というようなものだ。ドイツでもフランスでもロシアでもイタリアでもスペインでもアメリカでも同じ…

モーニング娘。'20の15期(とくに山﨑さん)をただただ公式からリンクするためだけのブログ

もう、1年が経過したのですね。 www.youtube.com 発表の瞬間。 www.youtube.com www.youtube.com www.youtube.com もはや、なつかしいですね。 デビュー曲発表 www.youtube.com 同時握手会の仕掛け人としても www.youtube.com www.youtube.com 加入初のコン…

キス・キス・キス ―エロスとは変化の自覚の認識である文学

はじめに 今回のブログは、アダルトビデオ作品への言及を含みます。タイトルや、該当作品へのリンク、及び露骨な性的描写などは行いませんが、そういった内容を快く思わない方は閲覧をご遠慮ください。

エクリチュール補完計画 ―身体を超えて身体イメージにしがみつく性

はじめに タイトルに深い中身などない。これはイメージだ。 マスクせる顔面を恋愛対象とするとき、互いに感染リスクを負いながらマスクをはずして濃厚接触者たらんとする覚悟をもてるか否かの判断を迫られる時代にシフトした。 無マスクで唾液を撒き散らす行…

ざっくりさん講読9 「ミリンダ王の問い」9.第二編第一章

第一 ブッダに対する供養の効と無効 ミリンダ王(以下ミ)はナーガセーナ(以下ナ)に質問を許されたのでありがたく質問を始めた。 ミ:ブッダが死んでないなら供養する意味なんてないし、死んじゃってるなら供養したって意味なくない? ナ:もともと、ブッ…

干首の作り方的な? ―あらすじが難しい

はじめに 小学生のころ、読書感想文を書いて提出したら、「これはあらすじだから、ちゃんと感想を書かないとだめ」と注意された。以来、感想文はおろか、いかなる文においても「あらすじ」を書いたことがない。こうして、わたしの「あらすじを書く能力」は退…

わたしの短歌のつくりかた クロマニョン脳になりたい

はじめに noteの「六枚道場」という文芸サークルに投稿される作品はどれも尖がっていてすばらしいのです。 note.com ことさら、〈詩・短歌・俳句〉部門の常連の方々の、言葉のセレクトに常々やられています。そこでは、形式の表層にとどまりながら逸脱するこ…

『存在論的、郵便的 ジャック・デリダについて』を私すること

はじめに 1998年10月に出版された本書を、2020年6月に読む理由は、現在、私が考えている事に有用であろうと思ったからだ。 書き手と読み手との間に生じる「時差」を明確に意識することも、その考えている事の一つだった。 また、パロールとエクリ…

「お茶の水」問題

はじめに twitterにこんなこと書いて、ずっと考えている。 「お茶の水」ってすごく尖ってて洗練された表現だと思うから、この感じの関係性を探してるけど、ぜんぜん見つからない。朝顔の種(関係が違う)目玉焼きの卵(韻律がよくない)昨日の今日(対象が異…