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望月の蠱惑

enchantMOONに魅了されたので、先人の功績を辿って、自分も月へ到達したい。

物と情報に関する断章

wired.jpサイト内検索 「脳」+「特定」

0.5リットルの水を呑んでから始めよう(0)

 物欲と情報欲

  物欲と情報欲は同じドーパミン報酬系に分類されるという(1)。充足時の快感も、飢渇時の苛立ち(2)も同じ仕組みが発動する。したがって、所有欲、独占欲、収集癖、中毒性をもち、フェティシュ化する。(この場合、物そのものを愛でる場合(3)と、物に付帯する物語を求める(4)場合とがある。後者において、物は情報の依り藁でしかないことから「情報のフェティッシュ化」とみることが可能である(5))

 これらの欲望には、食欲、性欲、睡眠欲などがもつ身体的対応はない。脳そのものの構造(51)から起こる、抽象的なものである。(6)(7)(註:だがしかし、脳は身体各部からのフィードバックがなければ、いかなる「感じ」をも構成できない。従って、「抽象的な欲望」といったものは、ありえない。⇒クオリアについては日を改めて)

物は幸福の妨げか? 所有の放棄について

餓死を待ちながら

 物質的な豊かさは心を貧しくするという。そして、断捨離は定番化しつつある。(8)(9)(10)。(注:だが、恵まれない国の人々の間では、やっぱり断捨離は、流行らないだろう。つまり「過剰に所有した経験」がなければ、成立しないのだ)

 餓死を待ちながら、人は、優しく、豊かで在り続けることが可能か? そうありたい。私はせつに、そうありたいと思う。

「物」が人を争わせる場合

  物の所有よりも、人とのつながりのほうが、幸福であるという研究がある(11)。

 物質に拘泥すると、それを維持しようとする。見せびらかして自慢しようとする。人の持っている物をコレクションに加えたくなる。「物」がもたらす欲望が、友人を遠ざけていく。「物」を介して成立する関係性とは、「所有者」と「非所有者」との「争奪戦」に終始する。

 この戦いを終わらせる唯一の手段は、「所有の放棄」である。(註:シェアという選択肢は、「所有の放棄」を前提とするようでありながら、「所有放棄の放棄」による関係に他ならない。にもかかわらず、「所有の放棄を建前としている」ため、より直接的に、人間同士の戦いが表面化するのである)

資本主義を打ち砕く試み

  資本主義経済においては、「購買」と「所有」とが二大快楽だ。断捨離はそれらを否定する。

 捨てるモノを失った断捨離スト達は、豊かな心が志向する快楽の一つ「ボランティア」へ向かう。個人の心はいくら満たしてもせいぜい一人分。だが、貧しきもの達を満たすのなら、その容量たるや、数億人分だ。

 寄付できるものはし尽くした。だから、身体を、労働力を、提供するのだ。

再分配は必要悪

 必要以上に買わないのなら、必要以上に儲けてはいけない。余ったお金の再分配は、構造的な問題を孕むからだ。

 例えば、恵まれない人への寄付行為、カフェソスペーゾ(121)に類する慈善に対しては、(それ)は民衆のアヘンだ(122)との指摘がいまだに有効だ。それなしでは命を支えられない人がいる。だが、その慈善行為自体が貧富格差に依拠している。 

やっぱり、共産主義

  所有の放棄は1か0か、しかない。貧富の格差をなくすため、全ての人々が、自主的に、所有を0とし、権力によらず、公平分配すること。慈善事業とは、共産主義へ向かう思想、運動の一環でなければならない。(社会主義では再配分を決定する組織(政府、国家)に権力が集中してしまい、公平な分配は望めないからである)(123)(註:これは性悪論である。人は人より優越したいという欲望をもつ、という認識による。その上で、権力によらず、自主的に再配分する仕組み? 理想主義的すぎる)

ITによる物から情報への移行

情報が浮遊する

 戦後の物不足から、高度経済性成長を経て、大量生産大量消費、使い捨て社会が定着すると、公害による健康被害、交通事故、資源不足が喧伝され、省エネ、軽薄短小がもてはやされるようになり、飽食の時代を経て、物の豊かさから心の豊かさへと、広告は方向転換を諮ってきた(13)。その過程で、ニューアカブームが起こる(14)。構造主義脱構築され、記号論がもてはやされると、情報は基体を離れて浮遊し始めた。コンピューターとインターネットの時代は、情報化の時代である。そして、情報化とは、物の抽象化を意味していた(15)。

平面ガエル

  本やレコードは、情報の蓄積基体であった。「本を買う」「レコードを買う」とは、本に記されている文字等による情報のまとまりを買うのであり、溝に刻まれた空気の振動記録を買うのである。

 古のころ、情報は口頭伝承された。言葉は文字に固定されることなく、脳に記銘された。情報という集合名詞は存在しなかった。その時代には固有名しかなかったはずだ。たとえ、働き蟻に個の意識がなかったとしても、今ここいにる蟻について語ることのみが可能な文法が、固有名の世界を構築していた。(16)

 文字はそれを記す筆記体と支持体(17)が必要となる。これらにより情報は可視化されたが、支持体の存在によって、かえって情報単体としての姿は消され、そのような状態が長らく続いた。情報はそれぞれにふさわしい玉座に鎮座し、支持体と分かたれることはなかった。支持体が破損、廃棄される場合、情報はそれらと運命をともにするしかなかった。

時間を越えた鮮度

  今は、情報を、デジタルデータとして保存しておき、大量のコピーを作成することが可能だ(18)。出力先も選べる。基体を乗り換えることができることから、情報は時間の制約さえ逃れることができた。(註:だが、鮮度の問題は背負わねばならない)

 有用になるまでは(註:誰かが検索してくれるまでは)寝かしておくことができ、いくら寝かしておいても傷むことはない。(註:給電という最大の必要条件、エネルギー問題はまた日を改めて調べよう)

脳は情報しか求めない 

 さて、人が世界を認識するさい、五感への刺激は脳に伝えられる。脳はそれらを解釈し、世界像を構築する。その世界像に則って、四肢を動かし、視線をさだめ、音を聞き、匂いをかぐ。皮膚は自らを刺激する源を知らず、脳は外部からの刺激そのものを知らない。

 脳にあっては、神経系を伝達されてくる微弱な電気信号が全てであり、実体を剥奪されているという点で、情報化されているといえる。

 この世界を知覚し、脳内で再構築した姿を、私たちは認識している。私たちは、情報を再構築した世界に生きているのだ。つまり、それは精密なVRと区別がつかないということになる。

VRという幽霊世界 

 VRに大きな期待といくらかの気味の悪さを感じるのは、「攻殻機動隊(19)」の世界に発生するゴーストハックや、もっと小規模な「視覚のハッキング」など、情報伝達経路に介入された場合に発生する現実と認識との齟齬を、当人が認識できないというところにある。

 「マトリクス(20)」では、そうした世界から逃れるための闘争が描かれていたが、現実はもっと過酷である。人々が機械の熱源(動力)とされていたリアル世界でさえも、おそらく……という無限後退が起こりうるからである。

 相変わらず、この観点では、押井守監督の「ビューティフルドリーマー(21)」が提起した世界、さらに、中国宋時代の荘子が書いた「胡蝶の夢(22)」を一歩たりとも抜け出すことができないでいる。

 因みに、「マトリクス」的解釈をとらず、世界は共同幻想としての既成概念によってまさに規制を受けているのだとしたのが「ウォンテッド(23)」だったが、それも結局は無限後退の可能性を孕む。

 いずれも、仏教思想をエンタテーメントに導入する場合のステレオタイプである。

仮想と現実の狭間で脳が求めたのはさらなる補強情報だった 

 人との繋がりが重要なのは、情報の多様性をもたらしてくれるところにある。脳は既に知っていることの関連情報をより集めたがる(1)。そして、知っていることを否定するような情報は無視する(1)。

 それは、現実を体感できない脳という臓器が、もたらされた情報のみで、必死で、現実を具現化させ、脳自身を安定、安心させようとしているかのように思われるのだ。(註:脳は何も思わない。安心とは悪い比喩である)

 多くの、現実を存在を肯定する情報をかき集めて、「我、疑いつつ あり(24)」を叫んでいるのではないか。これは、脳という認識装置を持つ人間の、つきつめれば、「物」という存在形態が孕む根源的な不安である。

 なぜなら、「物」は、起源と終焉とを問うことを禁じられた、宙吊りの存在形態だからだ。

 だから、人は他人と交流したがる。SNSの蔓延には理由がある。

 そこで起こる問題が、自らに似たものだけを受入、他を排斥したいという欲望をも助長するという点である。それは脳の構造の問題であり、共同体の構造の問題なのである。(ここまで)

  

(0)水を飲むと脳が活性化する:研究結果 « WIRED.jp

(1)なぜ人は新しい情報を欲するのか:「情報中毒」と「好奇心のパラドックス」 « WIRED.jp

(2)人はなぜ不機嫌になるのか:自制心と怒りの研究 « WIRED.jp

(3)ラバーフェティシズム - Wikipedia

(4)以下は物質そのものへの指向も高いが女性の匂いの媒体と捉えている

女性の自転車のサドルを盗んだとして、神奈川県警山手署は24日、窃盗の疑いで、横浜市中区立野、無職、近藤丈司(じょうじ)容疑者(35)を逮捕した。

 1月ごろから、女性が使っているとみられる自転車から革製のサドルだけを選んで盗みを重ねていたといい、同署は自宅からポリ袋に入ったサドル計 200個(計120万円相当)を発見、押収した。(中略)近くに住む無職女性(31)らの電動自転車からサドル計3個(計1万8000円相当)を盗んだと している。調べに「革の質感や、においが好きで、なめたりにおいをかいだりしてた」などと話しているという。 産経ニュース

(5)女性の体重に興味、健康診断のデータ盗む アイドルに不正アクセスも - ネタりか

(51)脳の構造と機能

(6)なぜ人は新しい情報を欲するのか:「情報中毒」と「好奇心のパラドックス」 « WIRED.jp

(7)因みに、金銭は物と情報のミクスメディアである。金本位制を離れた貨幣とは、抽象的な数字(情報)でしかなく、商品と交感されない数字とは、交換可能性でしかない。その交換可能性に安寧と逸楽を夢見ることは、フェティッシュである。金塊や宝飾品が「物」であるのに比べて、貨幣は情報により近いといえる。従って、電磁波と親和性が高いのである。

(8)日本人は抽象的哲学を生まなかったが、茶道、華道、書道、剣道など、実技上で様々な哲学をといている。参考:日本人は思想したか (新潮文庫) | 吉本 隆明, 中沢 新一, 梅原 猛 | 本 | Amazon.co.jp

(9)また、上記は「じみへん」においても、「補球道」「穴堀」等がある。

(10)「片づけコンサルタント」近藤麻理恵(konmari)公式サイト

(11)32年の追跡調査でわかった「幸福な人生の秘訣」 « WIRED.jp

(12)

たとえばヴォランティアは、経済的な交換価値から見て、また精神労働と肉体労働という古来からの価値の序列から見て、下等で汚らしいとされる仕事を嬉々として引き受ける。だがそれは彼らがそれを職業としてやっているのではないからだ。(柄谷行人トランスクリティーク』第二部マルクス第4章トランスクリティカルな対抗運動P423 註(76)

(121)「もう1杯」をシェアする経済、カフェ・ソスペーゾが世界に広まる « WIRED.jp

(122)

It is the opium of the people.

それ(宗教)は人類にとっての阿片だ。

Marx K(1843)「A Contribution to the Critique of Hegel’s Philosophy of Right(ヘーゲル法哲学批判・序説)」より引用
英訳はWikipediaOpium of the people」より

マルクス主義の祖であるカール・マルクス(1818-1883)の有名な言葉です。マルクスは宗教に関して、「Religion is the sigh of the oppressed creature(宗教は抑圧されし者の溜息)」とも述べており、宗教を現実逃避の手段として批判しました。しかし、宗教そのものを批判するというよりは、宗教に逃れざるを得ない現実への批判、あるいは宗教批判を行ったヘーゲル左派への批判という意味合いが強かったともいわれています。

ちなみに、当時はちょうど、清とイギリスの間で、阿片を巡るアヘン戦争(1840-1842)が起こった時期でもあり、マルクスが阿片を引き合いに出したことに関係していたともいわれています。

By Drawn by Thomas Allom, engraved by G. Paterson [Public domain], via Wikimedia Commons

 (123)参考:Amazon.co.jp: 世界史の構造 (岩波現代文庫): 柄谷 行人: 本

(13)糸井重里というコピーライターが脚光を浴びたことも、方向転換の現れ。
 彼は、「情報」を「物」という枷から解き放った自由の戦士であり戦犯であった。

(14)Amazon.co.jp: 構造と力―記号論を超えて: 浅田 彰: 本

(15)探究2 (講談社学術文庫) | 柄谷 行人 | 本 | Amazon.co.jp

(16)ピダハン―― 「言語本能」を超える文化と世界観 | ダニエル・L・エヴェレット, 屋代 通子 | 本 | Amazon.co.jp

(17)手帳に万年筆で書く快感というものは変えがたいものがある。無意味な記号の羅列であっても、ページがインクの線でうめられていくのは集中した喜びがある。

(18)クローン技術や、遺伝子操作。ES細胞など。生化学の分野においては、生体(物)と情報との境界は曖昧だ。だからこそ、コピーの可否についての倫理的判断が曖昧となるのだ。科学を倫理で停止させることはできない。それは、好奇心に直結する欲望であり、倫理とは別の部位で働くものだからだ。

参考:損得勘定と信念は「別の脳」:倫理の神経科学 « WIRED.jp

(19)攻殻機動隊 (1) KCデラックス | 士郎 正宗 | 本 | Amazon.co.jp

(20)The Matrix - WarnerBros.com - Movies

(21)Amazon.co.jp|うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー [DVD]DVD-平野文, 古川登志夫, 神谷明, 島津冴子, 杉山佳寿子, 押井守, 高橋留美子

(22)胡蝶の夢 - Wikipedia

(23)WANTED ウォンテッド(2008) - 映画ならKINENOTE

(24)

 

省察
せいさつ
Meditationes de prima philosophia

 

デカルト形而上(けいじじょう)学の主著。1641年刊。本文とそれに対するアルノーホッブズガッサンディなどの反論とデカルトの答弁からなる。デカルトは絶対確実な真理を求めて、まず、すべてを疑う(方法的懐疑)。ついで、疑いつつある私自身の存在を、けっして疑いえない真理としてたてる(「われ思う、故にわれ在り(コギト・エルゴ・スム)」)。この第一の真理から出発し、神の存在証明を介して、物(身)心二元論の確立に向かう。[香川知晶]『所雄章他訳『デカルト著作集2』(1973・白水社)』