望月の蠱惑

enchantMOONに魅了されたので、先人の功績を辿って、自分も月へ到達したい。

社会

定型が環世界であること

定型詩にせっせと励んでいて感じること。 世界を定型に切り取る。 定型に収めるために取捨選択する選択眼。 針の穴から空を見る、その針の穴を駱駝が通り、ひょうたんから駒が出る。 宇宙と一体化する異次元空間としての定型。 と、これは「他者・対象」を「…

エクリチュール補完計画 ―身体を超えて身体イメージにしがみつく性

はじめに タイトルに深い中身などない。これはイメージだ。 マスクせる顔面を恋愛対象とするとき、互いに感染リスクを負いながらマスクをはずして濃厚接触者たらんとする覚悟をもてるか否かの判断を迫られる時代にシフトした。 無マスクで唾液を撒き散らす行…

SDGsに貨幣は不要

はじめに 昨日、新型コロナ肺炎の感染防止のためのさまざまな要請について、思ったことをつらつらと書いたブログを上げて消した。その結びとして書いたのが以下の文章だった。 社会制度と生命との関係を、見直すべきなのだと思う。呼吸する空気の偏在を正す…

gut feeling ――『感情とはそもそも何なのか』メモ

はじめに 可能な限り「唯物論」で推していきたい身としては「感情」のメカニズムを勉強することは不可欠だと思っている。 本書『感情とはそもそも何なのか ―現代科学で読み解く感情のしくみと障害』(乾敏郎 ミネルヴァ書房 2018.9.30)は、その意味でとても…

Associationism+LETS ――貨幣は全てを手段にするから

はじめに ときおり、「アソシエーショニズム」について考えているわけですが、やはり理論的にいって、もっとも原理的で先鋭的であるのは柄谷行人さんの「消費協同組合」を軸とした「交換形式による歴史考察から導かれる貨幣揚棄の未来」像なのです。 『批評…

仏教にとって移動とは何か ―無常といふこと

はじめに 「一所不在の業があるから大変だよ」と『ブッダの方舟』で中沢新一さんが話していた。私はこのような業を「無常」を感ずるための業なのではないかと考えている。 蝶のように舞い 一つのところにとどまらず、絶えず移動し続けることは、ボクシングの…

芸術は「非ー意味」であれ ―『草枕』への往還

はじめに 芸術は「非ー意味」を表現する。 この世界は、張り巡らされた「意味」という、通常であれば堅固な地盤の上に建っているように感じられる。だが、その大地が地震によって揺り動かされるたびに、磐石と感じていた地面が、表層という卵の殻のように薄…

満月を半月の二倍と捉える忙しなさ ―蓮實重彥さん『表層の奈落』以前

はじめに 「好奇心」が問題なのだ。誰もがそれを肯定しあまつさえ推奨さえしながら「好奇心」の対象如何によっては眉をひそめ「品性下劣」の烙印を押されるのが当然とされる世間には良い「好奇心」と悪い「好奇心」とがあり、それは「好奇心」の向けられる対…

成果品のエシカルな享受とは?

はじめに 「遠くに落ちる原爆の光を、そうとは知らずに見て「きれい」と思い、あんなに「きれい」な光は見たことがないと思う。あとで、あれが「原爆」の光で、あの光の下に大勢の人が亡くなったり、ひどい怪我をしたり、ずっと長い間苦しみを抱えなければな…

マゾヒストはイメージに隷属しない ―『なんとなくクリスタル』という唯物論

はじめに で、『なんとなくクリスタル』だ。40年も昔の本を今読むなんて、とってもレトロスペクティブとか思うかもだけど、我々バックスキッパーズとしては温故知新だなんてつもりは毛頭ないわけ。 当時は、「カタログ」だとか「TOKYO Walker」だとか「Hot…

『フェアトレードビジネスモデルの新たな展開 SDGs時代に向けて』を読んで

はじめに 前回のブログに記した「私的問題項目」を留意しつつ、一読しました。フェアトレードとエシカルトレードとを関連付けた論考はとてもわかりやすく、たどってきた道筋と今後の展望についても明確に記されていました。 SDGs その中に、国連が掲げる2016…

えらびもえらばれもせずとんぼである  ―人として生きるすべ

はじめに 生物はそれぞれの形と生き方とが直結している。移動方式、行動様態、食性、生息域、繁殖様式などは、そのフォルムと切り離すことができない。 それは「制約」である。が一方、そのように身体即環境といえる存在の仕方は、人間の及びもつかぬほど「…

「どもる体」 ―吃音と抑圧

はじめに twitterで見かけて「読もう」と決めていた本を読み終えた。 医学書院/書籍・電子メディア/どもる体 私がこの本を「いいな」と思ったのは「吃音」を「言葉の問題」ではなく、一貫して「体の問題」として扱っていたところだ。 作者は「こころと体と…

人間の業の肯定 ―『立川談志遺言大全集』1の1

はじめに これ、刊行時、予約で購入しておりまして、おくづけによれば、第一巻は、2002年1月30日初版発行となっております。 買ったなり、拾い読みすれども、じっくりと熟読しないまま12年半の年月が流れ、あらためてこの夏、精読してみようではないかと思い…

疎外のレベル

はじめに 疎外を帰属によって解消しようとしてはならない。 ① 帰属こそが疎外を産む ② 疎外こそが自由を産む ③ 疎外こそが存在を産む ④ 帰属こそが奴隷を産む からである。 ①帰属こそが疎外を産む 帰属とは集団に従うことである。それは常に個人にって不利な…

狩と採集 ―『万引き家族』

はじめに gaga.ne.jp 生計を立てるため、家族ぐるみで軽犯罪を重ねていくうちに、一層強く結ばれる一家。(公式ページの INTRODUCTION より) 万引きは軽犯罪ではありません。 keiji-pro.com 前提 万引きを「される」立場に「も」立つ身としては、「万引き賛…

「芸人」濱田祐太郎さんの「ネタ」こと

はじめに 濱田さんの立場 もし、彼が目の不自由な方を代表して、介助をする場合の注意点を、「お笑いの形式を借りて」世に広く知らせようという、「啓発」を目的として活動しているのだとしたら、以下のブログは全く無意味だ。 ただ、「がんばってください」…

異邦人から俳人へ カミュ『異邦人』を読んで 

はじめに 新潮文庫の『異邦人』を読み返した。乾いた文を読みたかった。村上龍は生々しすぎる部分があるし、村上春樹は全般的に他人事すぎる。だから、異邦人。 だが、それは第一部の記憶だった。裁判と収監の第二部に至って、文体は、私の求めるそれとはか…

透明な猫などいない ―綴方と写生文

はじめに 『感覚の近代』坪井秀人 2006.2.28初版第一刷 名古屋大学出版会 を読んだ。 そこで初めて「赤い鳥」誌上におきた豊田正子さんの「うさぎモデル」事件を知った。私にとって、この事件は「表現者の主体」について大いに考えさせられるものであった。 …

相田みつをさんの風景画

はじめに 相田みつをについて手探りで調べていった時、まず驚いたのは、相田論とよべるものがないに等しいらしいことだった なぜかくも多くの読者をえながら、相田みつをは論じられることが少ないのか―(後略) KAWADDE夢ムック 相田みつを 奇跡のことば 編…

本性のXX  ー母性愛の非対称性

はじめに 母性愛は、母ー子という絶対的非対称性においてのみ成立する。母の立場が被る不公平さを、「無私の愛」とか「無償の愛」とか「愛の原点」とか「もっとも尊い愛」という風に言い換える社会は、なにかおかしい。というところから、考え始めた。 注意…

泥濘の公理系 ―言語・VR・貨幣

はじめに 「記号は意味を持たない」ここは絶対に譲れない。 意味をもつ記号は言語と呼ばれるべきである。従って、記号が「指示記号」であるなら、それは言語の別名であって「記号」ではない。 「記号」は何をもって「記号」たりうるのか?それは、単なる落書…

枕頭の自在張型は球体関節の夢を見ない

お断り 今回のブログでは、江戸あたりの「性具」に関するセクソロジー的妄想を取扱います。性の嗜みという意味で、R15にいたします。(図版等は全くエロくないです)

戦争と体罰 支配のダブルスタンダード

注意:以下の話にはひじょうに不謹慎な文言が含まれております。とくに北朝鮮関連をチャカすことが許せない方は、お読みにならないで下さい。 はじめに Jアラートてぇやな音だねぇ。寝覚めがわりぃや。かかぁ。麦酒一杯もってきてくんな。肴はね、え? うで…

真・K-1 ―多様性が犠牲としたもの(ショートブログ)

はじめに 多様化、多様性。それを実現することの困難は、ローカルルールにある。 K-1黎明期 大興奮したものだ。空手、ムエタイ、拳法、喧嘩、相撲、レスリング、柔道、あらゆるジャンルから立ち技最強を証明するためにリングに上がるファイター達。見たこ…

負債論を読む (完) 奴隷と売春者

はじめに この記事は下記『負債論』を読んだ続きだ。だが、ブログそのものは続きではない。そして『負債論』についてのまとめでもない。 mochizuki.hatenablog.jp まとめ 筆者は『負債論』を資本主義社会の害悪を浮き彫りにし、現体制を転覆させる地ならしと…

横断する想像力 ―短絡と迂回における滝沢カレンさん(という誤読)

はじめに 滝沢カレンさんの言語駆使能力に嫉妬する。 滝沢カレンさんの「日本語の独特な用法」に着目したブログは枚挙に暇がない。私がそこに屋上屋を架けるようなまねをする必要はないのだが、このブログ上に、滝沢カレンさんの名前を刻んでおきたいという…

みんしゅかみんしゅかって蝉じゃねぇ~んだから

師匠が悪い 猫も杓子も民主化といえば正義という顔をなさいますけれど… いきつくところは、うまくいってもアメリカ合衆国ではありますまいか。 言論の自由ですとか、いろいろな考え方を許しますとか、多様な文化が並び立つ社会を実現しましょうなどとおっし…

主体なき意思決定の現場

ある日の夕方 会社の休憩室に休憩時間になった方や退勤時間を迎えた方が集まってきたらしい。上司やそこにいない同僚への愚痴、夕方の特売品、今夜の献立についてなどを口々に話しながら大きな荷物をテーブルに載せる音とともに「あら大丈夫?」という声があ…

『中動態の世界』 から得たこと ―自由意思という束縛

はじめに とてもおもしろかった。スピノザさんを読むのに役立った。『探求Ⅱ』(柄谷行人さん)を読み返したくなった。 以下にこの読書で得られたテーマを羅列する。将来の(ブログの)肥やしのために。 ※今回のブログは、引用符外にも、この本から借りてきた…