望月の蠱惑

enchantMOONに魅了されたので、先人の功績を辿って、自分も月へ到達したい。

『生存する意識』読書メモ -臨床的な意識とは

はじめに 『生存する意識 植物状態の患者と対話する』エイドリアン・オーウェン(柴田裕之訳) 2019.9.18第一刷 みすず書房 を読んだ。 この副題を読んで即座に思い出されるのは、世にも奇妙な物語で、竹内結子さんが主演した『箱』である。 www.youtube.com…

World tapir day 4/27 ―世界バクの日

第一部 実在バク編 はじめに バクが好きだ。 pz-garden.stardust31.com バクは現在五種類が確認されている。 jp.mongabay.com そのすべてが「絶滅危惧種」だ。 www.afpbb.com とりわけマレーバクが好きだ。 アジア圏に生息するのはこのマレーバクのみ。 ja.w…

誤字脱字の無表情さ ―脳内細菌としての文字

はじめに 私の書くものには「誤字脱字変換ミス」が非常に多い。それは、書くときも読むときも、一文字一文字を見ているわけではないからだ。一文字毎に引っかかっていては、「意味・文脈」を捉えることが困難になる。だが、それに気づいたときにはとても恥ず…

ケンカをやめて 俳人蕪村 vs 郷愁の詩人与謝蕪村

はじめに 1927年6月ー7月に伊豆湯ヶ島に逗留していた文士を調べていて、萩原朔太郎さんのことが気にかかり、『ちくま日本文学全集 萩原朔太郎 1886-1942 筑摩書房(1991年10月20日 第一刷)』を読んでいたら『郷愁の詩人与謝蕪村』(以下『郷愁の』)…

ざっくりさん講読6 「ミリンダ王の問い」7.第六章

第一 出家者の身体感 ミリンダ王(以下ミ)「出家した人って身体が資本だと思ってるでしょ」 ナーガセーナ(以下ナ)「べつに」 ミ「でも君ら、けっこう規則正しいヴィーガンっぽいじゃん」 ナ「君はさあ、矢とか刺さったことあるべ」 ミ「戦場においてはね…

満月を半月の二倍と捉える忙しなさ ―蓮實重彥さん『表層の奈落』以前

はじめに 「好奇心」が問題なのだ。誰もがそれを肯定しあまつさえ推奨さえしながら「好奇心」の対象如何によっては眉をひそめ「品性下劣」の烙印を押されるのが当然とされる世間には良い「好奇心」と悪い「好奇心」とがあり、それは「好奇心」の向けられる対…

ROCKの定義 佐藤優樹さんから与太郎へ

はじめに デストロイヤーさんが亡くなり、内田裕也さんが亡くなりました。 www.nikkansports.com news.yahoo.co.jp しかし、cha cha SING が宝塚で使用されることになったり、佐藤優樹さん(を含むモーニング娘。'19の皆様)のインタビューがザテレビジョン…

R1見て、仕事人スペシャル見て、カメラを止めるなを見た

はじめに このブログには、ネタバレがあります! ご注意ください。 休日に、録り溜めた番組を見るのが楽しみです。先日は、いつものCSドラマの他に、SP系のが三本ありました。あ、『梁川さんの卒業公演』は、次の休みに見ます。 R1の復興 CMスキップ…

虚子の狭量さと綴り方 ―杉田久女さんとのことから

はじめに 角川書店の『現代俳句大系 全15巻』の15巻からさかのぼって俳句を拾っていて、その第9巻に『杉田久女句集』がありました。俳句を拾うのに、作者に関する知識は不要という主義の私は、前書きは勿論、作者年譜、句集の序や跋は流し読む程度なの…

不可説不可説転 ―実無限の寒天

はじめに 華厳経が好き。豪奢で華麗だから。 「善悪」とか「仏性」とかにはあまり興味はなくて、華厳経に表れてくる「宇宙」が好き。人間なんてどうでもいい。人間が人間になる以前のことが書いてある部分が好きで、人間が人間でなくなった後が書かれている…

大人になればVIVA薔薇色の人生 ―梁川奈々美さん「消尽されたもの」

はじめに 梁川さんの「卒業」に至る経緯を見ていて、「消尽」という感じを強くもちました。手放してしまったドゥルーズさんの『消尽したもの』が、残したかすかな残滓… それが何だったのか、このブログを書くにあたって、同書に関するブログを検索していて、…

『はじめての言語獲得 普遍文法に基づくアプローチ』を読み飛ばした理由

はじめに 人が言語をどのように習得していくのか。誰もが通ってきた道でありながら忘れてしまった「母語の覚え方」 バイリンガルの方や第二外国語習得者、もしくは多言語ユーザーなどの皆様におかれましては、それぞれの常識、非常識があることと思いますけ…

知覚と認識のフィルタリング ―鬼を外に出せば福は内にいる?

はじめに 結論は出ていない。仮説段階ですらない。空想だ。 仮説 正常な認知とは、五感を様々なレベルでフィルタリングし成型されたものだ。そのフィルタリングの過程で、捨てられている知覚には、「霊感」や「共感」などを含む、いわゆる「超能力」とが含ま…

俳句と動詞 ―子規句集にみる無動詞俳句

はじめに 俳句は写生。それが俳句をつまらなくした、イコール、正岡子規さんが俳句をつまらなくした、という風潮があると読みましたが、それは別にどうでもよくて… 俳句は写生。理想としては眼前の「モノ」を示すだけで、成立させたいという思いがあり。 と…

ざっくりさん講読6 「ミリンダ王の問い」6.第五章(pp.197-213)

第一 ブッダの実在証明 ミリンダ王(以下ミ)「ナーちゃんさ、ブッダ見たことある?」 ナーガセーナ(以下ナ)「ないさ」 ミ「じゃ、ナーちゃんの先生は、見た?」 ナ「ううん」 ミ「ブッダって、いないんじゃない」 ナ「そんじゃ、ミーちゃん。ウーハー川っ…

成果品のエシカルな享受とは?

はじめに 「遠くに落ちる原爆の光を、そうとは知らずに見て「きれい」と思い、あんなに「きれい」な光は見たことがないと思う。あとで、あれが「原爆」の光で、あの光の下に大勢の人が亡くなったり、ひどい怪我をしたり、ずっと長い間苦しみを抱えなければな…

リビドーのダイバーシティー

はじめに この記事は、性的内容を含みます。(扇情的なものではありません) ある青年の話 先日、こんなことを考えた。 幼児期、歯の生え揃わない口で母の乳首、乳房を含んだ感触が忘れられず、青年期に総入れ歯にして、さまざまなモノを口に含み続けた結果…

小椋冬美さんの静謐 ―モノローグの狭間で

はじめに 小椋冬美さんという少女漫画家を、私は「りぼん」誌上で知った。登場する男子に感情移入をして、髪型を真似たりもしていた。 主人公となるのは、みな、自分の本心を人に伝えるのが苦手な若い男女で、そんな自分のことが嫌いだったり、「性格だから…

内ー外 を捨てて考える

はじめに 『意識と本質』井筒俊彦さん、を手引として、ことあるごとに立ち返る。 このところ「俳句」「写実」のことを考えていることが多かったのだが、今回読み直し始めて「写生」に関する重要な論考と、本居宣長さんと、松尾芭蕉さんを本質論批評として読…

ざっくりさん講読5 「ミリンダ王の問い」5.第四章(pp.177-196)

第一 もろもろの精神作用の協同 ミリンダ王(以下ミ) なんか、これまで色々と「分割」して答えてくれてたけどさ、実際のところ、どうなの? ナーガセーナ(以下ナ) できない相談だね。 ミ じゃ、譬えてみせてもらおうかな ナ 秘伝のスープの複雑な味を、塩…

物証とアリバイ ―13号独房 再び

13号独房の問題アゲイン ヴァン=ドゥーゼン博士は、13号独房を監視するモニター画面に、映っている。が同時に、テレビ画面には生放送で、ハッチンソン記者にインタビューを受けている、ヴァン=ドゥーゼン博士が映し出されている。 所長は部下に指示を…

言語にとって抽象とは何か

はじめに 『増補現代俳句大系』 角川書店 の15巻から遡って俳句を拾い始めた。拾う基準は1.「我」という言葉がないこと 2.感情を表す言葉がないこと 3.「俳句のためにしたこと」を詠んでいないこと 4.なるべく平易な言葉で書かれていること であり…

あるあるではないあるある ―細かすぎて伝わらないモノマネ選手権2018

はじめに 短い一ネタで大爆笑。しかもニッチなところがすばらしい「細かすぎて」です。 今回は、雅楽の方。あれ東儀さんの副音声解説つきで見たかったし、バレエの方、アマレスの方もすばらしいですね。 その道で精進なさってこられて、なんらかの事情で芸人…

余談 ―アンチ物語の物語 『豊饒の海」創作ノート

はじめに どうも。卒業発表後、自信に溢れる飯窪さんが、少し苦手な私です。ソロで活動していく上では、絶対に必要なものですから、そのように「自分」を前面に発信していく姿勢は全く正しいのですが、それが私には、眩しすぎるのだと思います。さぁて、それ…

ざっくりさん講読4 「ミリンダ王の問い」4.第三章(pp.141-176)

第一 永遠なる時間はいかにして成立するか ミリンダ王(以下ミ)「過去とか未来とか現在とか、『時間』ってそもそも何?」 ナーガセーナ(以下ナ)「それはね、いきなり『しりとり』なんだ。しりとりーリンゴーゴリラーラッパーパンダーダンスースイカーカエ…

マゾヒストはイメージに隷属しない ―『なんとなくクリスタル』という唯物論

はじめに で、『なんとなくクリスタル』だ。40年も昔の本を今読むなんて、とってもレトロスペクティブとか思うかもだけど、我々バックスキッパーズとしては温故知新だなんてつもりは毛頭ないわけ。 当時は、「カタログ」だとか「TOKYO Walker」だとか「Hot…

なんとなく比喩語る

はじめに 『なんとなくクリスタル』を読み返し始めて、まあ、面白いこと。まだ本文始まって4ページくらいですが。ブランド名、商品名、曲名、地名など、あらゆる固有名が象徴する「時代」感覚。 当時は、単に「おちゃらけ、表層的、イメージ、ぶちまけられ…

エコラリアス 言語の忘却について ―読書メモ

はじめに 「エコラリアス」という魅惑的な響きを持つこの書籍を読もうとしたきっかけは、本の裏表紙に書かれていた言葉であった 「子どもは言葉を覚えるときに、それ以前の赤ちゃん語を忘れる。そのように言葉はいつも「消えてしまった言葉のエコー」である。…

『フェアトレードビジネスモデルの新たな展開 SDGs時代に向けて』を読んで

はじめに 前回のブログに記した「私的問題項目」を留意しつつ、一読しました。フェアトレードとエシカルトレードとを関連付けた論考はとてもわかりやすく、たどってきた道筋と今後の展望についても明確に記されていました。 SDGs その中に、国連が掲げる2016…

フェアトレードがトレードオフするものとエシカル消費の指標

はじめに 『フェアトレードビジネスモデルの新たな展開 SDGs時代に向けて』 長坂寿久 編/著 明石書店 2018.5.15 を、読み始めるにあたって、現在自分が抱いている「フェアトレード」についての論点をまとめておこうという次第。読後、今回の論点が解決し…