望月の蠱惑

enchantMOONに魅了されたので、先人の功績を辿って、自分も月へ到達したい。

ざっくりさん講読5 「ミリンダ王の問い」5.第四章(pp.177-196)

第一 もろもろの精神作用の協同

ミリンダ王(以下ミ) なんか、これまで色々と「分割」して答えてくれてたけどさ、実際のところ、どうなの?

ナーガセーナ(以下ナ) できない相談だね。

ミ じゃ、譬えてみせてもらおうかな

ナ 秘伝のスープの複雑な味を、塩っぱい、苦い、渋い、甘い、に分けて味わうことなんてできると思う?

ミ 渾然一体となった中にあるからこそ、それぞれが引き立つんじゃないか。

ナ そういうことよ。でさ、

ナ あなた、見ただけで「塩」ってわかる人?

ミ 分かるさ。

ナ ブッブー。ただ、白いことが分かるってだけです。では第二問。

ナ 舌なら、分かるかな?

ミ 分かるさ。

ナ そのとおり。塩は舌で、みんな、分かるよね。

ミ おや。塩は舌さえあればみんな分かるとおっしゃる?

ナ そうですよ。

ミ そんなら、わざわざ牛を重い思いをさせて塩を運ばなくったって、「塩っぱさ」だけを運べばいいんじゃないの?

ナ でも、塩と塩っぱさとは、分けられないから… 「塩」として「塩っぱさ」と「重さ」が合体しているわけだけど、もともとは、別のものなんだよね。じゃ 第三問。塩は秤で量れるでしょーか?

ミ 量れるに決まってんじゃん。

ナ ブッブー。秤で量れるのは、「塩の重さ」であって、「塩」ではありませんー。

ミ 面倒くせぇなぁー

第二 統覚作用と自然法則の問題

ミ 五感って、別々の業(ゴウ)によって生じたもの?

ナ そう。異なった業によるんだな、これが。

ミ 譬えてみそ。

ナ どうでしょう。同じ田に五種類の種を播いたら…

ミ 五種類の果実がなるわな。

ナ ね

ミ ん

第三 人格の平等と不平等

ミ 人はなぜ、平等じゃないんだろう… 寿命、財産、家柄、外観、知能とか。

ナ 逆に聞くけど、樹木はなんでみんな同じじゃないんだと思う?

ミ そりゃ、種が違うからな。

ナ そう。種は業(ごう)なのですよ。

第四 修行の時機

ミ 君たち、「この苦がなくなって、他の苦が生じませんように」って、言うじゃなぁ~い?

ナ う、うん。それが出家の目的だから。

ミ それって、だいぶ、先回りしすぎてるってとこない? どっちかっていうと、いいタイミングで、えいって取り掛かれば無駄がないっていうか。

ナ 泥縄じゃだめなんだよ。腹減ったとか、のど渇いたとか。そうなってからじゃ、もう、遅いの。間に合わないの…

第五 宗教神話に対する批判 ―〈宿〉業の存在の証明をめぐって

ミ 地獄の火はとても熱くて、自然の火では焼けない石が、地獄の火では「秒」で溶ける。で、地獄生まれ地獄育ちのやつは、その火に焼かれても焼けない、とかさぁ。信じられないな。

ナ 石とか食う生き物がいるでしょ?

ミ ああ。いるよ。

ナ そいつらって、石だって消化するじゃんか。

ミ そうだよ。

ナ なのに、やつらの身体とか、胎児とか、溶ける?

ミ 溶けるわけないじゃんか。

ナ な~んでか?

ミ 〈宿〉業の制約だな。

ナ そ。あなたがたが肉を食っても身体が溶けないのも、〈宿〉業の制約なのですよ。どんな存在でも、罪業が消滅しなければ、死は訪れないものです。

第六 自然界にありえないもの ―仏教徒の宇宙構造説について

ミ 大地は水の上にあって、水は風の上にあって、風は虚空の上にある、だなんて信じないもん!

ナ (でかいビーカーに水を満たして、官製はがきで蓋をしたものを、ひっくりかえして、ゆっくりと、はがきを抑える手を離す)ハイッ!

ミ (拍手)

第七 究極の理想の境地 ―涅槃(ねはん)は止滅か?

ミ ねはんって、all over なの?

ナ そう。止滅ね。

ミ どうしてそう言うの?

ナ 教えを学べば、存在することの、喜びも苦しみも次々に止んでいって、全部が止まって、滅びるからさ。

ミ 分かりやすいね。

第八 すべての人は涅槃(ねはん)を得るか?

ミ で、みんなが涅槃を得るのかな?

ナ みんなってわけじゃないけど。やるべきことをやってる人にはね。

第九 涅槃(ねはん)の安楽をいかに知るか?

ミ 涅槃(ねはん)を得ていない人は、涅槃(ねはん)は安楽だって、知ってるの?

ナ そ。知ってるよ。

ミ どうして、知るのさ?

ナ あなた、手足を切られるのが苦だって知ってるでしょ?

ミ もちろんだよ。

ナ あなたは、手足を切られたことがないのに、どうして、知ってるの?

ミ 手足を切る刑に立ち会ったとき、あいつら悲鳴をあげていたからなぁ。

ナ それと同じだよ。経験者の声を聞いて、みんなは知るのさ。

以上