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望月の蠱惑

enchantMOONに魅了されたので、先人の功績を辿って、自分も月へ到達したい。

夢想・無双する 小田さくらさん ―呪詛された歌姫

はじめに

 3月にビルボードジャパンに掲載された「小田さくら単独 ロングインタビュー」を読んで  モーニング娘。20年の歴史をうけとめ、伝統継承のため悲壮とも思われる決意に溢れた内容に胸を打たれました。

www.billboard-japan.com

「(自らの)過去に感謝できるほど過去をがんばっていない」と加入当初を振り返り、「そういう反省ができる今だからこそ、自分にもできることがある。メンバーに伝えなければならないことがある。」と言い切る彼女の強さ。

それらを支えているのは、「理想とするモーニング娘。の完成」というミッションだと感じました。

違和感

 しかし、小田さくらさんの「モーニング娘。」への思いのかけ方は、佐藤優樹さんとも、譜久村聖さんとも異質だと感じます。
 この三人の理想像はとても近いところにあると思うのです。だからこそ、「しめりーず」や「まぁーさく」というカップリングが成立しているのです。にしても、何かが違う。何かが足りない気が、ずっとしていたのです。

 このインタビューを読んで、二日ほどたって、ふと、この「欠落」が、漠然とではありましたが「形」になってきたようなので、ブログにまとめておこうと思いました。例によって、ファンの勝手な思い込み記事であることを、ご了承下さい。

ポエマー ―夢と現実と自分の関係

優等生が見る夢

 加入当初、小田さくらさんはとても小さく見えました。年齢や身長から受ける印象もそうですが、常に一歩引いていて、光のあたる場所を袖からじっと観察する、引っ込み思案な少女。そこにいる自分になじめず、いつも戸惑ったような表情で。それでいて、話を振られれば、印象的な声音と抑揚と、独特な語彙を用いて、優等生的受け答えができる。

「夢を見ているような表情で、現実を観ている」そんな印象を受けました。

夢と言語

 独特な言語感覚といえば、佐藤優樹さんが思い起こされます。しかし、小田さんの独特さは、佐藤さんのそれとは全く異質でした。村上春樹さんの「羊をめぐる冒険」だったでしょうか。秘書の男の日本語が正確すぎて奇妙に感じるという描写があったと思いますが、そんな印象に近い。

 小田さんの言葉はひじょうに明晰なのです。明晰なのに奇妙に感じられるのは、言葉以前のプロセスが奇妙だからだと考えました。その結果、思いついたのは、

小田さくらさんは、「夢」を「明晰」に語ることができる稀有な人なのだ

ということです。

 明晰夢(ポエム)

 加入当初の小田さくらさんは、ラジオで自作のポエムを披露するコーナーをもっていました。ハロープロジェクトFC会員限定ラジオモーニング娘。11期メンバー小田さくらの「さくらさくらじお」) 小田さんはそこで、いかにも「ポエム」らしいポエムを読んでいましたが、ところどころに彼女の「自我」の冷徹さが透けていたと感じました。

 小田さくらさんは常に自分を見失わず、あるべき世界との距離を測り違えることもありませんでした。

小田さくらさんは夢を生きている。ただ、その夢は「明晰夢」のように意識されている。

実現可能という閉塞

明晰夢」では、思ったことはほぼ夢の中で実現することができるのだといいます。小田さくらさんの現実は明晰夢なので、思ったことは全て実現できるはずなのです。彼女が語る夢は、そのまま現実における理想にほかならず、理想とは努力によって実現すべき目標であり、努力とは、夢を現実化する試みなのです。

有限実行

 小田さくらさんは、過去に発言した「夢=目標」をことごとく実現してきています。彼女の言葉はそのまま、実現すべき目標となります。

 夢の中で

 しかし、それは全て「白昼夢」のような世界世界において現われるのです。 小田さくらさんは、その「白昼夢」の世界で、どのような役割を演じることもできます。セルフプロデュース、自撮りは、自分が理想とする自分を演じる彼女の意志を具現化させるものにほかなりません。

 その彼女が、モーニング娘。'17を変えようと懸命になっています。

使命?

 理想の「モーニング娘。」を作り上げるため、自らの「歌」と、「歌」に対する姿勢をもって、メンバー達を叱咤し、「モーニング娘。20年の歴史」を汚さぬよう、貶めぬよう、最高の形を現すために、嫌われ役を買う。先輩6人、後輩6人の中間で、上にも下にも、「同じ理想」にむかって進むべく舵をとり鞭を打つ役割を果たす意思を表明したのです。

まぁーさく について

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 言葉の位相

 小田さくらさんの発言はブレません。彼女にとって言葉は意志であり全てなのです。 彼女が見ている「夢」の世界において、確かなものはこの「言葉」による指針だけです。ここに、佐藤優樹さんとの大きな違いがあるのです。

 言葉を「本質」を掬うための「仮のスプーン」のように使うのが佐藤さんです。

佐藤さんは、『佐藤』:::「本質」⇒「現実」のように現実を捉えます。

 この『佐藤』と『本質』との乖離に、時折荒ぶるのですが、そこを一致させる場として今は、「モーニング娘。」があるのだと考えます。

 

mochizuki.hatenablog.jp

  対して、小田さんは、『小田』⇒「夢」:::「現実」という風に世界を捉えます。

 『小田』=『現実』であるためには『夢』を『現実』にしなければならず、そのためには「明晰な言葉」で夢を固定しておかなければならないのです。

具現化する技術

 佐藤さんが小田さんを「凄い」というとき、その内容はたいてい「技術」です。「努力を続けられる精神」も、つまりは「技術を会得するための努力」なのです。 佐藤さんは、『本質』を直接掴んでいる分、現実化する部分が弱くなりますが、小田さくらさんは、そこに「天才」を認めているのです。

諦めと誇り

 相手を「天才」と認めるのは、そのリングでは闘わないという敗北宣言です。

「自分が夜4時間かかって仕上げたものを、佐藤さんはその場でできる」と小田さんは言います。そこには「自分は4時間でできるのだ」という自負が含まれます。

「自分以外の人間なら、4時間ではできない。いやそんな作業をしなければならないということにすら思い至らないこと」そんな気持ちがみられます。

 佐藤さんは天才。自分はその天才を深いところで、天才として評価することができる。そこで自分の存在意義を保っているように思います。

苦い同盟

 まぁーさくとは、理想のモーニング娘。という共通認識の上で成り立つ同盟のようなものですが、小田さんは常に敗北を感じながらも、離れるわけにはいかないというジレンマを感じ続けなければなりません。シャア・アズナブルアムロ・レイのような、北島マヤ姫川亜弓のような関係なのですね。「天才」と言い募ることで、諦めようとしても、嫉妬は拭いきれません。小田さくらさんはさらに自らを鞭打つのです。

道重さん、鞘師さん 鈴木さんの卒業

 旗印

 独りで見る夢は、夢でしかありません。それをみんなが見える旗印にして始めて、一致団結して目指す目標に代わるのです。 道重さゆみさんがその旗を振り、全員が彼女につれられて、彼女が見せたい風景にみんなで到達してしまった後、佐藤優樹さんは、自らの荒ぶる魂を抑えながら、モーニング娘。'15をまとめようと必死になり、譜久村聖さんは、絶対リーダーの後を担う重責と戦い、小田さくらさんは、まず自分を変えようとし、かわいくなろう、と決めたのだといいます。

なろうとすること

「周囲が幸せだと思ってくれる表情をした人になる」

 小田さくらさんにとって、感情もまた作り上げるべき目標でした。笑顔をしていれば自然と楽しい気持ちになると。先日のラジオでも同様のことを言っていました。(モーニング女学院 第257回 20170311放送分)

 小田さくらさんが、その時々で語る言葉は彼女が求めているものなのです。彼女が笑顔でいたい、と言う時、彼女は笑えないのです。

 言葉は彼女の努力で現実になります。虚言は実現すれば虚言ではありません。

 彼女が自慢話ばかりすると指摘されるのは、彼女に自信ないからです。宣言して自らを追い込むこと。そのように、彼女はスキルを向上させてきました。

夢の中の他者

 自分だけのことであればよかったのです。 しかし、鞘師さんが卒業し、「目の前の大きな背中が消えてしまったときに見えた穴」は小田さくらさんが見ないようにしてきた「夢の綻び」でした。彼女は「歌」でその穴を塞ごうとしました。まもなく、そのように危うく生きる小田さくらさんを包み込んでいてくれた鈴木さんが卒業し、とうとう独りになった今、彼女は遮二無二に立ち上がろうとするのです。

自信と説得力

 11期独り加入の小田さくらさんには、悩みを打ち明けられる相手がメンバー内にはいませんでした。卒業後の鞘師さん、鈴木さんとのつながりが彼女を辛うじて支えています。メンバーに弱みを見せることはできません。理想のモーング娘。を体現すべき小田さくらさん自身に「説得力」がなくなったら誰も自分の意見になど耳を貸してくれないから、というより、彼女自身が、自信を失ってしまうからではないでしょうか。

参考

別のインタビュー記事で、石田亜由美さんが、鞘師さんのダンスを「説得力」という言葉で語っています。とても興味深いです。

www.billboard-japan.com

石田亜佑美:鞘師さんのパフォーマンスの何が凄いのかって言うと、説得力があるんですよ。私はそんな鞘師さんのパフォーマンスが好きだったんだなって……今改めて思うんですけど、その説得力というものをどうやって出すのかは、それを持ってる鞘師さん自身も分からないぐらい、意識してどうにかなるものじゃないんです。鞘師さんのモーニング娘。としての自覚から生まれるものなのか……ただ、鞘師さん自身は自分にめちゃくちゃ自信があるタイプじゃないんですよ。なのに、どうしてあんなに説得力があるんだろう?って本当に思います。

 

 

歴史の呪詛に取り付かれた歌姫

歴史の重み

 小田さくらさんはモーニング娘。が大好きだといいます。しかし、その歴史を深く見つめ、重さを実感したのは加入後のことだといっています。

私が言うのは違うのかもしれないけど……「守る」っていう意識。グループを守るということ。「学校で歴史の勉強をするのは、同じ過ちを繰り返さない為」みたいなことを言うじゃないですか。そういう感覚に近いかもしれないです。だからどういう出来事があって、どういうサクセスがあったのか知っていたいし、「その歴史を守らないで何がモーニング娘。だ!」っていう、「自分のやりたいようにやりたいならこのグループじゃなくてもよくない?」っていう気持ちがあるんです。この20年に対して「いや、私たちが今の新しいモーニング娘。なんです」なんて簡単に言っちゃいけないんですよ。って思うので……そうだなぁ、やっぱり知るべきだと思いますね。モーニング娘。のことはモーニング娘。として。

(同インタビューより)

歴史という呪詛

 この厳しさ。小田さくらさんが、生活福祉常任委員会で培った経験をいかして、モーニング娘。にふさわしいか否か。を取り締まらんとする気概が感じられます。そしてそれを彼女に委託しているのは、ほかでもない「モーニング娘。の歴史」なのだと思いました。委託というのは穏便すぎる表現です。

 小田さくらさんは、「歴史」の呪詛により、その傀儡として「夢から覚めることを禁じられている」のだと感じるのです。

 まつろわぬ民の怨念の権現として化身した加藤保憲のように、モーニング娘が好きな、夢見がちでがんばりやの少女小田さくらさんは、理想の「モーニング娘。」を完成させる使命を背負いました。それは彼女自身の望みとして、彼女の夢として、深く刻み込まれ現在にいたります。

しめりーずについて

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 かつてブログ上で譜久村聖さんが、「望まれるモーニング娘。」のヨリワラだと書いたことがあります。

 

mochizuki.hatenablog.jp

湿度の理由  

 譜久村さんは、自我を放擲しその身体(魂)をモーニング娘。愛のために空け渡す、巫女なのだと。

 小田さくらさんもまた、モーニング娘に自らを捧げていることに変わりはありません。その在り方が、なんともいえぬ哀しみの湿度を帯びるのだといえます。

二人の違い

 まぁーさくが、表面上「陽」だとすれば、こちらは「陰」。しかし、佐藤さんと、小田さんとが同じ理想を共有していながら全く異なっていたように、小田さんと譜久村さんもやはり根本的に異なっているのです。

自我の証明

 小田さんはモーニング娘。のために努力を惜しみません。この努力は「夢」を「現実化」する手段でした。譜久村さんが「無」となってモーニング娘を体現するのに対し、小田さくらさんはモーニング娘。を体現することによって、自我を保証されるのです。

 小田さんは自分の存在を賭けて理想を具現化しようとしているのです。

 小田さくらさんにかけられた呪いは、彼女の現実を人質とする、残酷なものです。

結び

幸せの瓶詰め

 良い事、幸せなこと、があったら紙に描いて、瓶に仕舞う。しだいに増えていくそれを眺める。小田さくらさんがやっているといっていました。(野中さんもやっているようですね)

 こういうことをする人が、私には「幸せに過ごしている人」とは思えませんでした。

 つらい毎日のなか、幸せに飢え、小さな幸せにも敏感になって、そういう小さな幸せを集めて微笑んでいる人。

儚さ

 小田さくらさんを最初にみたときから、今にいたるまで、彼女の姿はとても儚く感じられます。圧倒的なパフォーマンスに魅了されていたはずなのに、思い出そうとすると、彼女の存在がひじょうに希薄に感じられるのです。

 冒頭で私が感じた欠落とは、まさに、小田さくらさん自身だったのだと思います。

目覚めよと呼ぶ声

 彼女は夢から覚めることができない。しかし、そこから醒めなければ、モーニング娘。の完成を見る前に、小田さくらさんは壊れてしまうのではないかという不安がつきまといます。

 彼女が救われるのだとしたら、やはり「歌」で、なのだろうと思います。

 言葉で、言葉にならない感情を伝えられるという手ごたえが、彼女と歌を結び付けています。言葉で感情をつくるのではなく、感情が言葉をつくる。歌うことで、小田さんにかけられた呪詛を祓うことができるのではないかと、今はそんな風に感じています。

「同じ意識を持てないなら、仲間ではない」と言い放つ彼女の眼差しに狂気が宿ったとき、佐藤さんは、譜久村さんは、小田さんを両側から支えてくれるでしょうか。 6月の舞台で、汐月しゅうさんに会って癒しが与えられますように。そして、そんな小田さんを見て、12期は覚醒してくれるでしょうか……

おまけ

ビルボードジャパン モーニング娘。'16(譜久村聖/石田亜佑美/佐藤優樹/工藤遥/小田さくら)インタビュー

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