望月の蠱惑

enchantMOONに魅了されたので、先人の功績を辿って、自分も月へ到達したい。

ざっくりさん講読1「ミリンダ王の問い」1.序章

はじめに

ミリンダ王の問い」東洋文庫7 平凡社1988年4月15日初版第22刷をざっくりと講読してみよう。

 ギリシア文化の王様がイケイケでインドあたりまで支配して、退屈しのぎに

「仏教」ってどうなの?

と、そこらじゅうの教祖を質問攻めにする。で、みんな質問に答えられなくて、黙ってうつむいたり、ほうほうのていで国外へ逃亡したりして。

「仏教」つまんね。

で、このままじゃ、ブッダにしめしがつかねぇってんで、天界で、輪廻のステージをどんどんアップしていた賢い男ををぶつけてやろうっていうことになった。

因縁の対決

 この二人には五百年まえからの因縁があってね。とそのあたりから初めて、今回は、この二人が現世で出会うまで。シャーとアムロの出会いに匹敵するようなストーリーをお届けしよう。ページは第一巻3ページから38ページまでの、「序話」ヤクルトジョーワァだぁーれのもっのぉ~」君は時の涙を見る……

1.因縁

 坊さんが掃き掃除してて、ゴミがたまったから小坊主に「これ捨ててきて」って頼んだ。小坊主はぼけーっと通り過ぎてしまう。「無視かよっ!」と坊さんは追いかけていって「これ捨ててこいって。おい、こら」小坊主、華麗にスルー。

「なめた小坊主だな。こいつ」と坊さんが持ってた箒で小坊主をぶん殴った。

 小坊主は「何それこわい」と泣きながらガンジス川へゴミ捨てにいって
「殴られてもちゃんということ聞く俺って偉い。だから絶対、頭よくなるし、王様になるし」と願掛け。

ガンジス川「ええんやで」

 その様子を、箒を片付けてから、小坊主の後をつけていた坊さんが見てて、

「おいおい。小坊主ごときの願いが適うなら、俺のほうが偉いし。俺だって口げんかなら誰にも負けないやつになってやるし、俺のほうが偉くなるからな」

 ―二人は五百年後にあいまみえるであろう(誰?)

で、小坊主が、ミリンダっていう強くて口の減らない王様になりましたとさ。

2.仏教つまんね

 連戦連勝。拡大する領土を見回りながら、暇をもてあますミリンダ王は、
「ここインドじゃん? 仏教、どうなの?」
って、尋ねると、五百人の地元民が目をキラキラさせて答えた。

「偉い人6人いるよ。カッサパ。ゴーサーラ。ナータプッタ。ベーラッタプッタ。ケーサカンバリン。カッチャーヤナ。きっと満足できるから」

 ミリンダ王は、その五百人を引き連れて、ハーレーダビットソン的なものにまたがって、まずはカッサパの家へ。

「どうもどうも。で、何が世界を支えてるの?」

「地が、世界を支えているんだお」

「ええ~。地獄は地の下にあるっていったじゃん。底抜けてんじゃん」

「……重苦しい沈黙)」

 

「次、いこ次。ゴーサーラんとこ」

「ね、善悪の区別ってどういうの。因果応報なの?」

「善とか悪とかないし、因果応報とかもないから。身分カースト絶対だから」

「うっそ。じゃ、この世で手を切られたら、足を切られたら、耳や鼻を切られたら、ずっとそのまま生まれてくるっての? は? 善悪無意味じゃん。たのしけりゃいいじゃん」

「……(ゴーサーラ顔真っ赤)」

ハァ。なに仏教つまんね。インド空っぽじゃん。ギリシア最強!

 

 その後も、ミリンダ王の「(ピコーン!)もしかして仏教って本当はすごいの?」熱はさめず、東に偉い先生がいると聞けば言って質問をし、西に徳の高い師がいると聞けば飛んでいって、質問攻め。

 沈黙。完黙。悶死。国外逃亡。の山山山。その弟子たちだって、教えに疑問をもって、離れていったり、互いを慰めながらヒマラヤへ逃げていったりした。その数十億。

3.あいつだ。あの白い奴だ!

 ヒマラヤにすんでた、すごい人。アッサグッダは、「ミリンダ王、困ったもんだね」と群集をみおろして

「本当に誰もいないの。誰も、ミリンダをやりこめられるやつを知らないの? 一休とか彦一とか吉四六とか」

 でも全員グロッキー状態。「こんなとき、維摩詰でもいてくれたらなぁゴニョゴニョ」なんて、存分にためて、ためて、

「僕、しってるも~ん」とアッサグッダ自作自演。

「天界の三十三番地にマハーセーナ君がいる。あいつは、すごいって噂だぜ! 今からいってみようか」

全員つれて、天界へ「クルクルバベンチョパペッピチョヒヤヒヤドキッチョノモ~グタン」

「おじさんここは?」

「ここは天界三十三番地。私、天帝のインドラでげす。なんなりとお申し付けください」

ミリンダ王がうるさくて困ってるの」

ミリンダ…? ああ。そいつ前、天界にいたいた。天宮のマハーセーナ君なら、あるいは。じゃ、行って、人間界に生まれなおしてもらうように頼んでくるお」

「よろしくやで」

天帝インドラ。「頼むよぉ」

マハーセーナ。「人間界面倒。俺、Keep on 上昇志向だから。いまさら人間なんてまっぴら」

天帝インドラ。「頼むよぉ」

マハーセーナ。「人間界面倒。俺、Keep on 上昇志向だから。いまさら人間なんてまっぴら」

天帝インドラ。「頼むよぉ」

マハーセーナ。「人間界面倒。俺、Keep on 上昇志向だから。いまさら人間なんてまっぴら」

アッサグッダ。「おっ前がひっつようマハーセーナッ! おっ前がひっつようマハーセーナッ!おっ前がひっつようマハーセーナッ!」

マハーセーナ。「(目キラキラキラ)俺、ヤルッスッ。待ってろ人間!」

3.人間界の世話役押し付けろ

 仕込みを終えたアッサグッダたち。まずは一安心。

 でも、生まれなおしたマハーセーナなんて、ただの赤ん坊じゃん。マリアんとこみたいに「神の子」とかいう手は使えないわけだし。うまいこと出家させて、こっちにつれて来ないと、意味無いじゃん!

アッサグッダは考えた。

「そうだな。だけど生まれる前から七年十ヶ月くらい、うまいこと両親を丸め込んで、子供を出家させるだけの簡単なお仕事です。ってやりたい奴いる?(みんな首ブンブン)。

 あ、こないだの寄り合いこなかった奴いたじゃん。洞窟で座禅してたやつ。寄り合いこないのは、重罪だよなぁ。どうですかぁお客さんっ!(異議なし。異議なし)じゃ、そいつにやらせよ」

そこへフラフラと当のローハナ登場。「なになに。何の話?」

「かくかくしかじか。罰としてこいつ出家さえてつれて来い。そしたら許してやる」

ローハナ「ハハー(平身低頭)」

4.出家さすぞ出家さすぞ出家さすぞ

ローハナ ここが、マハーセーナが生まれる予定の修行僧の家かぁ。うまくやんないとな…

夫「おい。また立ってるよ。あの坊さんは、なんだい。米も水も受けとらねえ、『先輩。先に托鉢へ行ってください』って言ったって動きゃしねえ。で、厭味いってると、馬鹿みてぇに頭さげて、フラフラ歩いていきやがる。ったく。これじゃ俺んとこが、坊さんを虐待してるみてぇじゃねえか。外聞が悪いや。え。ガキだっているってのによ。七年だよ。七年。馬鹿じゃねえのかまったく」

ガキのマハーセーナ「家にある勉強飽きた。先生馬鹿じゃん」

と、そんなある夕方、家に戻る途中の道で、夫がローハナと出くわした。

「先輩。今日は何か施しを受けていただけましたかね?」

「はい。いただきました」「え! いただいた! そりゃ、どういう風の吹き回しで、じゃねえや。いただいた。七年もダンマリで、今? そりゃまた。ま、いいや。へへ。そうですか。じゃ、先を急ぎますんで、失礼」と大急ぎで家に戻って、妻に、

「おいお前。あの坊主になんかやったのかい?」「いいや。お前さん。米も水も受けとりゃしないよ。いままで通りさ」

ガキのマハーセーナ「仏教つまらん。もっと難しいのないの?」

「へへえ。あの坊主。変わりもんだけならまだしも、嘘つきやがった。嘘はいけねえな。あしたとっちめてやらねえとな」

翌日

「あんたね。いくら自分の方がえらいからって、嘘言っちゃいけませんよ。え。おっかあは、何にもやってないって、いってますよ」

「いえ、ご主人。確かに私は米や水はいただかなかった。ですが、奥方が『それでは先輩お先へどうぞ』とおっしゃった。そのお言葉を、しっかりといただきましたよ」

 夫はそれで感激しちまった。七年かけた誘拐詐欺っと口が滑った、の仕掛けが、ようやく動きだして。「ああ、この坊さんはなんて正直なんだ。米や水でもねぇ。ただの言葉だってのに、ちゃぁーんと『いただいた』と自己申告するなんざ、さすが、先輩だけのこことはあるな」と。

「先輩。これからは、いつなんどきでも、中へお通りいただいて。お食事など差し上げますので、どうかこの未熟ものを導いて下さい。どうかどうか」

 と、出入り自由の身となった。

ガキのマハーセーナ「あの坊さんなら、もしかしたら、もっと面白いことしってるかもしれないぞ」

 ローハナは、洞窟での修行で、人の心の声を聞くことができます。それで、マハーセーナの勉強欲も程よく煮詰まってきたことを知りました。

「おじさん。おじさんは、仏教のこと詳しいよね?」

「自慢じゃないが、かなり詳しいぞ」

「じゃ、僕に、いろいろと教えておくれよ」

「いいとも。おしえてやるよ」

「やったぁ。じゃ、教科書とか、単位表とか」

「まあまあ、あわてるな。教えるには教えるための時と場がある。私は本式の先生だから、教え方も本式にやらないと協会から免許剥奪されてしまう」

「じゃ、どしたらいいの?どしたらいいの?」

「まず、出家だな。じゃないと、教えられない。だからな。お前はお前のお父さんとお母さんをよーく説得して、出家の許しをもらうんだ。そうすれが、おじさんとおじさんの先生たちがいる山へ連れて行ってやろう」

「絶対だよ」

 知識欲の塊だったガキのマハーセーナの情熱に、両親も動かされました。「えらくなって、帰っておいで」と一人息子の出家に賛同したのでした。

 ローハナ「(チューニング)あ、アッサグッダ先生。やりましたよ。ミッションクリア! え? まだ? みっちり仕込んで、ミリンダとの対決を同意させろってんですかい? そりゃ話が違う。七年と十ヶ月は過ぎて…… はい。それいわれると弱いんで。へえ。わかりました。二十歳になるまでにはきっと。ですよねぇ~。ミリンダ死なねぇかなぁ。え。そっちでも引き受けられねえから、さっさと論破して解脱させろ? はいはい。わかりましたよ、畜生め。仕込みゃいいんでしょ。こうなったら、マハーセーナの師匠で、一生食ってやろうじゃねぇか。てて、こっちの話で。心ン中読めるのは、お前だけじゃないぞって。冗談ですよ。冗談。いやだな、真に受けちゃ。やりますよ。あと十三年で、ミリンダなんぞにまけねえ知恵つけてやりますよ。じゃ」

5.熱中時代教師篇

  二人は熱心に勉強して、マハーセーナは二十歳になります。

「(心の声)あーあ。勉強はしてるけど、なんかもっと大切な経典とかあんのになぁ。見掛け倒しだったなぁ。師匠間違ったかなぁ」

ローハナ「(ピコーン!)おまえ、今、いけないこと思ったな。先生をぶ、侮辱したッツ。ワナワナワナ」(よしよし。計画通り)

マハーセーナ「(やべ。まじ怒ってる。てか、何こいつ。心の中読めるのかよ。聞いてねぇよ。これも、みんな筒抜けかよ。マズイな。まずいな)どうも、申し訳ありませんでした。先生最高です。先生がいたから私もここにいられるんです。先生一推しで、今後もお願いしやっす」

「無理。まじ傷ついた。師匠馬鹿にする、すごい罪ね。これ償うの、よっぽど大変なことあるネ」

「あ~あ。怒りすぎて、壊れかけのレディオ。何でもしますんで、破門だけは、ご勘弁を」

「じゃ、ミリンダやっつけてきて」

「は?」

「それまで、顔もみたくないから」

「え。それじゃ、その間、私はどこで寝起きをすればよろしいのでしょうか?」

「アッサグッタさんっておじいさん。偏屈だけど親切だから、そこいけばいいじゃんない? 住所ここ。じゃね」

6.たらいまわし

 マハーセーナは、アッサグッタのところへいった。偏屈なじいさんだったけど、しばらく通ううち、アッサグッタのところにいた女性の信者が身の回りの世話をしてくれるようになった。

 ある日、じいさんは、マハーセーナに、「何かありがたいお話を聞かせてほしい」と頼んだ。マハーセーナは、アッサグッタとその婦人に、高邁な真理を説いた。「うん。合格!」アッサグッタは「イイネ」をして、1000キロくらい先にいる、ダンマラッキタという人が、ブッダの言葉詳しいから、教えてもらいなさい。と言った。

「千キロ、無理」

「無理じゃない」

「無理」「言ってらっしゃい」「無理」「托鉢できる家もない」「無理」「死ぬ」

キャラバン登場。「坊さん。どこまでいくの? あ、ついでついで。一緒にどう」

一挙にお土産付贅沢旅行に。

「ダンマラッキタ先生。こんちわ。さっそく教えて」

ものすごい吸収力。「休憩いらない。もっと教えて」

このようすを、ヒマラヤからライブビューイングでごらんの皆さんは、喚起熱狂。

鳴り止まない、マハーセーナコール。ヒマラヤへ。本当は凱旋じゃないけど、

「ただいまぁ~」「おかえりぃ~」

 で、ミリンダ王のデータを教えられて、その対策を練っていた。

7.巡り合い宇宙

月がきれいだから、誰かとタイバンしたいな。誰がいい?」

「はあ、アーユパーラってのがおりますな」「よし、行ってみよう」

ミリンダ王は五百人を引き連れて、リンカーンコンチネンタルで乗り付けた。

「なんで、出家すんの?」

「真理を実践し、心の平安を実践するためですよ」

「でも、在家の人っているじゃん? そういう人だってすごいじゃん?だから、出家って無意味じゃんか。っていうか、前世で悪い子としたから、出家してみんなで罪滅ぼししてんじゃないの? ね。出家って、修行じゃなくて、バチじゃないの?」

「……(アーユパーラの涙目)」

 だが、そのとき引き連れていった五百人が動揺してないことに、ミリンダ王は気がついた。

「(こいつら、切り札を隠してやがるな?)」

「あ~あ。仏教。つまんね。インドつまんね。誰か、俺とタイバンはれる奴はいねぇのかよ」

「ナーガセーナがいるぞ」

ミリンダ王は、なぜかその名前を聞いて、頭を箒でぶんなぐられるような恐怖に襲われた。

「おい。お前。ナーガセーナってのは、そんなにすごいのかい?」

「そりゃもう。この世の上から下までひっくり返したって、あれほどなのはいやしません。ただいま売り出し中の秘蔵っ子で」

「そんなら、ここへ呼んで来いやぁ!」

 伝令、往復。

「会いたいなら、そっちから来いやぁ!」ダソウデス…

 ミリンダ王、例によって五百人引き連れ、今回は自慢の軍隊パレード付で、ナーガセーナがいるフェス会場に乗り込んだ。そして、主催者に「これが、ナーガセーナフェスか?」とたずねると、「間違いありません」という。

 ミリンダ王は、主催者に「ナーガセーナがどこにいるかを、教えてくれる必要はないからな。余が、一目で見分けてくれようぞ」と群集内に足を踏み入れた。その数、四万。

ミリンダ王「逃げちゃだめだ。逃げちゃだめだ。逃げちゃだめだ。逃げちゃだめだ。逃げちゃだめだ。逃げちゃだめだ。逃げちゃだめだ。しかし、私にララァほどの素養があるか、ということだが……」

 群集の中央に静かに座る一人の男の姿が、ミリンダ王の目にとまった。とたんに、ミリンダ王は総毛立ち、慄き、震えた。

「あの、男だな」

「御意」

「見える。見えるぞ。私にも敵が見える」

頬を箒でぶっぱたかれたかのような痛みに耐えながら、ミリンダ王は、ナーガセーナに向かって、歩み寄っていった。(序話 完)