望月の蠱惑

enchantMOONに魅了されたので、先人の功績を辿って、自分も月へ到達したい。

犬神家の一族を見ながら

BS-TBSで『犬神家の一族』を放送しています。

犬神家の一族(1976年〈昭和51年〉10月16日公開)

私にとっての、初めての金田一耕助は、夜九時からやっていたテレビシリーズでした。

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このシリーズの記憶が強く、金田一といえば古谷一行と思っていたのですが、

邦画で石坂浩二さんを見たとき、イメージは完全に変わりました。

映 画とドラマとで比べるのは酷かもしれませんが、金田一には、その風采に似合わぬ、都会的な洗練とナイーブさが必要であり、陰惨な事件に寄り添わずにはいら れない悲しみをたたえていなければなりません。古谷一行さんにも、悲しみはあるのですが、若干野性味が強すぎるきがいたしましました。

ああ、琴の音が聞こ えてきました。

以後、石坂浩二さんの作品を探すと同時に、他の方の作品も見ました。

『八墓村』の渥美清さん:たんなる通りすがりのおじさん。

『同上』 の豊川悦司さん:全く違う。

『悪霊島』の加賀丈史さん:スマートすぎる。

テレビシリーズでは、片岡鶴太郎さんも演じていました:金田一ではない。

金田一耕助の冒険』の古谷一行さん:ちょっとより道。


 この映画では、放映当時の現代に金田一を登場させ、シリーズの有名どころを片っ端から放り込みつつ、金田一が事件を必ず最後まで成就させる理由について、語ります。金田一シリーズが好きなら、楽しめることでしょう。とても楽しいパロディーです。

石坂さん基準なので、こういうことになります。

 ブレーキの壊れた自転車で下る。下駄で白い向う脛をむき出して走る。「~ワケですが」続く科白回し。興奮してどもる。混乱してフケ落とす。加藤武彦さんが、「よし、分かった!」という。胃薬をまき散らす。

あ、菊乃さんが裸で水をかけられた。

音楽もいいし、冒頭の登場人物テロップもいい。

ここで、青沼静馬が!

心残りだったのはやはり、

『八墓村』と『本陣殺人事件』を石坂浩二さん市川崑さんで、きちんと映画化してもらいたかったということ。

あ、足が出た!

私が一番好きなのは『女王蜂』なのですが、『病院坂の首縊りの家』の番外編感もいいし、『獄門島』『悪魔の手毬歌』は定番だし。毎回、坂口良子さんがかわいくて。

金田一耕助シリーズは、あの時代、あの風景、あの光。前近代的日本の家長制度が残る閉塞した空間のどろどろとした血が表現できなければなりません。たぶん、もうこのクオリティで映画化することは不可能でしょう。

おお名科白。「そうじゃないでしょ~」だ。ここから怒涛の解決編。

 金田一が事件の内実を語る強い芝居は、古谷一行さんでも全く遜色ありません。だが、「その人は、、、松子夫人ですね」という、苦渋に満ちた指摘は、やはり石坂さんでなければ出せない、味があると思います。そして、金田一耕助とは、まさにこの「同情」「憐憫」「謙虚さ」こそが命です。

さあ、そろそろ、解決です。

松子夫人とのサシでの対話。この温度がいいのです。では、結末をゆっくりとみることにしましょう。

指が痛い!