望月の蠱惑

enchantMOONに魅了されたので、先人の功績を辿って、自分も月へ到達したい。

レビュー

小椋冬美さんの静謐 ―モノローグの狭間で

はじめに 小椋冬美さんという少女漫画家を、私は「りぼん」誌上で知った。登場する男子に感情移入をして、髪型を真似たりもしていた。 主人公となるのは、みな、自分の本心を人に伝えるのが苦手な若い男女で、そんな自分のことが嫌いだったり、「性格だから…

余談 ―アンチ物語の物語 『豊饒の海」創作ノート

はじめに どうも。卒業発表後、自信に溢れる飯窪さんが、少し苦手な私です。ソロで活動していく上では、絶対に必要なものですから、そのように「自分」を前面に発信していく姿勢は全く正しいのですが、それが私には、眩しすぎるのだと思います。さぁて、それ…

マゾヒストはイメージに隷属しない ―『なんとなくクリスタル』という唯物論

はじめに で、『なんとなくクリスタル』だ。40年も昔の本を今読むなんて、とってもレトロスペクティブとか思うかもだけど、我々バックスキッパーズとしては温故知新だなんてつもりは毛頭ないわけ。 当時は、「カタログ」だとか「TOKYO Walker」だとか「Hot…

エコラリアス 言語の忘却について ―読書メモ

はじめに 「エコラリアス」という魅惑的な響きを持つこの書籍を読もうとしたきっかけは、本の裏表紙に書かれていた言葉であった 「子どもは言葉を覚えるときに、それ以前の赤ちゃん語を忘れる。そのように言葉はいつも「消えてしまった言葉のエコー」である。…

『フェアトレードビジネスモデルの新たな展開 SDGs時代に向けて』を読んで

はじめに 前回のブログに記した「私的問題項目」を留意しつつ、一読しました。フェアトレードとエシカルトレードとを関連付けた論考はとてもわかりやすく、たどってきた道筋と今後の展望についても明確に記されていました。 SDGs その中に、国連が掲げる2016…

「どもる体」 ―吃音と抑圧

はじめに twitterで見かけて「読もう」と決めていた本を読み終えた。 医学書院/書籍・電子メディア/どもる体 私がこの本を「いいな」と思ったのは「吃音」を「言葉の問題」ではなく、一貫して「体の問題」として扱っていたところだ。 作者は「こころと体と…

『〈こころ〉はどこから来て、どこへ行くのか』 中沢新一さんの講演メモ

www.iwanami.co.jp はじめに 京都大学の「第一回京都こころ会議(2018.9.13)」の五つの公演をまとめたもの。中沢新一さんが基調講演を行っていたため、読んだ。 印象として、中沢さんは、「脳」と「こころ」とに結びつけられる様々な分野の内容を、普段より…

『人はなぜ日記を書くか』の私的かつ暫定的回答、そして有効な活用法

はじめに 日記という事件 本書にこのタイトルの答えを求めてはならない。なぜなら本書では「日記」ありきの論考しか行われないからだ。そのような姿勢で「日記」を扱うのなら、「日記」を解体するところまでいかねばおもしろくないのだが、本書において「日…

異邦人から俳人へ カミュ『異邦人』を読んで 

はじめに 新潮文庫の『異邦人』を読み返した。乾いた文を読みたかった。村上龍は生々しすぎる部分があるし、村上春樹は全般的に他人事すぎる。だから、異邦人。 だが、それは第一部の記憶だった。裁判と収監の第二部に至って、文体は、私の求めるそれとはか…

新・未来派宣言のシンボルゥ

はじめに 『日本人は思考したか』を読み返し、「空間」と「時間」について書かれている部分がおもしろかった。 日本人の思考は、「あはひ(間)」にあって「調停」と「鎮魂」を本位とした「歌論」にその萌芽を求める。との指摘から、勅撰和歌集による「日本…

『勘の研究』ノート

はじめに 読書メモを、後日参照できるように記録しておく。(文中の《》内は私見。その他は基本的に同書からの要約および抜粋である) ・『勘の研究』講談社学術文庫版 昭和59年9月10日 [原版は 昭和8年刊行] 作者 黒田亮さん。 ・《『意識と本質』(井筒俊…

二つの空 ―『モーニング娘。誕生20週年記念コンサートツアー2017秋~We are MORNING MUSUME。~工藤遥卒業スペシャル』

はじめに ブログを書くにあたり画像などを準備しておりましたが、書き始めたら内容が全然違う方向へ進んでしまった(いつものことな)ので、本文に使えなった画像は最後にまとめてはりつけます。 リアルタイムで見られたこと 今回、BSスカパーliveで見ること…

アナーキズムなんていらない

はじめに 9月の中ごろに書き始め、下書きに放り込んであったブログがある。 『負債論』を読み終え、作者と訳者の著作に興味をおぼえ一通り読んでみようかと思っていた頃だ。 『負債論』についての最初のブログ mochizuki.hatenablog.jp 上記ブログの最後には…

ジオングの脚 ―『この人を見よ』

後藤明生さん 幻戯書房 2012年初版 はじめに 先日図書館で借り出して、昨日読み終えた。後藤明生さんの未完の小説である。未完であるがゆえに、いつ読み終えてもよく、いつ読み終えてもよい、ということはどこから読んでもよいという、誠に、気楽にページを…

LA LA LAND への失望 ―『草枕』になれず悪い意味で『それから』だった件…

はじめに 以下の感想は、私の勝手な思い込みで妄想していた『ラ・ラ・ランド」が、実際の映画と大きく食い違っていたことによる、100%個人的な不満ぶっつけブログです。 あまりにも違っていたものですから、後追いで、この映画の正当なレビューを検索し、…

右京というギフト ―相棒15 第16話について

はじめに このブログは、ネタバレあります閲覧注意! 相棒14第12話の犯人の一人 北が再登場しました。 mochizuki.hatenablog.jp 当時は、余命二ヶ月とされていたはずですが、治療が功を奏しているようです。(現在裁判中とのこと) 前回、「自らの死」を意識…

4DX ― すべらない話 千原ジュニアさんの話 と たくさんの余談

4DXって何だ? 4dxで検索をかけて一番上にきたページ。 新次元の4Dアトラクションシアター ユナイテッド・シネマ|シネプレックス どんな演出があって、追加料金がいくらで、どんな注意があるのかが、分かりやすくまとめてあった。 遊園地でみた うん…

右京の変節? 相棒15第3話 「人生のお会計」のこと

www.tv-asahi.co.jp ネタバレありです。ご注意ください。 まずは、14-12「陣川という名の犬」との相違 mochizuki.hatenablog.jp 犯人設定 14-12 まごうことなき犯罪者。(共犯の方は別として)15- 3 まじめな常識人。 偶然性 4-12 余命宣告を受…

二人のトマノ ~演劇女子部「続・11人いる!東の地平・西の永遠」 モーニング娘。'16 を見て

東の本気、西の狂気 三回泣いた 京都でのWEST公演初日、佐藤優樹さんが凄い! との膨大なツィート。また、監督から佐藤さんへの熱い熱いメッセージ。DVDが届いたら、また佐藤さんのことで、ブログを更新できるな、と心待ちにしていました。 www.youtube.c…

ゴジラ ―私の好きなお化け (非レビュー)

『シン・ゴジラ』のレビューを見た amberfeb.hatenablog.com monkey1119.hatenablog.com 素晴らしいレビューです。どんなテイストのお話なのかがよく分かりました。なので、私はこの記事にとりかかることができました。感謝します。 え? 私は、テレビの宣伝…

永野さん 正解は? ―「象よりもシャム猫」からの考察

さんま御殿でのアドリブ 2018年7月12日放送の『さんま御殿』において以下のような流れがあった。 出演者の紹介の中で、女性タレントの祖父が「ぞうさん」を作曲した團伊玖磨というすごい人だという話になる。その息子(タレントの父親)も著名な建築…

The MARTIAN は『オデッセイ』ではなかった件 ―臆病で姑息なSFたち

映画館でみた予告編でとても楽しみにしていた 絶体絶命。火星に取り残された孤独な植物学者の、ジョーク心を忘れない極限サバイバル! www.youtube.com 明るい「南極物語」だし、敵が存在しない「ダイ・ハード」だし、限られた資材と柔らか頭で技術的問題点…

「黙読」問題から、「思考」と「共感覚」そして「瞑想」まで

しゃべりまくりですけど何か? 掲載されるやいなや、一大センセーションを巻き起こしたgigazine様の記事がありました。 2016年02月25日 21時00分00秒 gigazine.net 黙読するときに、声が聞こえない? それでどうやって読んでいるの? と思い、こんな感じで検…

『恋する惑星』が気にかかった理由が分らなかった件

eiga.com 通りすがり 何かやってないかと、チャネンルを変えていたときに、ふと手が止まった。 サングラスをかけたまま、かつら丸分りの金髪女がコートを着たまま寝ているベッドの傍らで、ルームサービスの皿の残り物をつまんだり、テレビを眺めたりしている…

世にも奇妙な物語2016 春の特別篇 が4話とも楽しめた件

世にも奇妙な物語2016 春の特別篇 www.fujitv.co.jp 意外なことに、飛ばすところがなかった 全て、俳優の演技や、シーンが豊かで、飛ばす箇所がなかった。低予算で作られているのはわかったが(「通いの軍隊」はわりとお金かかりそうだった。それで他に…

犬神家の一族を見ながら

BS-TBSで『犬神家の一族』を放送しています。 私にとっての、初めての金田一耕助は、夜九時からやっていたテレビシリーズでした。 middle-edge.jp このシリーズの記憶が強く、金田一といえば古谷一行と思っていたのですが、 邦画で石坂浩二さんを見た…

ゲシュタルト崩壊の噂 ―私なんてタワシみたいなもんじゃない

都市伝説 鏡に向かって毎朝「あなたはだぁれ?」 昔、流行ましたね。 jyouhonet.com ま、こんなもんじゃ、「私」崩壊しませんけどね。もともと渦巻きみたいなもんだし。 「お前は誰だ」 催眠を扱った映画にこんなのもありましたね。 萩原聖人さん。名演です…

限りなく透明に近いブルー 無脳のカメラ

リュウは、ただのムービーカメラとして、現場を浮遊する。 時折ストロボを爆発させ、現場を活性化させるニコマートとは違って、何も指示されぬまま漂い、気まぐれにズームインとズームアウトを繰り返す。遠近法ははなから壊れている。そしてそれを記述する文…

『少年は荒野をめざす』 アガペーと慈悲

吉野朔美さん4/20逝去 2016年(平成28年)4月20日。病気のため亡くなった吉野朔美さん。謹んでご冥福をお祈りいたします。 私にとっては「月下の一群」「少年は荒野をめざす」の作者さん。特に後者の印象がとても強かった。そこには様々な「愛」の形が描かれ…

大悲なきfMRI ― 「脳」を変える「心」 レビュー

『「脳」を変える「心」』を変える「本」 読んだのでまとめておきます 悪夢再び ―まずは苦言から 以前レビューした、『心が脳を変える』は、ジェフリーMシュワーツ氏の実験や調査内容、意見が書かれていました。その共同著者はシャロン・ペグリー氏で、サイ…