望月の蠱惑

enchantMOONに魅了されたので、先人の功績を辿って、自分も月へ到達したい。

わたしの短歌のつくりかた クロマニョン脳になりたい

はじめに

noteの「六枚道場」という文芸サークルに投稿される作品はどれも尖がっていてすばらしいのです。

note.com

ことさら、〈詩・短歌・俳句〉部門の常連の方々の、言葉のセレクトに常々やられています。そこでは、形式の表層にとどまりながら逸脱することで形式を進化し、深化させ、真価を見出していく光(もしくは闇)を、突きつけられるのです。

 詩は、表層の形式からは自由です。(ただし、それゆえに「いちおう詩になっている」という詩はありえないという点に厳しさがあるのだと思います。とりあえず定型の約束に叶っているだけという、いちおうの短歌、いちおうの俳句といった意味で、いちおう詩、というものはありえず、詩か、詩ではないか、のどちらかしか詩にはない。という点で、それは難しいものです)

 しかし、短歌・俳句に関しては、定型と約束事。連綿と受け継がれた「語法」「話法」といったものに、その「制度」内で抗う→

脱線

 ※これはいわゆる「ゲーデル脱構築」、ということになるのだろうか。ならば、短歌・俳句における「郵便的脱構築」とはいかなるものか? それが精神分析のメソッドで語られるものだとしたら、もしかしたらそれこそが、旧来の短歌、俳句にほかならないのではないか? 日本人は日本語を用いているが故に、精神分析は不要だ」とどこかで柄谷さんが誰かの言葉を引いていたことを思い出す。ならば、「新しい」と感じる「短歌」「俳句」の「感じ」とは、むしろ「モダン」へ遡行しているのではないかとも思われる。

 

復帰 俳句のこと

→術は、ひじょうにシンプルであって、「俳句」では、意外な事物の二物衝撃的を、主に季語の斡旋によって表現したものに、恐ろしさを感じる。

 かつて、碧梧桐さんなどが「形式」そのものに抗おうとして「自由律」が一般化したようなわかり易さとは、また別の異質さをもった俳句が、六枚道場には頻出する。

 ここで例句として引いたりはしない。「枯淡静謐な俳句」とは違う「村上龍さん」「山田詠美さん」的俳句の凄さ。それが俳句になるのか、ではなく、それを俳句にするのか! という情景描写にリアルさゆえに衝撃を及ぼす季語の斡旋。それはもう、すばらしいものです。

 わたしにはそのような俳句はすこし「疲れてしまう」のですが、それは私の体力的な問題でしかなく、そのような俳句の素晴らしさは間違いないのだと思いました。

短歌のこと

 一方、短歌の新しさは、俳句よりも目に付きにくいものです。なぜなら、俳句がしばらく足踏みしていた時期に、短歌は広大無辺な冒険に出かけていたからです。とくに、短歌は「比喩」によって日常をどのように異化するか、異物をどのように日常化しうるか、という結びつけの妙に比重が高くなっているように思います。「比喩」は、物と物との結びつけだけでなく、本来はカテゴリーが異なってて結びつけられない物と物、物と事、具象と抽象、などを、上の句、下の句、という構造によって、並置することで、いわゆる二物衝撃的効果を与えて、かつその衝撃からあらたな宇宙を生じさせる力を生んでいるのです。

いずれの場合も、それまで「俳句」「短歌」の語彙ではなかった事物が、定型に置かれることによって、まったく妖しいギラギラしたアナザーカットを示すのです。

わたしの短歌のつくりかた

 わたしは、短歌を作る。俳句を作る。となるとどうしても、そこにふさわしい、とはつまり旧来の既存の経験則内の、ということなのでしょうが、メンタルであり、語彙であり、心の動きなどに、自らの回路を規定してしまっているように思うのです。それは、「俳句モード」「短歌モード」といった既定の回路を巡るのみの、ハトバスツアーのような、サファリパークを巡る車内のような、おそらくどこか、リアルと遊離した「俳句的リアル」「短歌的リアル」(このリアルは、幻想でも、飛躍でも同じです)を逸脱することができないのでした。

 だから、そうしたモードの外で見出したイメージや語彙を持ち込むことで、わたしのつまらない脳回路を作り直さねばならないので、そのために破壊し続けなければならないのだと考えています。

 それで、現在のところ、短歌についてはかつて自分が書いた散文や日記などから、「五」「七」「五」となる言葉を拾って、それらを組み合わせることで、それまで自分が作ってこなかった色の短歌を、でっち上げようという試みを行っています。

 これはなかなか楽しいものです。いろいろとやってみて、モード脳という、ネアンデルタール的脳から、横断的脳であるクロマニョン脳へ、バージョンアップしたいものだと思います。

 

おわりに

俳句については、季語との関わりが重要なので短歌のようにはいきません。こちらについては模索中です。