望月の蠱惑

enchantMOONに魅了されたので、先人の功績を辿って、自分も月へ到達したい。

小説とドラマ(千原ジュニアさんとバカリズムさん)〜すべらない話より

二項対比

 昨年1月の放送「松本人志のすべらない話」を見て、千原ジュニアさんが披露した、「井戸田さんの話」と、バカリズムさんが披露した「10分前に着いたのに5分遅刻した話」とが、2つあわせて記憶に残っています。

 起承転結に完璧にはまり、かつそれらを、効果的に構成しドラマとして完成させたバカリズムさんの話と、起承転結や要約を一切無効としながら、鮮やかに終わらせてみせた千原ジュニアさんの文体の説得力。

 もちろん、どちらが優れているか、という判断基準は成立しません。ただ、このふたつの話を並べて見ると「小説の小説性」がとてもわかり易く現れてくると感じました。

 

以後、記憶により内容を(無理やり)要約します。ネタバレとなりますのでご注意ください。

 

 

バカリズムさんの話

結1

僕は、10分前に到着していながら、5分遅れてしまいました

虎の門」という番組収録のため、早めにテレビ局前に到着したが、ガードマンに止められる。

「ああ、まだ自分は大勢の人には知られているわけじゃないからな」

収録があるのだといっても「無い」の一点張り。確認してもらおうと躍起になる。

「いや、僕が収録日を間違える可能性もなくはないですが、そちらの連絡ミスという可能性だってあるわけじゃないですか」「こっちもプロだからね」

結2=転1

あまりの態度の悪さに、タクシーに乗ってその場を立ち去る。

「わかりました。あなたのその態度のせいで芸人が一人消えたという事を忘れないでください」

転2

実は、そもそもテレビ局を間違っていた。警備員にかなり辛辣に切れた直後からそのことに気づいていて、あとは、相手に確認作業をさせないために、わざと切れて嫌味をいいまくった。最初の態度があまりにも横柄だったことにかわりはなかったから。

承(繰り返し)

バカリズムさんの勘違いと分かって、さきほどまでのエピソードの意味合いが裏返っていく小気味よさ。

結1

本来の収録局へ、5分遅れて入った。

 

この話に豊かさを与えているのは、警備員に対するバカリズムさんの、粘着質で揚げ足取りの屁理屈で自己正当化しつつ、相手を断罪し続けるというセリフです。よろしければDVDなど探してみてください。

千原ジュニアさんの話

一泊旅行のバイクツーリング。いつもの若手の他に、初めて井戸田さんを誘う。

承1

宿泊先(熱海)へ向かう途中、井戸田さんのバイクは、「いいですね」という人も少しはいるが、大多数の人に笑われる。(ピンクのハーレー。アメトークで有名だった)

夕食のとき、井戸田さん大号泣する。安達祐実(の代理人?)から、もう子供に会わせられない、とメール連絡をうけたためとわかる。

承2

皆、元気づけようとする。夜の海に服を着たまま入っておどけたりすると、井戸田さんも海に入る。入水自殺のよう。みんなあわてて止める。など。

翌日、帰路。井戸田さんのバイクは、少数の人には「いいですねぇ」と言われるが、やはり大多数の人に笑われた。サービスエリアで、井戸田さんがジュニアさんに言った。

「俺のバイクのこと、『いい』っていうの、ダサイやつばっかじゃないですか?」

 この話に、起承転結も、要約も無意味です。この話はそれぞれの細部がひじょうに豊かで、雑多です。かといって、もちろん、まとめ方が下手なのではありません。むしろ、この話をこうした形で話し終えることができるということが、凄まじい腕なのだと思いました。

 

ドラマと小説

 お二人が普段作っているネタの形式の違いが、はっきりと現れる話だと思いました。

余談

 年始だったか、深夜にダウンタウンと今田さん司会で、他の芸人のフォーマットで、別の芸人がネタをするという番組があって、とてもおもしろかったです。

 また、年初のすべらない話に、井戸田さんが初参戦なさり、ピンクのハーレーは気に入っていて今も乗っていると話していたのが、うれしかったです。