望月の蠱惑

enchantMOONに魅了されたので、先人の功績を辿って、自分も月へ到達したい。

ざっくりさん講読 10 「ミリンダ王の問い」10.第二編第二章

第二 ブッダは全知者である

ミリンダ王(以下ミ):ナーちゃん(ナーガセーナ)。ブッダは全知者なの?

ナーガセーナ(以下ナ):そう。でも知識として知ってるんじゃないよ。知ろうとしたことをみんな知るんだよ。

ミ:知ろうとして知るのなら、全知者じゃないんじゃないの?

ナ:知ろうとして知る、んじゃないんだな。そんな遅い知るじゃないのさ。心の修養をしているから、余分な引っかかりがなくてとっても速い。常に正しい道のみを突き進むからとっても速い。その先へ進んでからも、余計な枝道なんてないからとっても速い。進んだ先で後戻りしようなどと思わないからとっても速い。自分の力、なんてものに頼らないからとっても速い。到達した場が広すぎるからといって途方にくれることもないからとっても速い。すべてが清浄であるがゆえに、とにかくとっても速く減速する要因が一つもないからね。

ミ:本当に速いんだねぇ。

ナ:そ。だから、車に積まれたたくさんの米俵の中の米の数だって、数えるんじゃなくて、この早い知るによって知ることができるのさ。でも、この知る、よりも、知りたい、はもっと早いんだけどね。

ミ:そこ、もうちょっと詳しく。

ナ:ものすごいお金持ちで食材をうんと蓄えている家があるとしてね。食事を終えた後に、この家にご飯をもらい来た人に振る舞う料理がなかったとしたら、この家は貧乏だっていうことになると思う?

ミ:食事の時以外は、料理なんて用意してないにきまってるよ。

ナ:そ。ブッダも、知ろうとしていないときだって、全てを知る智慧をもっているんだよ。じゃあ、たわわに実った果実の樹の下に、実が一個も落ちていないからといって、この樹には実が成ってないっていうだろうか?

ミ:実を得るには、落ちてきてくれないとね。落ちてきさえすれば実を得ることができからね。

ナ:それと同じだよ。

ミ:そういうことかぁ。

(pp.294-302)

ミリンダ王への問い1 完