はじめに
梁川さんの「卒業」に至る経緯を見ていて、「消尽」という感じを強くもちました。手放してしまったドゥルーズさんの『消尽したもの』が、残したかすかな残滓…
それが何だったのか、このブログを書くにあたって、同書に関するブログを検索していて、こちらのブログに行き着きました。
シャンピン様のブログ 「学者たちを駁して 人文書中心の読書感想文」
この明察なるブログの考察や引用されている本文を「アイドル梁川奈々美」さんのこととして読むことが可能だと思いました。そして、その後で「アイドルの梁川さんという『消尽されたもの』」について、もう私がいうべきことはありませんでした。
今、カントリーガールズが少しずつ解体されていくなか、小関さんのことが気にかかっています…
梁川奈々美卒業に関するお知らせ
いつもハロー!プロジェクトを応援していただきありがとうございます。
カントリー・ガールズ/Juice=Juiceの梁川奈々美ですが、2019年3月をもって
カントリー・ガールズ、Juice=Juice及びハロー!プロジェクトを卒業することになりました。
ハロー!プロジェクトで日々活動をしていく中で、自分の将来についても考えることが増え、
その結果、芸能活動は区切りをつけて進学し、
新しい夢を見つけていきたいという申し出を受けました。
将来について自分自身と向き合うことは、成長の過程でとても大切なことであり、
彼女の気持ちと決意を確認し、卒業という結論に至りました。
梁川自身もこころを決めるまできっと思い悩んだことでしょう。
我々スタッフも、進学して新しい夢や目標が見つかることを願い、
彼女の決断にエールを送りたいと思います。
ハロー!プロジェクトでの活動は2019年3月までとなります。
具体的な時期等については、あらためて公式HPなどでお知らせ致します。
引き続き梁川奈々美、そしてカントリー・ガールズ、Juice=Juiceの応援を
宜しくお願い致します。
私、梁川奈々美は
来年の3月をもちまして
カントリー・ガールズ、Juice=Juice及びハロー!プロジェクトを卒業します。
カントリー・ガールズのメンバーとしてハロー!プロジェクトに加入し、
もうすぐ3年が経とうとしています。
昨年の新体制以降はJuice=Juiceのメンバーとしても活動し、
2つのグループを兼任して、本当に沢山の貴重な経験をさせていただきました。
そんな充実した日々を送らせていただく中で
ここ1年、自分の将来や現在の活動について考えたりすることが増えました。
改めて自分自身に向き合った結果「アイドル」から離れ、
「梁川奈々美」としての人間的な成長が必要だと感じ、
そのためにも進学したい、という気持ちが大きくなりました。
まず、進学に向けてしっかりと勉強をしてから、自分の新たな夢を見つけ、
目指す分野に進みたいと考えています。
幼いころから、歌やダンスが大好きだった私。
ハロー!プロジェクトの一員として過ごした時間、みなさんと出会えたこと、
全部私の宝物です。
残りの時間は限られてしまいますが、
応援してくださっているみなさんに恩返しができるよう、卒業まで全力で頑張ります。
引き続きカントリー・ガールズ、Juice=Juice、
そして梁川奈々美をよろしくお願いします。
●出演:Juice=Juice/カントリー・ガールズ ※梁川奈々美は3月11日Zepp Tokyo公演をもって卒業となります。(ファンクラブニュースより)
大人になれば大人になれる
私は、彼女に、その卒業公演で(セトリに入っているかどうかはわかりませんが)「VIVA薔薇色の人生」を歌わせるのは酷ではないかと、思っています。その前向きすぎる歌詞は、過去と今の辛さを、無理やり未来を向かせることで「私なら大丈夫です」と言わせているような歌に聞こえてしまうからです。
梁川さんは、不安を楽観視することで解消させることができるタイプではなく、悲観的、心配性なのではないかと感じるのです。真面目に一生懸命、備えることで不安を小さくしていく苦労性だと思うのです。
そんな梁川さんの、そしてカントリーガールズのことを、表していると感じたのは、『大人になれば大人になれる』(モーニング娘。'14)でした。
①まさにカントリー劇場を指しているかのような歌詞。
②やればできる子だといわれて、がんばってしまうところ。
③しゃべるとみんなが笑うというところ。
④大人になれば分かる、といわれているというところ。
⑤期待されすぎて居残りさせられてしまうというところ。
⑥大人になればきっと分かるはずだと信じようとしていたところ。
もしかしたら、梁川さんはデビューが早すぎたのではないか、そんな気がします。これは、研修生でいるべきだった、ということではありません。
カントリーガールズに加入し、当時の精一杯の中で苦労してキャラ付けをして、求められることを一生懸命にやり続けましたが、成長とともに、このキャラを継続していくことに疑問を感じ始めます。カントリーガールズとしてであれば、周りも一緒に成長し、キャラをも成長させていくことができたかもしれませんが、Juice=Juice兼任になって、もう一度、当初のキャラを求められることになってしまいました。
愛玩される存在。「ほめ殺し芸」や「理路整然と話すスキル」で笑ってもらえる年齢は過ぎ去り、「おとぎの国からこんにちは」をどうするか問題を自ら口に出すこともありました。成長させていくことが難しいキャラ付だったことが、彼女には苦痛になっていたのかなと思いました。デビュー当初から、そのキャラの限界は決まっていたのかもしれません。
わが身に引き換えつらいだろうと思うこと
それとは別に、私がとても気になっていたのは、「梁川さんの発語」いじり、です。
苦手な発音があることは本人もネタにしているほどでした。だから周囲もよく、このことを取り上げて笑いのネタにしていました。
私は「キ」と「チ」の発語に問題をもっており、「kui」「tui」という風に発音するのですが、「ケンタッキーフライドチキンって言ってみ」とか、いわれるのが大変に苦痛でした。きちんと話せない=劣ったもの。という見方をされていて、自分が何を言っても結局はそこで評価されていると感じたからです。
カタコトしゃべりの人を「かわいい」とか「おさない」とか感じるのは、たんに「知能が低い者」と捕らえているからです。愛玩されるとは、自分よりも下にみていることの証です。
アイドル梁川奈々美さんが常に「愛玩」される位置に甘んじていることしかできない立場に追いやられたこと。それは自分のキャラ付けのためでもあり、そのキャラを望む周囲の人のためでもあったと思いますが、この発語いじりは、大きかったのではないかと思っています。
(嗣永桃子さんも苦手な発音があったように思いますが、それをいじられていたことはなかったように思います)
消尽されたもの
しかし、消尽されたものは「アイドルの梁川奈々美」さんだということは、明記されねばなりません。
梁川奈々美「私もそう思う。今、たくさんのアイドルさんがいる中で、個性的なグループって増えてきていると思うんですよ。その中でも、カントリー・ガールズはあえてアイドル界の王道を突っ走っていくグループ。でも、王道が逆に個性となっているんじゃないかなって思います。すごくかわいかったり、衣装もフリルがいっぱい、ミュージックビデオや楽曲も“かわいい!”をギュギュッと詰め込んだグループです!」
カントリー・ガールズがメンバー5人で叶えたい夢を告白!【ハロプロ誕生20周年記念連載】2018/07/08 18:00 配信
幼いころからアイドルを目指し、厳しい研修に耐えてデビューして、みんなの偶像として存在した経験は、「自分=アイドルとしての自分」という自己投影を引き起こし、「アイドルでなければ存在意義がない」という意識に自身を追いやりかねません。
余談ですが、こういうアイデンティティーの危険を防止する意味で「芸名」というのは、一定の効果をあげていたように思います。近年は「本名」で活動する方が多いですね。「キャラ」とか「アイドルとしての自分」とか「スイッチのON,OFF」という風に、みんな自我を保全する力が向上しているということなのでしょう。つきつめれば、本名だって芸名みたいなものですし。
固有名が入れ替え可能なキャラの指示子の一つになるとき、入れ替え可能なキャラの差異にのみ個性が存在しうるという状況が生じて、それはいまさらながら、とってもポストモダンなことなのですが、そのように見出された個性が、とってもモダンな自我を主張する捩れが、今おもしろいなと感じますけれども、それはまたいづれ。
もちろん、この同一性に違和を感じたからこそアイドル梁川奈々美さんは、アイドルをやめようと結論づけたのです。それは、彼女自身が「アイドルではない自分自身の部分をも消尽されてしまった」とは考えていないということなのだと思います。だから、きっと大丈夫なのです。
ただ、彼女の「生真面目すぎる性格」と「人見知り」は、アイドルではない自分自身のものです。
やはり、『VIVA薔薇色の人生』は、つらい。そんな気がしています……
さいごに
久しぶりにハロプロ関連ブログなので、いま気になっていることを。
①野中さんがブログでファンの意見を聞きすぎている気がすること。
②横山さんのこと。
③宮崎さん卒業後のJuice=Juice
④BEYOOOOONDS
追記 2019.3.11 卒業コンサート(於 BSスカパー)
カントリーガールズのステージがとても好きです。いろいろ厳しいのかもしれませんが、新メンバー加入などしてでも、なんとか存続していってほしいグループだと思います。
梁川さんは、最初から最後まで、MC(マスターオブセレモニー)として、朗らかに輝き続けていました。(前日も放送があった、カントリーガールズのラジオでも、そうでした)
その姿からは、微塵の後悔も、不安も、濁りも感じられませんでした。
「梁川プロ」。そう感じました。
彼女は、アイドル人生を、悔いなくやり遂げたのだと、思いました。
セレモニーで、メンバーたちが口々に「器用だけど不器用」「甘え上手で甘え下手」といっていました。冒頭に登場した和田さんは「生きるのが大変なんじゃないか」というような発言をしていたように記憶しています(ウロ覚えですが…)
翌日の、「ハロステ・アプカミリニューアル生配信」の中でも、このコンサート映像の模様が一部、リハーサルとともに流れました。ここでも和田さんは、「かわいい面、大人っぽい面、しっかりした面などを見せてくれたけど、本当の彼女はどこにあったのかな」というような感想を言っていたと思います(ウロ覚えですが…)
今後、彼女が飛び込んでいく世界に、彼女が居場所を得て、そのなかで、安心して寄りかかっても大丈夫なんだと信頼できる相手と出会うことができますよう、祈っています。
とても素晴らしいコンサートでした。彼女の唯一無二のキャラクターを、家族のようなグループの中で、もっと見ていたかったと感じました。
ご卒業おめでとうございます。