望月の蠱惑

enchantMOONに魅了されたので、先人の功績を辿って、自分も月へ到達したい。

小説

教養小説なんて要らない

はじめに kotobank.jp 世の中のほとんどすべてのストーリーがこのタイプに分類される。わたしはこの手のストーリーにうんざりしている。なぜならみんな同じだからだ。 気味の悪さ 未成熟者が経験を経て成熟する。クリアできなかった課題をクリアできるように…

連作となる俳句の連続性を担保するもの ――飯田蛇笏さんの「病院と死」

はじめに BFC2の話題がtwitter上で盛んである。 文学は尖がっているべきだと思うので、たいへんに楽しい。 一方、あまり難解なものだと、たとえ6枚とはいえ読み通す気にならない。 読書とは時に忍耐でもある。苦行の果てに行き着く愉楽をヨシとする向き…

『鼻に挟み撃ち』―保守革新であること 

はじめに 2013年にいとうせいこうさんが『鼻に挟み撃ち』をすばる誌上に発表なさったのを知ってから、とても気になっていました。先日本屋で、集英社文庫の本書を見つけたので、購入してきた次第です。 読後感は、「いとうせいこうさんは真面目な方だな…

物証とアリバイ ―13号独房 再び

13号独房の問題アゲイン ヴァン=ドゥーゼン博士は、13号独房を監視するモニター画面に、映っている。が同時に、テレビ画面には生放送で、ハッチンソン記者にインタビューを受けている、ヴァン=ドゥーゼン博士が映し出されている。 所長は部下に指示を…

なんとなく比喩語る

はじめに 『なんとなくクリスタル』を読み返し始めて、まあ、面白いこと。まだ本文始まって4ページくらいですが。ブランド名、商品名、曲名、地名など、あらゆる固有名が象徴する「時代」感覚。 当時は、単に「おちゃらけ、表層的、イメージ、ぶちまけられ…

『人はなぜ日記を書くか』の私的かつ暫定的回答、そして有効な活用法

はじめに 日記という事件 本書にこのタイトルの答えを求めてはならない。なぜなら本書では「日記」ありきの論考しか行われないからだ。そのような姿勢で「日記」を扱うのなら、「日記」を解体するところまでいかねばおもしろくないのだが、本書において「日…

異邦人から俳人へ カミュ『異邦人』を読んで 

はじめに 新潮文庫の『異邦人』を読み返した。乾いた文を読みたかった。村上龍は生々しすぎる部分があるし、村上春樹は全般的に他人事すぎる。だから、異邦人。 だが、それは第一部の記憶だった。裁判と収監の第二部に至って、文体は、私の求めるそれとはか…

いくじなしのサディスト ―川端、芥川、太宰、啄木、島崎と、村上龍

はじめに 君のぉ、そして僕とぉ、姉ェ~さんのことわ。とてもいいっ! とてもいい! とてもいい! とてもいい! お・も・い・でっ おもいでっ! おもいでっ! おもいでっつ! ぇだったぁ! よねぇ~~~~ 兄さん! 兄さん! いくぢなしの兄さん。 僕は、君…

たましいのルフラン -すべらない話32弾のこと

はじめに 人志松本のすべらない話32弾。ほぼ一年ぶりの放送。 www.fujitv.co.jp 昨日録画しておいたのを見ました。そして、ある傾向が気になりました。それは、みなさんの エピソードが長すぎる ということです。そして、その原因となったのはおそらく、せい…

視線往還 ―物への漸近

はじめに 「写生」により「物(存在)」の本質へ近づくための忘備録 年譜 日本「写生文」 1887年 言文一致 二葉亭四迷『浮雲』 1894年 写生(俳句)正岡子規(画家 中村不折より) 1898年 ホトトギス 虚子『浅草の草々』子規『小園の記』 1900年 「日本」誌 …

高校生らしさとは -青春舞台2017

はじめに 実に久しぶりに「青春舞台」のテレビ放送を見た。やはりよかった。 野球と高校野球とが違うように、商業演劇と高校演劇とは違う。 そして、いかなる「高校○○」よりも、より「今、ここで、高校生であるということ」と向きあわねばならない高校演劇の…

Talk Free!

はじめに 『ガキの使いやあらへんで』にトークコーナー復活とか。 www.asagei.com 見てなかったですけど、邪魔な演出だったのですね。定評があった万年筆に、金粉を塗りつけたくらい無駄。 デビュー当時、「チンピラの立ち話」とこき下ろされながら、そのス…

モーニング娘。に魂を捧げた人 ―譜久村さんの悲しみと覚悟

はじめに ―タイトルとは無関係の、要望を書き捨てる モーニング娘'16 主演で『家畜人ヤプー』やってもらいたい。 www.gentosha.co.jp 上々軍団さんや、タイムマシン3号さんなども出演で。 では、ここから今回のブログへ 1212武道館 モーニング娘。'16 コン…

月に狂う夜

でかい月が見られるそうだ news.livedoor.com 月に吠える は朔太郎。 古書古本 dessin:萩原朔太郎詩集「月に吠える」名著復刻全集(近代文学館) 満月の人間に及ぼす影響なんかは、検索すれば五万とでてくるし。 月といえば失踪。 梶井基次郎『Kの昇天』 K…

意識と身体の変容 グレゴリ=ザムザと青島リカ

はじめに 意識は身体感覚の総体から生じる。その総体とは「脳」に集約される。意識の痕跡が記憶となる。 『変身』 毒虫の脳 一夜にして毒虫となったグレゴリ=ザムザが、昨夜までの記憶を持っているということは、人間の脳の形が保存されていなければならな…

AIに「死」を

今、好奇心が熱い AIに好奇心を実装しようという動きが俄かに活発化してるね! jp.reuters.com 実は、好奇心らしきものの実装はすでに試みられていたけど、 gigazine.net DQNに好奇心アルゴリズムを実装するという試みは、ちょっと期待しちゃう。 www.e…

ゴジラ ―私の好きなお化け (非レビュー)

『シン・ゴジラ』のレビューを見た amberfeb.hatenablog.com monkey1119.hatenablog.com 素晴らしいレビューです。どんなテイストのお話なのかがよく分かりました。なので、私はこの記事にとりかかることができました。感謝します。 え? 私は、テレビの宣伝…

限りなく透明に近いブルー 無脳のカメラ

リュウは、ただのムービーカメラとして、現場を浮遊する。 時折ストロボを爆発させ、現場を活性化させるニコマートとは違って、何も指示されぬまま漂い、気まぐれにズームインとズームアウトを繰り返す。遠近法ははなから壊れている。そしてそれを記述する文…

エーコさん、コロッケさんと、私

軽妙洒脱なつまらなさ ウンベルト・エーコ さん 逝去。(1) 『薔薇の名前(2)』『フーコーの振り子(3)』のあの、重層晦渋で、ディレッタントな文体でおなじみの。とても勉強になる本だった。 記号を自在に操るエーコさんによる古今の文学パスティーシュ、との…

ハルチカ 退出ゲーム から 出川哲郎さん に行き着いたこと

ハルチカ 『ハルチカ』(1)第三話で行っていた「退出ゲーム」。 演劇の世界では有名なものなのでしょうか。即興芝居で、あらゆるセリフが設定となって以降を規制し、その規制から、さらに設定が広がっていく。 作中では、「双方の特定の登場人物を無理なく、…

村上龍さん、という老い

新装版なんていらない 『限りなく透明に近いブルー』を読み返したくなりましたが、単行本も文庫本も近くの図書館にはなくて、本屋にも無い。以前にみかけたそれは、新装版で、表紙がブルー一色。そして解説が綿谷りささんでした。私は、表紙に描かれていた顔…

小説とドラマ(千原ジュニアさんとバカリズムさん)〜すべらない話より

二項対比 昨年1月の放送「松本人志のすべらない話」を見て、千原ジュニアさんが披露した、「井戸田さんの話」と、バカリズムさんが披露した「10分前に着いたのに5分遅刻した話」とが、2つあわせて記憶に残っています。 起承転結に完璧にはまり、かつそ…

私小説としての佐藤優樹さん、物語としての道重さゆみさん 1

1.私小説としての佐藤優樹さん 今とのズレ 佐藤優樹さんは、「今」を生きることに懸命です。 彼女は常に「今」そのものであり続けます。それは、そうしよう、として、そうしているのではないような気がします。 「今」という状況は、多重衝突事故そのもの…

あなたのためにならば。あなたの物語のためにでさえなければ。

君が君を君の君に君は君で君と僕は僕に僕を僕の僕が僕で僕と幸せになれるよ愛の物語さえ、なけりゃイッセー尾形 大好きマイルームより(1)(うろ覚えだけどね) 事後的に見出された関係性 『博士の愛した数式(2)』をBSでやってて、松岡クンが、思い出語りの…

フル・フロンタルは「器」だといったので、帝都物語の加藤などが召喚されたこと

『機動戦士ガンダムUC』の最終話が公開間近ですね 1.「器」であること ①フル・フロンタルの自己定義 なので、改めて過去の6話を見直していて、フル・フロンタルのこんな発言が気にかかりました。 (私は自分を)「ジオンの理想を受け継ぐ者たちの意志を受…

『さよなら絶望先生』にはまりつつ、爆笑問題経由で、ギャグ小説を夢想し、伏線について考える

さよなら絶望先生 はみんないい 1.アニメ版での世界観拡張 希望先生(中村雅俊がCMでやっていた)→絶望先生→絶望→太宰治(心中好き)=昭和初期の時代背景→江戸川乱歩の猟奇=エログロヌード このテイストを徹底的に取り入れた作画が、とても好きです。 …