望月の蠱惑

enchantMOONに魅了されたので、先人の功績を辿って、自分も月へ到達したい。

ざっくりさん講読4 「ミリンダ王の問い」4.第三章(pp.141-176)

第一 永遠なる時間はいかにして成立するか

ミリンダ王(以下ミ)「過去とか未来とか現在とか、『時間』ってそもそも何?」

ナーガセーナ(以下ナ)「それはね、いきなり『しりとり』なんだ。しりとりーリンゴーゴリラーラッパーパンダーダンスースイカーカエルールビーーイモーモノリスースシ。なんで『しりとり』が始まったのかは、謎なのさ」

ミ「なるほどね。そりゃ、シュールだね」

第二 時間の始原は認識されない

ミ「ん?ところで、さっきのってどういうこと? 譬えてみてよ」

ナ「種撒く。芽出る。実成る。種採る。種撒く。芽出る。実成る。増える。種採る。実成る。これ終わらないわけ」

ミ「うんうん」

ナ「そういうこと」

ミ「ほかには?」

ナ「鶏卵卵鶏鶏卵という連続技は?」

ミ「キリないね」

ナ「そういうこと」

ミ「ほかには?」

ナ(棒で地面に円を描く。多分、めんどくさくなってる…)「これ、どう?」

ミ「エターナルサークルだね」

ナ「偉い人も同じこといったよ。ースシリトリンゴリラッパンダンスイカエルビーモノリスシってね」

ミ「ごもっともごもっとも」

第三 輪廻の生存は始めのないもの

ミ「ところで、あなたさっき、『何でしりとりが始まったのかは謎』って仰いましたねぇ~。そのしりとりの『始まり』ってのがあるんですか?」

ナ「(マジめんどくせ)過去にね」

ミ「そうやって、みんなごまかすの?」

ナ「始まりってのには、わかるのも、わからないのもあるってことだよ」

ミ「それぞれ例をあげてみな」

ナ「シリトリの前後のことはわからないけど、シリトリの中の物が、生じてから滅びるまでのことはわかるのさ」

ミ「始まりがなくて、終わりがないのなら、胴体だってなくりそうなもんだけどね」

ナ「胴体がなくって、子供が産めますか?」

ミ「そうぢゃなくてさ。その、シリトリを超えて続いていくことなんて、できないんじゃないのって…」

ナ「種が続いていくように、それは続いていくものだよ」

ミ「ふぅーん」

第四 輪廻の生存が成立する根拠

ミ「こんなもんがあったばっかりに、こんなことに… ていう原因があるでしょうか?」

ナ「うん」

ミ「解りやすく教えてちょーだい」

ナ「眼があって、更衣室があって、いい女がいる。いろいろ湧き起こって、お縄を頂戴する。眼がなければ、ちょっとつまんないけど、お縄にはならない…って感じ」

ミ「わかるわぁ」

第五 個人存在の形成力

ミ「じゃ、なんにもなかったのに、新しくできちゃった、ってことはあるの?」

ナ「皆無」

ミ「譬えてみて」

ナ「この家を何もないところから作れますか?」

ミ「そりゃ、無理だよ。材料とか大工とかがなきゃ」

ナ「それと同じだよ」

ミ「ほかにある?」

ナ「いきなり新種は出てこないでしょ。既出なの。あるのは編集とか改良だけ」

ミ「まだ、いける?」

ナ「壺つくるのに、粘土がいるでしょ」

ミ「もっと、出せる?」

ナ「木も毛もニスも職人も演奏家もなくて、ストラディバリは歌いますか?」

ミ「どんどん、いこう」

ナ「燃焼の三大要素」

ミ「まだまだ!」

ナ「太陽も虫眼鏡も新聞の黒い文字のとこもなくて、火が燃えますか?」

ミ「苦しくなってきたか!」

ナ「鏡も、光も、顔もなかったら、あんたは鏡に写るかい?」

ミ「鏡と光と俺さまがあれば、きれいな顔が写るだろうさ」

ナ「もういい?」

ミ「うん。十分」

第六 無霊魂説

ミ「霊魂って信じる?」

ナ「逆に聞くけど、『霊魂』って何?」

ミ「身体の中のいろんな窓から外を見てる奴」

ナ「(お、凡ミスしたな!)いいですか。そいつは、自分の回りの好きな窓から外を見ることができるってことですね。人間の窓ってのは、眼、耳、鼻、舌、肌の五つをいいますから、そいつは、たとえば、眼をつかって、音や匂いや味や肌さわりを見たりするわけでしょ。耳で、景色を聞くことも匂いを味を肌触りを聞いたりもするし、以下続く… ね。そういうことでしょ?」

ミ「いや、そういうことではなくて」

ナ「(無視して)それに、中にそういう奴がいるなら、窓から顔を出して直接見たほうが、よく見えるでしょうよ。眼なんか中から蹴り出してしまえばいい」

ミ「そうじゃなくて…」

ナ「門の外に蜜柑が積んであって、それを外の人が食べたからって、部屋にいるわれわれが、それを味わえるわけじゃないでしょう?」

ミ「いや、だから…」

ナ「何が、おかしいんですか? おかしいのはあなたの前提ですよ」

ミ「じゃ、教えてくださいよ」

ナ「簡単なことです。霊魂なんてないの」

ミ「ハァー わかりました」

第七 感覚と統覚

ミ「見たら、見えるでしょ?」

ナ「そう。見たら、見える」

ミ「見たから、見えるの。見えるから見るの?」

ナ「見たから見えるの」

ミ「眼が見たからね、っていわれて脳が見えるよ、っていうの? 脳が見てるよっていって、眼が見えたよっていうの?」

ナ「そういう相談はないの」

ミ「じゃ、なんで連動するのさ」

ナ「それはね。傾向と、門と、習慣と、習熟があるからだよ」

ミ「じゃ、一個ずつ教えてもらおうじゃないか」

ナ「雨が降ったら水はどっちへ流れるでしょうか?」

ミ「(質問返し…) えと、低いほうへ」

ナ「次に雨が降ったら水はどっちに流れるでしょうか?」

ミ「低いほうへ」

ナ「最初に降った雨と、次に降った雨とが相談したとでも?」

ミ「………」

ナ「はい、これが傾き。次は、この城壁を出るのに、どこから出る?」

ミ「門からに決まってるだろ」

ナ「じゃ、次の人はどっから…」

ミ「あ、解ったから次」

ナ「最初に車が通ったら、次の車は、どこを通るでしょうか?」

ミ「それが、習慣っと。じゃラストは?」

ナ「新人がベテランになると、業務全般がスムーズにすすむよね」

ミ「はいはい。で、それが耳にも、鼻にも、舌にも、肌にも、同じようにってことね」

第八 統覚に付随するもろもろの精神作用(1)―接触について

ミ「脳も何か感じるわけ?」

ナ「もちろん。脳だってガチンコで接触する」

ミ「接触っていうと?」

ナ「まあ、触接かな」

ミ「チョット!」

ナ「二頭の牡羊が戦うばあい、一方が眼で、一方が脳。接触は互いが咬みあうようなもの」

ミ「さらに?」

ナ「手でいうなら、片手が眼で、片手が脳。接触が拍手」

ミ「つまり?」

ナ「シンバルなら…」

ミ「あ、なるほどなるほど」

第九 統覚に付随するもろもろの精神作用(2)―感受について

ミ「感じるって、どんな感じ?」

ナ「フフ、それは感じるってことだよ。痛いとか、気持ちいとかね」

ミ「た・と・え・ば?」

ナ「君が誰かに仕事を任せる。うまくやったからその後も任せる。任された男は満足するだろ。そういう感じ。それとか、誰かがいいことをして、死んだ身体が腐って天の世界に生まれ変わって、そこで承認欲求とかもろもろに、満足できるって感じること」

ミ「ん~(微妙)」

第十 統覚に付随するもろもろの精神作用(3)―表象について

ミ「そこらじゅうに『在る』ものって、どんな特徴があるのかな?」

ナ「それが在るとわかり、それが何であるかを知っている、ってことだと思うな」

ミ「それって何?」

ナ「色彩とか?」

ミ「どういうこと?」

ナ「君の倉庫番が倉庫で五色の財宝を見て、『これ王様のやつ』ってわかるってこと」

ミ「ふぅん」

第十一 統覚に付随するもろもろの精神作用(4)―意思について

ミ「意思について、何か?」

ナ「意思は、創造さ!」

ミ「では、どうぞ」

ナ「誰かが毒を作って、自分も他人も飲む。そうするとみんな苦しんでテロかよ、ってなる。逆に、レッドブルを作って同じようにしたら、ハッスルハッスル」

ミ「ハッスル! ハッスル!」

第十二 統覚に付随するもろもろの精神作用(5)―識別作用について

ミ「違いのわかる人ってどんな感じ?」

ナ「いろいろ区別できる人だよね」

ミ「区別ねぇ…」

ナ「この都市の見張り番が、東西南北からどんな人がやってくるのか、顔認識装置や、金属探知機やなんかを駆使して、危険かどうか判断するっていう感じかな」

ミ「いい仕事するね」

第十三 統覚に付随するもろもろの精神作用(6)―省察について

ミ「注意深さってどういうこと?」

ナ「安定ですね」

ミ「そりゃまたどういうこって?」

ナ「大工がたくみに継ぎ手を加工して組み合わせたら、骨組みは安定するでしょ」

ミ「なるへそ」

第十四 統覚に付随するもろもろの精神作用(7)―考察について

ミ「用心深いってどういうこと?」

ナ「それは後を引きずるものです」

ミ「?」

ナ「銅鑼をたたくと、余韻や余響がありますね。銅鑼を打つのが省注意深さだとすれば、考察は余韻です」

ミ「(ちょっと苦しいけど)O.K」

第一部第三章 完