望月の蠱惑

enchantMOONに魅了されたので、先人の功績を辿って、自分も月へ到達したい。

青春の光と影 ―横山玲奈さんのこと

はじめに

 2016年12月12日加入発表の13期メンバー 横山玲奈さん。
 2001年2月22日生まれ。埼玉県出身。イメージカラーは、ゴールドイエロー。特技はアルトサックス演奏、ジャズダンス。チャームポイントは笑顔。趣味はアイドルの曲を聴くこと。(以上プロフィールより)

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私が横山さんを見ていて、いつも思い出すのは、富田靖子さん主演の映画でした。

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The アイドル

 私はまず、横山さんの舞台度胸のよさに驚きました。研修生となって3ヶ月ほどでの大抜擢です。

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 武道館の階段を駆け下りてきて自己紹介をした彼女はごく自然に笑い、喜びを表していました。メンバーからの「かわいい」「女子だ」との感想が聞こえる中、高校一年生という彼女を見て、中学一年生の間違いではないかと半ば本気で思いました。「チャームポイントは笑顔」とのプロフィールが言葉通り機能している人を、私は始めてみたような気がしました。

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気の強さ

 加入後の新曲は13期曲として二人を全面に押し出した振り付けになっていました。加賀楓さんとのペアを、横山さんは臆することなくやり遂げます。そしてキャンペーンの会場では、意外な「気の強さ」を発揮したりもしました。

覚えてるかどうか分からないんですけど、なにかの取材の時に「13期は先輩のキャラを取ってる」って話を工藤さんがしてたんですよ。で、れいなは埼玉県出身が被ってるって言われて、私が「いや別に被りたくて被ってるわけじゃないんで」みたいな事を言って……

 この会場では、13期教育係の工藤さんの苦言に対し、横山さん本人が真っ先に言葉を返したことに、他のメンバーから「よく言った横山」的喝采がおこり、その場を盛り上げたのでした。

 ここで、ちょっと脱線。

 特撮ヒーロ番組への出演が決定した工藤さんの記者会見が、「共演者下げ」だったとの評判をネットで見ました。「加入当時の狂犬チワワぶりが復活した」とか、「いや工藤さんは全然変わっていないんだ」とか。「今後のことを考えたら、もっと謙虚に共演者との良好な関係を保てるようにすべきだ」とか、「いや、工藤さんは気配りの人だから、記者会見なれしている自分がこんな風にイジリますのでどうぞよろしくとのコンセンサスをとった上での言動だったに違いない」とか、反応は様々でした。

 加入当時の工藤さんは、「エッグ」を背負っているとの自負から、ああいった態度をとっていたのだと思います。そして今、ハロプロから女優へという、真野さんが拓いた道を太くすべく、「ハロプロでの経験は即戦力になるんだ」ということを、アピールしたかったのだと私には感じられました。以上脱線終わり。

 テレビへの出演が増えて、さまざまな表情や態度が見切れてしまう中、横山さんの「悪い顔」が取りざたされたこともありました。

f:id:miyakotamachi:20180116153539j:plainこれはドヤ顔

 また、DVDマガジン vol.95の綱引きなどの対決では、その負けん気の強さ、本気さを、十二分に発揮していました。

野中 そんなちょっとしたことで出たその言葉は、よこやんの本性かもしれませんね。

牧野 まりあ思うんだよね、よこやんって、実は、怖いと思う。

横山 怖くないですよ。全然。いつもニコニコしてます。

野中 そのニコニコが、怖い。

牧野 これは、何かあるよ…

横山 何もありませんよ。常にこのままです。

(モーニングダイアリー 第12回 より)

 

  ただ、笑っているだけで渡っていける世の中ではありません。

 横山さんは、笑顔をアピールポイントだと分っています。それは、背の低さと、底抜けの明るさを伴って、抜群のコミュ力となり、「しっかりモノの妹力」「年下甘えん坊感」の双方を兼ね備えた「愛されキャラ」を確立させていたのです。

 家にいるときのままで、それが可能なはずはないのです。そして、そういうキャラを定着させようとすることは、彼女にとって全く正しいことだったと思います。

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14期 森戸知沙希さんの加入

13期も、森戸さんに持っていかれました。いっぺんに持っていかれました。バ~ン!と
(モーニングダイアリー 2017年9月28日放送分より)

 12期の『いつまでも「お客様」』感が、13,14期の加入によって払拭されつつある今日この頃、(実は今回はこちらを書こうとしていましたが、散漫になりそうだったので中止しました)その最大のあおりを食らったのが、「新人感覚皆無の13期」でした。

残酷な現状認識からの逆転

 教育係の工藤さんをして「教えることが何も無い」といわしめ、教育係としての職務を放棄するかのごとき、森戸さんとの親睦を目の当たりにした時、横山さんは、自身の「かわいい」キャラが、通用しなくなったことを確信したのです。

 悩んだと思います。そして、試行錯誤紆余曲折を経て、横山さんは新たなキャラを編み出し、即実行しました。

「ヘン顔」「ヘンな動き」「かまってキャラ」とでもいいましょうか。とにかく、「笑ってるだけでかわいい」から「ヘンかわいい」への軌道修正したのです。

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この道は

 この道は、保田圭さんが確立し、小川真琴さんが踏み迷い、鈴木香音さんが開き直った道でした。ただ、横山さんは、そちらを標榜しつつ、石川梨華さんー亀井絵里さんの「ウザかわ」寄りの「ファニーさ」を狙っているのだと思います。それは、彼女の「ナチュラルさ」にあっており、かつ、「常に受身の森戸さん」にアグレッシブさで対抗できる優れものであったと思います。

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多面展開

 そして、羽賀朱音さんと「いしどぅ」同盟を組むことで、食い合うことなく、石田さん大好きキャラを押し出すことにも成功しています。

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ナチュラルさ

 『演劇女子部ファラオの墓』における、パビ役。DVDマガジンvol.100『拝啓ハル先輩!』でのレイナ役。ともに、コメディエンヌとして素晴らしい出来栄えだったと思います。「観客から笑いをとる愛くるしい役」を舞台上の空気感で成功させるのは相当に難しいものと思いますが、完全にはまっていたと思いますし、ハル先輩のメイキング(DVDマガジン vol.103)での、はじけっぷりも、彼女らしく自然だったと思います。

 しかし、

モーニング娘。'17横山玲奈が“20問20答”でハロプロ愛を語る!【ハロプロ誕生20周年記念連載】2017/11/07 22:30 配信

Q20:あなたにとってアイドルとは?

私にとってアイドルは本当に必要な存在。誰も信じてくれないと思うんですけど、私はモーニング娘。に入る前はずーっと本を読んでいたりする、もの静かな人間だったんですよ(笑)。でもモーニング娘。に入って、MCとかいろんなことに挑戦することによって、どんどん自分も成長できた面もあると思うので、本当にアイドルになれて自分も良かった。自分を変えてくれた大切なものです!

という本人の言葉がありました。今の彼女の「ナチュラルさ」が、モーニング娘。という環境で解放された「理想の自分」であり、その「理想の自分」を好きでいられるのならが、心配はないのですが……

ライバルたち

こなれ感

 13期は出来過ぎなのです。加賀さんが、研修生時の「リーダー」的役割を表向きには封印して「後輩」に徹し、横山さんと横並びに立つことができる人であったことが、横山さんにとって大きな拠り所になっているのだと思います。横山さんも、そんな加賀さんの姿勢を真っ向から受け止めて、遠慮しない「夫婦漫才」と言われる二人のじゃれあいには、安定感があります。

見せない努力

 ハロプロでの圧倒的な経験の差を埋めるため、二人がどれほど努力していたのかは、想像することしかできませんが、加入発表後即始まった冬のハロコンから、春ツアーという怒涛のセトリを覚えるのですから、並大抵ではなかったはずです。(これに輪をかけて凄まじい森戸さんの努力については別の機会に)

 しかも、加賀さんにだって、工藤さんなみの、いえそれ以上の、「研修生の矜持」があるはずです。同じ13期の横山さんに求めるものだって、とてつもなく高いものであったと想像できます。

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 DVDマガジンVol.104に収録されていたコンサンートでの飯窪さん企画「スローおよび倍速ダンス」において、"Tiki bun”と"Password is 0"のフリを完璧に踊り、ドヤ顔まで嵌めるという職人芸をやってのけたことも、℃ーute さんたちから加賀様と呼ばれ、清水さんも振り付けを当てにしていたという加賀さんの存在が大きかったことと思います。(教えてもらうというだけでなく、ライバルとして)

さいごに

 私は、横山さんは「意地悪」な人なのではないかと感じています。まだ、その意地悪さを発揮する場面はないと思いますし、できうればそういう面は封印していてくれるといいなと思うのです。

 その意地悪さは、思春期特有の「負けん気」「承認欲求」「そもそも自分とは何者なのか」という葛藤からおこる、他人への攻撃衝動、実体なきジェラシーから起こります。

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 『アイコ16才』で、アイコが紅子に感じる苛々。

 普段は、爆発ギリギリのところで「笑い」したり「道化」になったりして、正対することを避けている「おつきあい」。ですが、メンバーや他のグループとの競争の日々にあって、いつでも「ニコニコ」と笑っていられるほど、甘い世界ではないでしょう。

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 私は横山さんの「青春」を演じる映画(演劇)を見たくてたまりません。そこでは、彼女が表に出さない「闇の顔」を見せてもらいたい。そして、そのことに悩んで成長していくという、アイドル映画の王道を、どなたか撮ってみてはいただけないでしょうか。この際、羽賀朱音監督作品でもいいです……

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 以上