第一 ブッダの実在証明
ナーガセーナ(以下ナ)「ないさ」
ミ「じゃ、ナーちゃんの先生は、見た?」
ナ「ううん」
ミ「ブッダって、いないんじゃない」
ナ「そんじゃ、ミーちゃん。ウーハー川って、見たことある?」
ミ「ないよ」
ナ「お父さんはどう?」
ミ「ないと思うけど…」
ナ「じゃ、ウーハー川なんてないんだよ」
ミ「ウーハー川はあるよ!」
ナ「ブッダもいるよ!」
ミ「う~ん」
第二 無上者ブッダの証明(1)
ミ「ブッダは無上者だっていうじゃな~い」
ナ「そうだよ」
ミ「見たこともないのに、なんでそう言えるのさ」
ナ「海を見たことない人って、深いとか広いとか、たくさんの河が流れて込んでるとか、知らないと思う?」
ミ「知ってるだろうね」
ナ「そういうこと」
第三 無上者ブッダの証明(2)
ミ「じゃ、他のみんなも、そのことを知ることはできるだろうか?」
ナ「できるさ」
ミ「どうやって?」
ナ「ティ老人っていう書写師がいたじゃんか、昔」
ミ「ああ。有名だね」
ナ「なんで、みんな知ってるの?」
ミ「書写師だからね。本が残ってるのさ」
ナ「この世界には「法」が残ってるだろ」
ミ「そうか」
第四 真理を見る者はブッダを見る
ミ「ナーちゃんは、『真理』を見た?」
ナ「だから、それに従って、日々暮らしているんじゃないか」
ミ「ふぅーん」
第五 輪廻の主体は転移しない
ミ「人が死んだら、その人の主体が転移するわけじゃないのに、また生まれるっての?」
ナ「そうさ」
ミ「どういうふうに?」
ナ「灯のついた蝋燭から、新しい蝋燭に灯を移すみたいにさ」
ミ「ほかには?」
ナ「ミーちゃんが先生から詩を教わっただろ。それを覚えてるってことは、その詩は、先生の詩が、ミーちゃんに転移したんだって思う?」
ミ「違うさ」
ナ「そういうふうにさ」
ミ「そういうふうにか」
第六 霊魂は認められない
ミ「じゃ、霊魂はっ!?」
ナ「…勝義においては、ないっ!!」
ミ「ハイ…」
第七 転移する他の主体があるか?
ミ「でもさ、何か転移する主体みたいなもんがあるんじゃないの?」
ナ「そういうものはないよ」
ミ「じゃ、悪いことしたって、それは付いてこないってことだよね」
ナ「うん。次の世に生まれてこないのならねっ!」
ミ「どういうこと?」
ナ「ある人が、別のある人が植えたマンゴーの樹になった果実を盗みました。その人を罰しますか?」
ミ「当然だよ」
ナ「でも、その人は、その人が植えたマンゴーの実を盗んだわけじゃないんだよ」
ミ「盗んだマンゴーの実は、他の人が植えたマンゴーの実から生じたものだもの」
ナ「人は、現在の「名」や「体」で、善いことや悪いことをする。そこ(業)から、新しい「名」や「体」が生じるわけだから、悪業はついてくるんだよ」
ミ「そうなっちゃいます…」
第八 業は実在するか?
ミ「業って、どこに溜まってるの?」
ナ「影のように、ついてくるのさ」
ミ「ちょっと、見せてくれない?」
ナ「そういうもんじゃないんだよ」
ミ「どういうこと?」
ナ「樹にまだ実がなってないのに、実を示すことはできないでしょ」
ミ「そうだね」
ナ「個体の連続が断たれないときには、業を示すこともできないんだよ」
ミ「ふぅ~ん」
第九 過去または未来にたいする意識の連続
ミ「また新しく生まれる人って、あ、俺生まれかわるな、って知ってるのかな?
ナ「知ってるさ」
ミ「説明してよ」
ナ「農夫が種を撒いて、雨が適当に降るんだ。農夫は穀物が実ることを知ってるだろ?」
ミ「そうだね」
第十 入滅したブッダの本体
ナ「ブッダは実在するんだよね」
ミ「もちろんさ」
ナ「じゃ、見せてよ」
ミ「完全なねはんを達成したんだから、無理だよ」
ナ「と、いうと?」
ミ「燃えている炎が消えてから、炎を示すなんてできないでしょ」
ナ「炎が消えてるなら無理だね」
ミ「ブッダもね。でも、法は残された。法を身体とするものとしてなら、ブッダを示すことはできるんだよ」
ナ「そうなのか」
以上