望月の蠱惑

enchantMOONに魅了されたので、先人の功績を辿って、自分も月へ到達したい。

ならぬ堪忍するが堪忍 ―日本国憲法第九条

はじめに

 以下は、法律文化社 『ベーシックテキスト憲法 第三版』の第一章のメモに、若干の感想をくわえたものである。それ以上でもそれ以下でもない。

 福祉国家

行政サービスの拡充(行政国家化)⇒計画行政

官僚の役割の増大⇒官僚の増加

予算増大⇒慢性的赤字体質・行政の肥大化、硬直化

行政改革
 国営企業民営化
 公共事業削減

※国家(政府)は徴税再分配器官(中間搾取)


選挙権拡大

選挙権拡大=純粋代表⇒半代表、社会学的代表

男子普通選挙・・・名望家正当(議員集団)⇒大衆政党(組織政党)
1960年代の脱イデオロギー化により「包括政党」へ

※パッケージでしか選べない不満


 ファシズム

多数者による少数支配=ファシズム


明治憲法

天皇の威徳が忠良なる臣民に恩恵を慈しむ⇒天賦人権などない
 列挙された「権利」も、法律の留保により容易に制限可能だった。
吉野作造民本主義」ー大正デモクラシー
・1925年普通選挙法(25歳以上の男子/軍人・貧困者を除く)
 小農民・労働者は社会主義に傾倒するので「治安維持法」もセットで(枢密院 議長 平沼駿一)

 第二次世界大戦

ハル・ノート

年譜

1926年 昭和天皇即位
1931年 血盟団事件・5.15事件(犬養毅暗殺)
1936年 2.26事件
1937年 日中戦争開始
1938年 国家総動員法(近衛文麿首相)
1940年 大政翼賛会発足⇒議会機能停止
1941年 日独伊三国同盟
1945年 8月 御前会議、ポツダム宣言受諾

日本国憲法

マッカーサーノート(マッカーサー三原則)

元首天皇戦争放棄・軍備撤廃、華族制廃止、英国型予算
憲法改正案」第9条2項冒頭「前項の目的を達するため」を挿入(芦田修正)」自衛目的の合憲化
「第66条2項 文民条項」(連合国)自衛隊の政治関与を防ぐ

年譜

1945年「労働組合法」
1946年「労働関係調整法
1946年10月21日公布「自作農創設特別措置法」(農地改革)
1946年11月3日公布・翌年5月3日施行「日本国憲法
 財閥解体持株会社の禁止・独占禁止法制定
1947年「労働基本法」(労働改革)
1947年「教育基本法」(教育改革)
1950年 警察予備隊
1951年 公職追放解除により鳩山一郎、岸伸介政界復帰
1952年4月 サンフランシスコ講和条約(片面講和)
 総司令部は憲法の再検討を約束したが、吉田茂は改正を見送る。
⇒吉田ドクトリン(復興に全てを注力し、防衛は米軍にまかせる)
終戦直前に日ソ不可侵条約を破棄したソ連北方領土を獲得
 そもそもカイロ宣言下「領土拡大はしない」としていたものを破棄し、
 米軍は日本に駐留支配。さらに沖縄を支配下におき続ける。
1952年 保安隊
1954年 自衛隊
    鳩山内閣(吉田自由党内閣退陣後)再軍備憲法改正を目標に掲げる
1955年 総選挙 左派・右派社会党が議会の1/3を占める。10月、再統一して改憲をつぶす。
    鳩山日本民主党自由党が一つとなり自由民主党となる(55年体制

改憲への執念

戦争が終わり、高度経済成長により「公害」などがより身近な問題となるなかで、「護憲」という政治理念は薄れていく⇒護憲派の衰退期
1993年 細川護煕 政治改革諸法
    衆院小選挙区制と比例代表制を導入
    =主ー従の二政党連立政権、党首らの寡頭支配、派閥の衰退
2005年 小泉純一郎 郵政民営化
    自公連立政権
憲法改正を求める声が高まる
2006年 安倍晋三
    教育基本法改正
2007年 国民投票法成立(2010年施行)
2009年 防衛省の格上げ
2012年 安倍晋三歳就任
2013年 特定秘密保護法国家安全保障会議
2014年 限定的な集団的自衛権の行使は憲法上可能との閣議決定
    防衛装備移転三原則の閣議決定
2015年 第三次安部晋三内閣
    文官統制規定を廃止
    安保法制(平和安全法整備法(10本の法律からなる)、国際平和支援法)強行採決(2016年3月より施行) 新たな安保法制
2016年 改憲勢力衆院で2/3を占める

※ 国家に奉仕する国民を求める方向
※「痛みを伴う改革」国民のみが痛みを感じるものに変わっていった。


第九条

マッカーサーノート:自衛のための戦争 ×

マッカーサー草案

憲法改正草案
芦田修正:改9-1冒頭「日本国民は正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し」   改9-2冒頭「前項の目的を達するため」
     をそれぞれ挿入し、自衛目的の戦争を合憲化。
文民条項:66-2 連合国要求。芦田修正に対して挿入された。自衛隊による政治関与を防ぐ。

憲法九条の解釈

1項 侵略戦争のみを放棄し、自衛目的は放棄せず
2項 すべての戦力保持を禁止
結果 自衛目的の戦争もできない(通説)

9-1 限定放棄説:侵略× 自衛○ (通説および政府見解)
    全面放棄説:侵略と自衛の区別は困難なのでどちらも×(有力説)
9-2 完全非武装:2項によりあらゆる戦力の保持は禁じられている⇒自衛×(通説)
    自衛戦力留保説:1項によって放棄されるのは侵略のための戦争のみ。自衛は○(有力説)
    自衛力留保説:戦力は保持できないが、自衛のためなら○⇒戦力ではない。(政府見解)
自衛隊の合憲性 最高裁統治行為論により憲法判断せず。
日米安全保障条約の合憲性 同上


自衛隊

日本は独立国=自衛権は当然
憲法13条 国民の生命等への尊重 からも自衛は可 9-2の「戦力」にはあたらない。

判例

警察予備隊違憲訴訟最大判昭和27年10月8日 民集6巻9号783頁)
 憲法第8条により却下
恵庭事件(札幌地裁昭和42年3月29日下刑集9巻3号359頁)通信線の切断
 自衛隊法により無罪判決。憲法判断回避の準則
長沼事件最判昭和57年9月9日民集36巻9号1679頁)基地建設
 一審:平和的生存権の裁判現記性を認め 自衛隊違憲判決
 二審:(札幌高裁判昭和51年8月5日行集27巻8号1175頁)
    平和的生存権の存在を否定。政治行為論を採用し一審取消
 最高裁:棄却
百里基地訴訟最判平元6月20日民集43巻6号385頁)基地建設のための用地売買
 一審:(水戸地裁判昭和52年2月17日判時852号22頁)
     9条は自衛戦争○+統治行為論により退ける
 二審:(東京高判昭和56年7月7日判時1004号3頁)
     国が行う私法上の行為に憲法9条は直接適用されない
     民法96条の公序良俗に反した売買ではない
     原告敗訴
 最高裁:同上

最高裁はこれまで一度も、実態判断をしていない。

国際貢献

2014年7月 限定的な集団的自衛権の行使は憲法上可能との閣議決定
2015年   第三次安倍内閣 法律案を国会提出
 同年9月 法改正成立(2016年3月より施行)
      10本の法律を一括(平和安全法整備法)+国際平和支援法

自衛隊法改正

 平時 米艦防護、米軍への物品役務の提供、米軍等の武器等の保護、離れた地域にいる邦人を輸送
    米軍等を救護できる「駆けつけ救護」

PKO等協力法改正

    武器使用権限の拡充
    国連主体のPKOとは別枠での自衛隊派遣を可能とする

周辺事態法改正⇒重要影響事態安全確保法

    「我が国周辺の地域」や戦闘地域と非戦等地域の区別を削除⇒地理的制限が取り除かれた
     後方支援の対象が、米軍に加え他国軍隊にまで拡張
     弾薬の提供や戦闘地域へ向かう準備中の航空機への給油可

事態対処法の改正

     存立危機事態の文脈において、限定的な集団的自衛権の行使が認められた。

 集団的自衛権

密接な関係にある他国に対する武力攻撃を、自国が攻撃されていないにもかかわらず、攻撃されたものとみなして、他国の防護のために実力をもって阻止する権利。
国連憲章によって明文化された国際法上の権利
・日本は、サンフランシスコ講和条約、安保条約 としてもこの権利を有している。


改憲は一国としての体裁を整える(=核配備)のため ←雑感

 この世界では、核兵器をもたねば、一国とみなしてもらえない。国際社会の一員としてイニシアチブをとりたいのなら、核配備が不可欠である。残念ながら。

 日本国憲法第九条は、理想である。

 だがそれは現実として、冷戦構造によって保たれてきたにすぎない。

 自ら闘う必要のない時に「戦争放棄」を謳うだけなら、誰にでもできる。


 改憲すれば、軍備増強を行うのは当然のことであり、そのため国民はさらなる「米百俵」の精神を強いられる。ただし、未来の豊かさなど、望むべくもないのだということを、我々は知っている。


 たとえ、侵略戦争を是としたとしても、日本国民全てに分け与えられるだけの、「富」を搾取できる楽園などないのだから。


活躍できない国民は自己責任において死ね。


 安倍政権は一貫してそう言っているし、それに賛同しているのは我々国民なのである。

以上