望月の蠱惑

enchantMOONに魅了されたので、先人の功績を辿って、自分も月へ到達したい。

フェアトレードがトレードオフするものとエシカル消費の指標

はじめに

フェアトレードビジネスモデルの新たな展開 SDGs時代に向けて』

長坂寿久 編/著 明石書店 2018.5.15

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を、読み始めるにあたって、現在自分が抱いている「フェアトレード」についての論点をまとめておこうという次第。読後、今回の論点が解決したり、深まったりしていてくれることを期待して。

1.フェアトレードとは資本主義に対抗しうる射程を持つ

この論点は柄谷行人さんの考えに負う。NAMは瓦解したとはいえ、原理的には有効であると思うからだ。(以下の論点は基本的に柄谷さんの本から得た知見に基づいていることを明記しておく)

後進国が、資本主義的な世界市場によって生み出された現在の窮乏に対抗するためには)地域通貨による流通システムを築き、そのもとに生産ー消費協同組合を組織していくこと、そして、それを先進国の生産ー消費協同組合とつなげていくことである。それは非資本主義的な交易であり、また、国家を媒介しないネットワークによる交易である」(『トランスクリティーク』トランスクリティカルな対抗運動p.431)

 現状では、地域通貨フェアトレードとはリンクしてないだろう。その意味では、直接的に資本主義への対抗手段たりえていないのかもしれない。だが、以下にその意義を見出すことは可能だと思う。

2.フェアトレードは、生産労働者にとっての労働革命として組織される

「フェア」とは、賃金、労働力、時間、人間性、機会などを搾取しないことを意味すると思う。現地基準における適正労働、適正賃金、福利厚生、つまりは「人権」を護るため、零細、個人が団結して、「生産組合」を組織するのだ。だがこれは、「労働組合的組織」とは根本的に異なる。

 労使交渉は決して、対等にはありえない。後述するが、柄谷さんの言うとおり「人は買う立場に立った場合にのみ資本に対抗しうる」からである。

 フェアトレードは、生産労働国の働き方を改革する。それは、そのようにしなければ、商品が売れない=倒産する。という経営側にとって純粋に経済的な問題として突きつけられなければならない。そしてそれができるのは、「買う側」にいる消費国だけである。

 つまり、消費国(多くは先進国)の購買力によって、生産国(多くは後進国)に革命を起こさせる運動が、フェアトレードなのである。

 また、先進国においても、フェアであることは義務付けられねばならないと考える。 フェアトレードとは、商品の生産過程のみならず、流通過程においても、適正な労働条件が整っているのかに注視すべきである。ブラック企業フェアトレード商品を売っていても、それを購入することは「エシカル」とはいえない。

3.フェアトレードエシカル消費マインドによってのみ継続する

 前述のように、フェアトレードの第一義は後進国における労働環境の改善である。「フェアトレード商品は高い」という印象があるが、それは、「他の商品が不当に安すぎる」というえげつないアピールによって、「エシカルマインド」に訴えることができるだろう。

フェアトレード商品は品数も取扱店も少なすぎる」という問題も、「現地の人々をこれほど劣悪な環境に貶めている商品が、こんなにもあふれているのだ」ということを、えげつなくPRすることによって、「エシカルマインド」に訴えてる材料となるだろう。

 フェアトレード商品の大半が食品(コーヒー、チョコ)や、木綿製品である理由は、生産過程が比較的単純、つまり、トレーサビリティーが高いからだと思う。アピールしやすいのだ。

 たとえば、「自動車」に「フェアトレード認証」されたものが無いという事実は、企業がいかに労働者を搾取し、利潤を内部留保しているのかを表している。原材料の調達や、生産工程が広範囲かつ他段階にわたるものについても、「フェア」かどうかがわかるようにすべきである。

「認証機関」が権力をもつのは、由々しき問題である。商品に貼り付けるシールの有無のみを盲信していては「エシカル」とはいえない。それよりも、NPOなどの第三者機関による、徹底した商品のトレーサビリティーの実現と提供こそが、「不買運動」の契機となるのではないか。

消費運動とは不買運動である

 消費が地域を動かす。それは、「買って応援」という機運の高まりによって浸透しつつあると思う。だが、平時においてはむしろ「買わない」ことによる力こそが、最大の対抗手段なのだということを、一人一人が理解すべきである。

 フェアトレードは、いや、すべての消費者運動は、不買運動とセットにならねば無意味である。

 生協/コープ|日本生活協同組合連合会といような組織は、消費者マインドによる生産を実現する組織たりうると、私は認識しているが、この組織におけるフェアトレード商品の扱いはひじょうに僅かであるようだ。こういう巨大な組織が、「エシカル」な商品を全面的に取り扱うようになれば、世界は変わるだろう。

不買運動は貧困者には不可能である

「人は買う立場に立つことでのみ資本に対抗しうる」は事実だと思う。だが、そのためには「選択的消費を可能とする資産」を持たねばならない。つまり、貧困者は対抗手段をもてないということになる。

自国内基準であるという点

 フェアトレードにおいて、適正な対価とは、その国内における生活水準に則したものとされている。

「たとえば日本の無店舗系の生協などは基本的に消費者組合ですが、ある程度生産組合も組織しているといえますね。それを海外に組織している。生協の海外での食品生産は、その資本が支配するフィリピン内部での流通価格から外れたところで組織されているのでそこで生産されて日本に運ばれる商品はフィリピンの価格としては高い。だからフィリピンの生産者にとっては利潤になっているわけです。同時に日本の消費者にとっては安い。しかも品質が管理されている。たとえば環境汚染に対する対策が講じられているとか。すると先進国での消費者組合の活動が後進国の政治的、経済的体制に関与してくるわけですね」(『批評空間 1999Ⅱー23』貨幣主体と国家主権者を越えてp.21)

 この一文にフェアトレードの仕組みは要約されていると思う。

このことから読み取れることは

① 後進国は先進国に抑制される。

② フェアトレード商品は地産地消産品ではない。

の二点である。

①について

 生産労働国が生産労働国である理由は、生産コストを軽減できるから、という理由にほかならない。これは世界資本主義の基本である。安く作って、付加価値をつけて、高く売ることで、利潤を得る。生産コストが低くなければ、生産国としては失格だ。

 いや、たとえ、コストup分を価格に反映させたとしても、それが売れれいいのだし、そういう商品を買うことこそが「エシカル」である。というところまで意識が高まればよいのだが、あまりにも「高額」ということになれば、「生活防衛」のために購入は見合わされてしまうだろう。

 だからこそ、後進国は、いかにフェアトレードによって労働条件が改善したとしても、その国そのものの生活水準が飛躍的に向上するような成功を納めてはならないのである。もしくは、そのように潤った暁には、他の貧困国に対する「消費国」として手を差し伸べていくことになる、ということだろうか。

 資本は必ず差異を必要とし、その差異から余剰価値を得る。その差異はどこから、どのように得ても構わない。

 それが資本主義の宿命だ。世界から格差はなくならない。(貨幣を用いる限りは)

②について

 まあ、当然だ。トレードとは「貿易」のことであって、「貿易」とは国家間の取引だからだ。価値体系の異なる国家間だからこそ、差益が発生するのであり、その差益の幅の内で「フェアトレード」が成立するのだから。

 ただ、改善された労働環境で働く労働者たちは、自分たちが作っている、エシカルな商品を買うことができない、という点にモヤモヤが残るのである。自国に流通するものはフェアではない「安くつくれる」商品ばかり、ということになるのではないか。

 それなら、移民として先進国で働いたほうがよい、ということになるのかもしれない。だが、選択的購買力を得るまでにいたらなければ、結局、自国のフェアトレード生産組合を潰すような消費活動しか行えないだろう。

フェアトレードは経済活動である

 貨幣を伴うフェアトレードは、人間の尊厳や自然環境のためになるとはいっても、徹頭徹尾、経済活動である。最終的には「売れるから作る」というスタンスなのは不変であり、それ以上でもそれ以下でもないと思う。

フェアトレードの掲げる理念は正しい。だが「PR効果」がなければ、企業は見向きもしない。採算性があれば参入し、既存の小団体を蹴散らし、採算が取れなくなれば、即座に撤退する。それが、経済活動を行う企業の倫理である。協同組合は、その暴風に耐えうるだろうか。

さいごに

 時代は確実に「再配分」期に入っている。それは、積極的にではなく、ごく消極的な理由、つまり「貧富の格差の拡大」によって起こっている。

 だが、生活保護や企業からのボランティア的ばら撒きによる再配分では、この格差を生み出す構造は終わらない。なぜなら、そのような再配分では、貧困者が「買う立場」に立てないからである。

「買う立場」とは「選択的に買う立場」であることを銘記し、フェアな商品の生産を促し、そのような商品を選択的に消費すること。そして、これも結局、後進国の人権問題と、エコロジー活動に終わってしまうのだということを知り、本丸である「資本主義」に対抗しようとすること。

フェアトレードは、そうしたエシカルな取り組みの一つだと、私は捉えているが、さて、どのようなものなのだろうか。

本を読みはじめたいと思う。

リンク集

フェアトレード
児童労働
http://acejapan.org/childlabour/report/fairtrade

フェアトレード・ジャパン
https://www.fairtrade-jp.org/

わかちあいプロジェクト

http://www.wakachiai.com/

co-op
https://goods.jccu.coop/feature/promise5/fairtrade/
co-opフェアトレード商品検索
https://goods.jccu.coop/search/?q=%E3%83%95%E3%82%A7%E3%82%A2%E3%83%88%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%89
https://www.google.com/search?q=co-op+%E3%83%95%E3%82%A7%E3%82%A2%E3%83%88%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%89%E5%95%86%E5%93%81&ie=utf-8&oe=utf-8&client=firefox-b-ab
co-opエシカル
https://goods.jccu.coop/ethical/?utm_source=lineup&utm_medium=t_banner&utm_campaign=ethi
dice
セヴァンの地球のなおし方
http://www.webdice.jp/dice/detail/3089/

モンサントの不自然な食べ物
http://www.webdice.jp/dice/detail/5292/

いのちの食べ方
http://www.espace-sarou.co.jp/inochi/

エシカル、トレーサビリティ
http://ascii.jp/elem/000/001/689/1689821/

建設業のフェアトレード
https://www.decn.co.jp/?p=95005

工業にもフェアトレード
https://blog.goo.ne.jp/jinzaiikuseisha/e/2bf55e8672fa9882fecef9e24eb75e76

世界フェアトレード・デーなごや2018
http://fairtrade-nagoya.com/holding

アール・ブリュットをくっつけている。。。平等とかをこじつけてるのか

フェアトレードって何? メリットと問題点を分かりやすく解説!
https://chiikihyaku.jp/society/726.html

例の本の受け売りではない問題指摘と感じる。

オルタートレードジャパン
http://altertrade.jp/