はじめに
石田さんを座長とした初の演劇女子部。メイキング、ゲネプロ会見からも、その「熱さ」がひしひしと伝わってきました。
先日、DVDが届いたので早速観劇。キャストごとの感想を記します。
今回もっとも心に残ったのは生田さんの「マリタ」だったことを、まず特記しておきますね。
まずは、主演の四人から
若さゆえのまっすぐさ。不器用さゆえのやるせなさが伝わってきました。大人として役割を全うしなければならない「子供」の苦悩という感じ。そこがとても切ない話でした。
石田さん
冒頭から瞳孔の開ききった感じで突っ走る。母とのアンビバレントな関係の表現。小田さとの出会いの以前以後の狂気の演じ分け。「幸せとは…」のセリフの切なさに涙が出そうになりました。
加賀さん
強さよりも、心の弱さ、葛藤に重点をおいていたように感じました。妹の小田さんのことや、石田さんの母とのことなど。ラストの石田さんとの殺陣がすごかった。
小田さん
本領発揮、潤目全開。石田さんへの眼差しが完恋。幼さ、可憐さ。そして、最後の慈しみの表情。キャストも一緒に泣いてました。
牧野さん
メイキングのときから「王女になる人であること」「気高さ」などに悩んでいた様子の牧野さん。石田さんとの幼馴染感がとてもよく現れていたと思いました。「愛」を知らぬ二人(石田さんと牧野さん)。それを運命と受け入れる崇高さがあったと思います。
続いて印象深かったのは、野中さんと横山さん
野中さん
次元大介のような落ち着きと、渋さ。「お前は砂漠の鷹なんだぞっ!」と蹴り一発。祝杯をあげて酔っ払っているシーンをもっと見たかった気もします。中年男の魅力に溢れていて、かっこよかった。最後、マリタたちに殺されたかと思ったけど、生きていてよかった。
横山さん
石田さんのお小姓ということで、なれなれしさと節度とを、そのキャラクターで絶妙にコントロールして、石田さんを、取り返しのつかぬほどには怒らせないように、程よく力を抜かせてあげるよう、道化てみせるという、一触即発の、ストレスのたまりそうな役には、横山さん自身に通じるところもあったのかもしれません。声も表情も動きも明るくて自然でした。
続いては飯窪さんと佐藤さん
飯窪さん
抜いたように見せる演技がこなれていて堂に入っていました。シリアスな展開のなかにあるオアシスのような場面。加賀さんが王だったと知らされたときの後方での芝居を、もっと前に出してあげたかった。
横山さんと飯窪さんの、セリフと歌とを行き来する技が、すばらしかったです。ハロプロの植木等さんといっても過言ではないでしょう。(cf.現代の植木ことカールスモーキー石井さん以来)
佐藤さん
憑依系の佐藤さん。今回も素顔をまったく見せない没入ぶり。サイコパスの笑いが怖かった。仕込み杖の技を、もっと見たかったです。
最後は譜久村さん、羽賀さん、森戸さん
譜久村さん
強かった。砂漠の鷹を率いるジャンヌ=ダルクのような存在感がありました。また、森戸さんの母としての強さも、にじみ出ていたと思います。
羽賀さんと森戸さん
笑いの場面を担当する二人。舞台での見せ方があっさりしていたため、流れてしまった感があったのが気の毒。客席の反応がもっとDVDにのっていてもよかったのではないかと感じました。
最後、石門を守るため並び立つ二人の、健気さ、清清しさに胸をうたれました(ここで討ち死にしたのではないかと感じました)
そして、生田さん
「マリタ」という女
終始、体重や重力を感じさせない身のこなし。人を食ったような表情。うわべだけを取り繕ったような受け答え。「やるじゃん」の一言で散っていく潔さ。
生田さんはマリタであり、マリタは生田さんにぴったりだと思いました。
マリタがなぜ、権力に飼われることを良しとしながら、この世を諦観して無欲であり、ただひたすら生き死にの場にのみ「生」を感じるようになったのか。殺人技を磨くこと以外の人生のすべては、ばかげた芝居でしかなく、主義も信義も忠義も、くだらないものに過ぎないと達観するにいたった過去を、スピンオフで見てみたくなりました。
さいごに
今後も演劇女子部は続いていくのだと思います。
今回のお話は、「11人いる。東の地平、西の永遠」とそっくりでした。
私は彼女たちによる「さくらの花束」のような現代劇?が見てみたくてしかたがありません。つんくさんの歌の世界観を盛り込んだ、produced by つんく♂ なら申し分ないのですけど。