望月の蠱惑

enchantMOONに魅了されたので、先人の功績を辿って、自分も月へ到達したい。

ありがとうございます。寺田寅彦さん『「俳句」百年の問い』夏石番矢編 メモ

はじめに 実作では全くそれを顕すことができていないにせよ、俳句をどのようなもの捉えているのかについては、だいぶまとまってきた今日この頃。 前回は『俳句の世界』を読んだ感想を書き、今週はもう一冊の方をかこうと思うのですが、まだ全然読めていませ…

『俳句の世界 発生から現代まで』 小西甚一 を読んで

はじめに どこかでだれかがだれかにお勧めしていたのを盗み見て借りて読んだ 『俳句の世界』講談社学術文庫。(もう一冊は読んでいるところ) 借りた本二冊 先日読み終えて、以下の感想を書いた。 「俳句鑑賞に新機軸を拓き、俳句史はこの一冊で十分と絶賛さ…

華厳経の「数論」と落語「時そば」という問題提起

はじめに 『現代人の佛教4 華厳経の世界』末綱恕一著 1957.3.15 初版 1976.3.20第五刷 春秋社刊 を読みました。中沢新一さんの『レンマ学』の「華厳経の数論」の項で引かれていたからです。第一篇は華厳経の歴史的背景と、各品のガイドですが、細かなところ…

寺山修司さんの短歌を五・七・五に還元するという戯言 2 『空には本 冬の斧』

はじめに 今回のブログは、 mochizuki.hatenablog.jp の第二回。『空には本 冬の斧』を考えます。 凡例 底本は『寺山修司青春歌集』角川文庫 平成四年三月十五日改訂初版の「空には本」の、今回は 冬の斧。 基本的に機械的な切り取りと並べ替えによって短歌→…

Are you Happy? ―佐藤優樹さんのつかみ方

Are you Happy? ずっとAre you Happy? がよく分からなかった佐藤優樹さん。 www.youtube.com2018年6月13日発売の両A面シングル「Are you Happy?/A gonna」 が、先日、ブログに書きました。 ameblo.jp 佐藤優樹さんは、物事を決して、抽象的・概念的・一般論…

寺山修司さんの短歌を五・七・五に還元するという戯言 1 『空には本 チエホフ祭』

はじめに 以前、以下のブログを書いた。 mochizuki.hatenablog.jpこの中で、私は ただ、「俳句」であることと「短歌」であること。の境界を寺山さんがどこに置いていたのかと考えてみる。両者は全く別の表現形式であると明言している寺山さん自身が、俳句の…

似てるっ! ――『音楽寅さん』における桑田さんの「似てるっ!」という感嘆詞

はじめに 音楽寅さんという懐かしい番組で、オープニングテーマを作る回を見ていると、桑田さんは、うまくいった! いい! 最高! など肯定的な感極まった時の感嘆詞として「似てるっ!」を用いていた。 これが、「来た」 同様の感嘆詞に「近い!」「来てる…

個人的ノートまとめ(いつもでしょ)

はじめに ノートがある。自分以外には何の意味もないノートがある。後日、必ず(自分のために)役立つ資料となるノートの断片だが、いざそのとき、ノートのままでは閲覧性に難がある。なぜなら、可読性が著しく悪い文字を書いているから。 そこで、まとめて…

書字はなぞるを反復する ――『美しい痕跡』のごく一部の感想

はじめに twitterに流れてきた本書。 『美しい痕跡』手書きへの賛歌 フランチェスカ・ビアゼットン著 みすず書房。 私は「手で」(わざわざこのような副詞で修飾することが必要な時代である。本書内ではこれとは別に「紙の」という新しい名詞についても紹介…

あれ? おもしろくないぞ 『タコの心身問題』

はじめに 『レンマ学』(中沢新一)を読んでいて、この本からの引用がありました。私は、脳=腸 を半ば本気で信奉しているフリをしており、その意味で「頭足類」には非常な関心を抱いているとともに、メンダコとコウモリイカには目がないときていますから、…

応援するならお金を使うしかないよね今の世の中じゃ

はじめに コンサートできない。物販販売も延期。このままでいいの~? って危機感がひしひしと感じられます。ハロプロがんばれ。 ひなフェス 無観客だからこそ、ひなフェスは三日間配信、放送によっておそらくは、これまで以上に多くの方がリアルタイムで観覧…

SDGsに貨幣は不要

はじめに 昨日、新型コロナ肺炎の感染防止のためのさまざまな要請について、思ったことをつらつらと書いたブログを上げて消した。その結びとして書いたのが以下の文章だった。 社会制度と生命との関係を、見直すべきなのだと思う。呼吸する空気の偏在を正す…

『磁力と重力の発見 2』 断片メモ

はじめに 『磁力と重力の発見』全三巻を、ときどき読み進めています。いまのところ、『3』の三分の一くらいまできています。ヨハネス・ケプラーを取り上げていて、それが『レンマ学』と交差しているところがおもしろく感じ、ランダムに併読していると、時折…

『レンマ学』から始まるノート 1 ―言語眼鏡による転倒

はじめに 中沢新一さんの『レンマ学』は、とってもお得な一冊だ。なにしろこれは中沢さんの集大成の根本テキストなのだから。 bookclub.kodansha.co.jp その中心には「華厳経」がある。まだぜんぜん途中までしか読んでいないが、私はこんな感想を書いた。 中…

碧梧桐俳句集 ―俳句と象徴

はじめに 『碧梧桐俳句集』を読んで、こんな感想を書いた。 自由律俳句新興の祖として、荻原井泉水さんと双璧だった「新傾向俳句」運動の旗手で、一時は全国的一大勢力となったのにもかかわらず、荻原井泉水さんと袂を分かちて後は次第に迷走し「短詩」「ル…

『謎の男トマ(一九四一年初版)』―その眼と身体の夢(死)(に限って記す)

はじめに ある小説を書こうとしていることは、以前述べた。そしてそのために、デリダの『盲者の記憶』から『触覚、』に激突(しかし私に「激突」に足る「重さ、または密度」を保持し得ほどの「渦」が継続していただろうか?)したと思った相手の中の人は、ほ…

キュビズム律俳句とは ―自由律俳句への自由なアプローチと助詞

はじめに 偶然出会った荻原井泉水さん関係のブログの中に、自由律俳句とは、随句とは、短詩とは、という内容がとても明快かつ詳細に書かれていた。 yahantei.blogspot.com の中の、この記事である。とても有難い。今日、これからしっかりと勉強しようと思っ…

私的華厳2 カオス・ノモス コスモス・アンチコスモス カオスモス

なんとなくはじめる 井筒さんの「アンチコスモス」は「コスモス」から捉えた「カオス」の性状を示す。 コスモス→カオス=アンチコスモス 中沢さんの「反コスモス」は「余剰せるコスモス」だが、それは「ノモス(差異の共時的大系)をはみ出したコスモス」で…

窃視0度の触角 ―ジャック・デリダ『触覚、』からモーリス・ブランショ『謎の男トマ』への序説

今回のブログに先立ち、私はいかなる性犯罪にも肯定すべきところはまったく無いものと否定し、断罪する立場にあることをあらかじめ表明します。 はじめに 2月5日 デリダ『触覚、』読んでたらブランショ『謎の男トマ』読まねばと思う。引用だけでもうたまら…

接続詞 ―「間」にある主観

はじめに 自明のこと。だが、自明、だからこそ、それを抜きにし、ては、伝わらないことが。 むしろ、「接続詞」だけが、私を構成しているといえる、ので、はないか? 接続詞は記号に擬態した感嘆詞である さらに、また、感嘆符(!)ですらある。 繰り返す、…

井泉水句集(新潮文庫版) 付録 俳話より

はじめに 前回に引き続き「自由律俳句」だ。 私の手元にある荻原井泉水さんの句集は新潮社版の昭和12年1月7日の版で、昭和4年から昭和9年、鎌倉在住の頃の句を集めたものだ。昭和9年に五十歳となった井泉水さん的にも、よいまとまりの期間だったのだ…

自由律俳句の歩き方 ―十重唯識と花鳥諷詠

はじめに 自由律俳句は、作るのに資格がいると思う。 その資格がない人間が作ったものは、単なる短文であり、珍文奇文だ。もちろん、それらの中には、一言ネタとしてはおもしろいものも多いし、「すごい」と思うものも少なくはない。私は、この「すごい」と…

私的華厳 1 物・事・理・法

物・事・理・法 物は時間的で理に依拠して変化する。事は空間的で法に依拠して移動する。 物は事の経時的顕れであり事は物の共時的実相である。 物には境界があり事には流動がある。 理は物によってのみ部分的に顕れ法は事によってのみ部分的に顕れる。 全て…

gut feeling ――『感情とはそもそも何なのか』メモ

はじめに 可能な限り「唯物論」で推していきたい身としては「感情」のメカニズムを勉強することは不可欠だと思っている。 本書『感情とはそもそも何なのか ―現代科学で読み解く感情のしくみと障害』(乾敏郎 ミネルヴァ書房 2018.9.30)は、その意味でとても…

ボトルメールとしての表現 ――誤配されるテキストは感情的に処理され新たなテキストを生む

はじめに ある表現者の表現をテクストとして扱うことは鑑賞者の特権であり、限界でもある。なぜなら、表現者と鑑賞者との間の隔たりは決して埋めることができず、他者と自己とは決して、同一化されないからだ。また、同様に表現者と表現との間にも隔たりは存…

真如の分節により生じた「エロス」から考える「未来」の在り処 ―輪廻と映画の比喩の問題点

はじめに 仏教では存在をは、 ①「無常」だから「物はない」 ②「縁起」だから「物はない」 と考える。 「無常」とは、「存在する物はそのまま存在し続けることはない」ということを表している。なぜ、そのまま存在し続けることができないのか、といえば物は複…

刑事と泥棒 ―相棒18「第十話」とルパン三世「プリズン・オブ・ザ・パスト」感想

今回のブログは、タイトルの二作品に関するネタバレががあります。閲覧注意です。 はじめに 相棒18第10話「杉下右京の秘密」と、金曜ロードショー、ルパン三世「プリズン・オブ・ザ・パスト」を、たまたま同日に見て、どちらも感想を書いておきたくなり…

漫才の文体 ――THE MANZAI 2019の感想

はじめに 2019年12月8日に放送した THE MANZAI を見ました。漫才はやはりおもしろいなと思いました。印象に残った漫才コンビのことを、忘備録として記しておきます。 出演者1 漫才を見ていると「文体」のことを思います。 相方という「擬似的な他者…

Associationism+LETS ――貨幣は全てを手段にするから

はじめに ときおり、「アソシエーショニズム」について考えているわけですが、やはり理論的にいって、もっとも原理的で先鋭的であるのは柄谷行人さんの「消費協同組合」を軸とした「交換形式による歴史考察から導かれる貨幣揚棄の未来」像なのです。 『批評…

覚めない悪夢 ――『悪夢探偵』のラスト30分を見て

以下のブログは、2007年の『悪夢探偵』塚本晋也監督の結末部分のネタバレを含みます。ご注意ください。 はじめに 偶然、テレビで見たそれは、見たかった映画だった。理由は、それが「塚本晋也さんの映画」だったからだ。 www.youtube.com 番組表によると…