望月の蠱惑

enchantMOONに魅了されたので、先人の功績を辿って、自分も月へ到達したい。

書籍

「反ー存在」態としての人間 ―『意味の深みへ』を一読して

はじめに 井筒俊彦さんの『意味の深みへ』を一読し、現在は『コスモスとアンチコスモス』にとりかかっている。 この先、何度も読まなければならなくなる著作であり、読むたびに変化を余儀なくされる著作であることから、ここに一読した印象を記しておくこと…

『鼻に挟み撃ち』―保守革新であること 

はじめに 2013年にいとうせいこうさんが『鼻に挟み撃ち』をすばる誌上に発表なさったのを知ってから、とても気になっていました。先日本屋で、集英社文庫の本書を見つけたので、購入してきた次第です。 読後感は、「いとうせいこうさんは真面目な方だな…

『心を操る寄生生物 感情から文化・社会まで』 のおもしろいところ

はじめに 紹介されて読みました。『心を操る寄生生物 感情から文化・社会まで』 www.intershift.jp 人間の文化・社会は、基本的に「差別」から発生し、その根本原理は、寄生生物、感染症への恐怖による心理的抵抗である。という話がメインで、これはこれでと…

岩波文庫より井筒俊彦さんの著作が立て続けに刊行された狂喜

はじめに 偶然立ち寄った本屋の岩波文庫のコーナーで見つけたのは、図書館の検索で「該当なし」だった、井筒俊彦さんの『神秘哲学 ギリシアの部』だった。そしてその隣には、『意味の深みへ 東洋哲学の水位』と『コスモスとアンチコスモス 東洋哲学のために…

『意識はいつ生まれるのか』―「いつでしょ!」

はじめに 『意識はいつ生まれるのか 脳の謎に挑む統合情報理論』は、2015年5月25日に第一刷で、同年7月10日に第三刷までいっている、人気のある本だったらしい。 「いつ生まれるの?」「今でしょ!!」(え~~~~ 今さら……) ……結論からいって、「いつ」…

ざっくりさん講読7 「ミリンダ王の問い」8.第七章 (第一編完)

第一 十六種の記憶形式 ミリンダ王(以下ミ)「記憶っていうのは、いくつの出来方があるのかな?」 ナーガセーナ(以下ナ)「十六種類さ。一個ずつ説明しようか?」 ミ「是非」 ナ「①自覚的回想 ②外部からの助成 ③強烈な印象 ④しめしめ、という気持ち ⑤損し…

真如はなぜ分節する性質を持つのか ―『意識の形而上学』が竜を呼んだこと

はじめに 『東洋哲学覚書 意識の形而上学 ―大乗起信論の哲学』井筒俊彦著 を読んで、新たに拓けた知見について記す。 問題意識 こうした本を読むとき私はいつも以下の問いを解決したいと考えている。 「真如はなぜ分節するのか」 真如の私的定義 私にとって…

『生存する意識』読書メモ -臨床的な意識とは

はじめに 『生存する意識 植物状態の患者と対話する』エイドリアン・オーウェン(柴田裕之訳) 2019.9.18第一刷 みすず書房 を読んだ。 この副題を読んで即座に思い出されるのは、世にも奇妙な物語で、竹内結子さんが主演した『箱』である。 www.youtube.com…

ケンカをやめて 俳人蕪村 vs 郷愁の詩人与謝蕪村

はじめに 1927年6月ー7月に伊豆湯ヶ島に逗留していた文士を調べていて、萩原朔太郎さんのことが気にかかり、『ちくま日本文学全集 萩原朔太郎 1886-1942 筑摩書房(1991年10月20日 第一刷)』を読んでいたら『郷愁の詩人与謝蕪村』(以下『郷愁の』)…

ざっくりさん講読6 「ミリンダ王の問い」7.第六章

第一 出家者の身体感 ミリンダ王(以下ミ)「出家した人って身体が資本だと思ってるでしょ」 ナーガセーナ(以下ナ)「べつに」 ミ「でも君ら、けっこう規則正しいヴィーガンっぽいじゃん」 ナ「君はさあ、矢とか刺さったことあるべ」 ミ「戦場においてはね…

満月を半月の二倍と捉える忙しなさ ―蓮實重彥さん『表層の奈落』以前

はじめに 「好奇心」が問題なのだ。誰もがそれを肯定しあまつさえ推奨さえしながら「好奇心」の対象如何によっては眉をひそめ「品性下劣」の烙印を押されるのが当然とされる世間には良い「好奇心」と悪い「好奇心」とがあり、それは「好奇心」の向けられる対…

虚子の狭量さと綴り方 ―杉田久女さんとのことから

はじめに 角川書店の『現代俳句大系 全15巻』の15巻からさかのぼって俳句を拾っていて、その第9巻に『杉田久女句集』がありました。俳句を拾うのに、作者に関する知識は不要という主義の私は、前書きは勿論、作者年譜、句集の序や跋は流し読む程度なの…

不可説不可説転 ―実無限の寒天

はじめに 華厳経が好き。豪奢で華麗だから。 「善悪」とか「仏性」とかにはあまり興味はなくて、華厳経に表れてくる「宇宙」が好き。人間なんてどうでもいい。人間が人間になる以前のことが書いてある部分が好きで、人間が人間でなくなった後が書かれている…

『はじめての言語獲得 普遍文法に基づくアプローチ』を読み飛ばした理由

はじめに 人が言語をどのように習得していくのか。誰もが通ってきた道でありながら忘れてしまった「母語の覚え方」 バイリンガルの方や第二外国語習得者、もしくは多言語ユーザーなどの皆様におかれましては、それぞれの常識、非常識があることと思いますけ…

俳句と動詞 ―子規句集にみる無動詞俳句

はじめに 俳句は写生。それが俳句をつまらなくした、イコール、正岡子規さんが俳句をつまらなくした、という風潮があると読みましたが、それは別にどうでもよくて… 俳句は写生。理想としては眼前の「モノ」を示すだけで、成立させたいという思いがあり。 と…

ざっくりさん講読6 「ミリンダ王の問い」6.第五章(pp.197-213)

第一 ブッダの実在証明 ミリンダ王(以下ミ)「ナーちゃんさ、ブッダ見たことある?」 ナーガセーナ(以下ナ)「ないさ」 ミ「じゃ、ナーちゃんの先生は、見た?」 ナ「ううん」 ミ「ブッダって、いないんじゃない」 ナ「そんじゃ、ミーちゃん。ウーハー川っ…

小椋冬美さんの静謐 ―モノローグの狭間で

はじめに 小椋冬美さんという少女漫画家を、私は「りぼん」誌上で知った。登場する男子に感情移入をして、髪型を真似たりもしていた。 主人公となるのは、みな、自分の本心を人に伝えるのが苦手な若い男女で、そんな自分のことが嫌いだったり、「性格だから…

内ー外 を捨てて考える

はじめに 『意識と本質』井筒俊彦さん、を手引として、ことあるごとに立ち返る。 このところ「俳句」「写実」のことを考えていることが多かったのだが、今回読み直し始めて「写生」に関する重要な論考と、本居宣長さんと、松尾芭蕉さんを本質論批評として読…

ざっくりさん講読5 「ミリンダ王の問い」5.第四章(pp.177-196)

第一 もろもろの精神作用の協同 ミリンダ王(以下ミ) なんか、これまで色々と「分割」して答えてくれてたけどさ、実際のところ、どうなの? ナーガセーナ(以下ナ) できない相談だね。 ミ じゃ、譬えてみせてもらおうかな ナ 秘伝のスープの複雑な味を、塩…

言語にとって抽象とは何か

はじめに 『増補現代俳句大系』 角川書店 の15巻から遡って俳句を拾い始めた。拾う基準は1.「我」という言葉がないこと 2.感情を表す言葉がないこと 3.「俳句のためにしたこと」を詠んでいないこと 4.なるべく平易な言葉で書かれていること であり…

余談 ―アンチ物語の物語 『豊饒の海」創作ノート

はじめに どうも。卒業発表後、自信に溢れる飯窪さんが、少し苦手な私です。ソロで活動していく上では、絶対に必要なものですから、そのように「自分」を前面に発信していく姿勢は全く正しいのですが、それが私には、眩しすぎるのだと思います。さぁて、それ…

ざっくりさん講読4 「ミリンダ王の問い」4.第三章(pp.141-176)

第一 永遠なる時間はいかにして成立するか ミリンダ王(以下ミ)「過去とか未来とか現在とか、『時間』ってそもそも何?」 ナーガセーナ(以下ナ)「それはね、いきなり『しりとり』なんだ。しりとりーリンゴーゴリラーラッパーパンダーダンスースイカーカエ…

マゾヒストはイメージに隷属しない ―『なんとなくクリスタル』という唯物論

はじめに で、『なんとなくクリスタル』だ。40年も昔の本を今読むなんて、とってもレトロスペクティブとか思うかもだけど、我々バックスキッパーズとしては温故知新だなんてつもりは毛頭ないわけ。 当時は、「カタログ」だとか「TOKYO Walker」だとか「Hot…

なんとなく比喩語る

はじめに 『なんとなくクリスタル』を読み返し始めて、まあ、面白いこと。まだ本文始まって4ページくらいですが。ブランド名、商品名、曲名、地名など、あらゆる固有名が象徴する「時代」感覚。 当時は、単に「おちゃらけ、表層的、イメージ、ぶちまけられ…

エコラリアス 言語の忘却について ―読書メモ

はじめに 「エコラリアス」という魅惑的な響きを持つこの書籍を読もうとしたきっかけは、本の裏表紙に書かれていた言葉であった 「子どもは言葉を覚えるときに、それ以前の赤ちゃん語を忘れる。そのように言葉はいつも「消えてしまった言葉のエコー」である。…

『フェアトレードビジネスモデルの新たな展開 SDGs時代に向けて』を読んで

はじめに 前回のブログに記した「私的問題項目」を留意しつつ、一読しました。フェアトレードとエシカルトレードとを関連付けた論考はとてもわかりやすく、たどってきた道筋と今後の展望についても明確に記されていました。 SDGs その中に、国連が掲げる2016…

ざっくりさん講読3 「ミリンダ王の問い」3.第二章(pp.110-140)

第一 無我説は輪廻の観念と矛盾せざるや? ミリンダ王(以下ミ)「生まれ変わったものと死んだものとは同じなの違うの?」 ナーガセーナ(以下ナ)「同じでも異なるものでもないよ」 ミ「たとえば?」 ナ「子供のときの君と今の君とは完全に同じかい?」 ミ…

ざっくりさん講読2 「ミリンダ王の問い」2.第一章(pp.68-97)

第一 名前の問い ミリンダ王(ミ)「それで、君、なんて名前?」ナーガセーナ(ナ)「名前に意味はないよ。そんな名前の者は存在しないんだ」ミ「え~っ! 8千5万人のみなさ~ん! ナーガセーナなんていないって、言ってますよぉ~。じゃ、みんなが『ナー…

ざっくりさん講読1「ミリンダ王の問い」1.序章

はじめに 『ミリンダ王の問い」東洋文庫7 平凡社1988年4月15日初版第22刷をざっくりと講読してみよう。 ギリシア文化の王様がイケイケでインドあたりまで支配して、退屈しのぎに 「仏教」ってどうなの? と、そこらじゅうの教祖を質問攻めにする。…

「どもる体」 ―吃音と抑圧

はじめに twitterで見かけて「読もう」と決めていた本を読み終えた。 医学書院/書籍・電子メディア/どもる体 私がこの本を「いいな」と思ったのは「吃音」を「言葉の問題」ではなく、一貫して「体の問題」として扱っていたところだ。 作者は「こころと体と…