はじめに
小学生のころ、読書感想文を書いて提出したら、「これはあらすじだから、ちゃんと感想を書かないとだめ」と注意された。以来、感想文はおろか、いかなる文においても「あらすじ」を書いたことがない。こうして、わたしの「あらすじを書く能力」は退化してしまった。
原稿用紙300枚程の「話」を書いたので、せっかくだからどこかへ応募してみようかという気になったが「1200文字以内であらすじを添付」という応募規定に引っかかった。
あらすじというのは、要旨でも、予告編でも、ツカミでもなく、それはもう、ただ淡々と話の本筋を始めから終りまできちんと拾った、つまりは「背骨」の描写なのだろう。
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プロット?
あらかじめ、プロットを作り、それに沿って計画的に書いていった話であれば、あらすじから書き始めているようなものなので、さほど困ることはないだろう。しかし、手元にある話は、書いて、削って、入れ替えて、付け足して、元に戻して、足して、消して入れ替えて、という風に文字数が増えていった話なので、プロットは存在しない。もともと、結末を想定して書き始めたものでもなく、このことを伝えたい、という衝動もなく書き継いできた。根本的に、因果のつかない話である。
となると、出来上がった話の頭と尻尾をつないで、あとは登場人物の出入りを記していくことで、あらすじとするしかなさそうだ。
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スジがない
なので、いちおう冒頭と結末をつないでみたらこうなった。
アルバイトをしているケーキ屋に頭から血を流した妊婦が来た。それはケーキ屋の主人の愛人だったのでケーキ屋の奥さんがケーキナイフでそのお客さんの腹を切りつけようとした。そのときケーキ屋の主人が奥から飛び出してきて愛人を庇って腹を割かれた。(ここまで冒頭)
(ここから結末)そこに嬰児の顔が見えた気がして卒倒したアルバイト。後日赤ちゃんは無事だったと聞いたアルバイトは、その店を首になった。
すっきりまとまった。
しかし問題なのは、この中には主要登場人物が誰一人登場してこない点だ。
(ここまで冒頭)と(ここから結末)の間に挿入されるメインとなる話が、このケーキ屋と直接関係がないため、これでは話を何一つ説明できていない。幸い、文字制限にはまだ余裕があるので、この間に本筋をさしはさんでいくことはできそうだ。
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ドグラマグラの場合
ミステリーでも純文学でもなく、エンターテイメントかといわれれば「ハイ」というよりほかないのだが、たとえば「ドグラマグラ」は、そのいずれもでもあるという意味でいずれでもないのではないか。「ドグラマグラ」のあらすじとはどのように書かれてあるのだろうか?
これはあらすじではないか……
ほかにもいくつか読んでみたが、「その正体とはいったい……」的な締め方をしたものが大半だ。そういえば、文学賞の規定に沿うあらすじを書いてしまってはネタバレになってしまうのだから、それを避けるのは当然の配慮なのだろう。
同じく、あらすじなのに、解説が入り込んでしまいがちな傾向もみてとれた。メタフィクション。探偵小説とされている。
ベストアンサー
この方のように、まとめられればよいと思う。だが、このようにきちんとまとめられたあらすじから、あの「ドグラマグラ」の読中読後感を想像することはできない。
小説のあらすじとは、そういうものなのであろう。
とはいえあらすじを書かねば
とはいえ、あらすじを書かねばならない。
スジのない話ならスジのないまま頭から書いていくしかない。そういう場合のあらすじは干し首のようになれば成功だ。そのためには、脳を書き出し、骨を抜き取らねばならないだろう。
おわりに
なるほど。むしろ骨は邪魔だ。ひたすら見た目だけどコンパクトにすることを心がけて、なんとか間に合わせることにしようと思う。